最近の高校生って凄いなぁというお話

3年近く同じ勤務先でバイトをしてるんですけど、やっぱり長い間やってると結構お店のこととか分かったりして。店長やスタッフからの信頼も厚くなるんですよね。だから何か困ったことがあれば店長or私に聞けばいいみたいな風潮があって、もちろんその分業務量が増えるので忙しくはあるんですけど、私の場合バイト先でないと人から頼られることがないので中々に嬉しいわけであります。

さて、そんな中です。店長さんから新人の教育を任されました。教育は私のような人間でも人に教えることができるんだと自己肯定感が高まるので好きなのですが、今回の新人さんはなんと高校2年生の女の子でした。

困りました。私には苦手なタイプの人間が3種類います。1つは先輩の女性。これは以前のバイト先で女先輩にいびられたからですね。あぁいびるといっても「おいなにしてんだよ〜」って脇腹うりうりされるみたいな可愛いやつじゃなく、きちんと嫌いな人に向ける舌打ちを何度もされたことがあります。まぁ嫌われた原因は私にあるんですけど。

どのくらい深刻だったかというと、流石に病んでバイト辞めたんですよ。んでまぁ辞める理由は当たり障りない留学ということにして店長さんに告げたんですけど、店長さん何かを察したように「…まぁ、あれやな。〇〇(私を虐めてた女先輩)は顔で好き嫌い判断するところあるからな。ほんまはええ子なんやけどな」って言われたくらい深刻でした。店長さんが気づいてたなら止めて欲しかったとは思ってましたけど、ああなんだ私顔面で嫌われてたんだって。なんならその店長さんの一言が1番心にきましたけど。そこで女先輩フォローしてどうすんだって。……なんで文章書いてるだけなのに泣かなくちゃいけないんだ。

2つ目は同い年の女の子。シンプルに劣等感がすごいです。私みたいなネガティブな人間は事あるごとに相手と自分を比較するんですけど、100発100中で私の方が劣っている。おそらく私が勝ってるのは唐揚げの腕前だけでしょう。同年代だからこそ、その劣等感が凄まじくなる。

3つ目は後輩の女の子。何話せばいいか分かりません。何話すんですかあれ。

高校2年生ということは私と歳が5つほど離れています。5年ですよ、5年。かなりジェネレーションギャップもある事でしょう。

まぁ、いいですよ。今回はただの教育なので。とりあえず仕事のいろはを教えるだけなので、変に雑談〜とかはないでしょう。キラキラ高校生は私の勤務先のような芋みたいな場所に来ないでしょうし、きっとメガネかけてて髪ボサボサで常に猫背で声小さくてBLとか見てて……

「じゃ、素質さん〜。この子よろしく〜」

おっと、店長の声です。おそらく新人の子が来たのでしょう。とりあえず営業スマイルを貼り付けて、と…


※画像はイメージです。

「よろしくお願いします!新人の〇〇です!」

うわっ…ウワァァァァ!?ゴリゴリにキラキラだ!ゴリゴリキラキラピカピカJK来ちゃった!?輝いてる!?輝いてるぅ!?す、すごい!語尾に『キターン』みたいな効果音ついてそう!アクアパッツァ主食にしてそう!スタバでキャラメルふわふわぷりぷりぽむぽむフラペチーノ頼んで男女8人くらいでテスト勉強してそう!!

「あっ、素質です〜。今日は私が教育していくので、その〜…よろしく〜」

ウワァァァァ!?JKと会話しちゃった!?これ犯罪になったりしないかなぁ!?もうほとんど未成年淫行だったりしない!?いや絶対未成年淫行だ!自首しよう!「つい出来心で女子高生と会話してしまいました」って!親不孝な息子でごめんお母さんお父さん!

「素質さん、とりあえず仕込み教えといて」

し、仕込み!?女子高生になにを仕込むつもりなの!?セクハラですよそれは!2人で自首しましょう!赤信号みんなで歩けば怖くない理論です!交番もみんなで行けば怖くないですよ

っはぁっはぁっ……ふぅ…。

「じゃあ食材を仕込むのでついてきてもらっていいです…いいかな?」

「はい!」

お、落ち着け私。何度も言うように今回は教育…教育!?JKを教育!?一体なにを教えるって言うんだ!えっちだ!えっちだよ〜!!

わーついてきてって言ったからJKがついてきてる!ぴったりだよ!そりゃそうだけど!この子何もわかんないわけだから!ドラクエ!?このまま家まで歩いて帰っても平然と後ろにいそ〜!街中でこの光景見かけたらパパ活って思いそ〜!!

「…とりあえずこの冷蔵庫に食材があって、この…あみあみの…カゴみたいな…」

「ザル…ですかね?」

「ああそうザル!ザルの中に仕込む食材があるから、これをああだのこうだの…」

うわ〜ん!JKに語彙力で負けてるよ〜!あれかな、悪口の方のザルって言われてるのかな!否定できないよ〜!

「んじゃ野菜を切ってもらって…包丁は使ったことある?」

「あ〜…家庭科の授業でくらいですかね、あはは」

笑顔が眩しいよ〜!私の笑顔は上唇と下唇が離れる時のンチャア…みたいな音がするそれなのに!ぺかーっ!みたいな笑顔だよー!!んでめちゃくちゃコミュ力もありそうだよ〜!はいかいいえで答える質問にいいえよりのはいをエピソードを添えて伝えてきたよ〜!人生2週目としか思えない対話能力だよ〜!

「トマト、切ってもらえる?スライスで、厚さは2ミリくらい」

「2ミリってこれくらいですかね?」

えぇ〜!?2ミリを指の腹と指の腹の隙間で表現しようとしてる!?なんだそれあざといよ〜!ちゃんと可愛いから許されてるよ〜!私が同じことしたらグーで殴られそうだよー!そのあと唾吐き捨てられそうだよー!財布からお金も取られそうだよー!

「………」

「………」

会話が止まっちゃったよ〜!包丁がまな板に当たる音だけが響いてるよ〜!気まずいよ〜!もう帰りたいよ〜!帰らせてくれよ〜!帰ってネイチャに慰めてもらいたいよ〜!「ん、よしよし…ってね。お母さんかアタシは。…トレーナーさんも頑張ったもんね。頑張ってもできないことってあるから。…気持ちは分かるよ」って言ってほしいよ〜!

……こ、こういう場合普通私から話しかけるよなぁ。何話せばいいんだ。「私の股間さ、メス入ってて30万円くらいかかってるんだよね、あはは(ガチ)」って切り出すべきかな?男相手なら大ウケ間違いなしなんだけど。私はこのネタ一本で友人と距離を縮めてたんだけど。いやぁでもしないべきか。少なくとも初っ端でぶちこむべきじゃないか。これで「私も下の膜の再生手術してるのでお揃いですね〜」とか言われちゃったら例えその子に何千万円という借金があっても一生添い遂げる覚悟があるんだけど。

…仕方ない。対女性会話デッキを使うしかないな。ドロー!!

『天気の話』

トップが弱すぎるよ〜!疾走を持ってないクイックブレーダー!デュエマの預言者クルト!

あっあっ…息が詰まる!呼吸ができない!このままだとこの子バイト辞めちゃうよ!先輩がインキャすぎて!違うんだよ、話すべきなのは分かってるんだよ!話題が見つからないんだよ!何か…何か話してこの澱んだ空気を…ドロー!

「…お年玉さぁ、いくらもらったん?」

きもいよ〜!!私はそれを知ってどうするんだよ〜!!会話デッキから守護ラストワードないベルエンジェルを引っ張ってきちゃったよ〜!

「10万くらいだったと思います!」

「じゅ、10万!?」

「はい!親戚がいっぱいいるので!でもほとんど親にもってかれちゃったんですよ〜」

「ふひひっ(ンチャア)、絶対へそくり行きやん。お母さんが急にお洒落な服とか買い出したら多分使われとるで(実話)」

「あははっ!でもあれですよ、ちゃんと貯金してくれてるみたいで、この前口座見せてもらって〜」

なんでこんな灰カスみたいな話題から話を発展させることができるの!?灰カスで会話に花を咲かせてるの!?令和版花咲かじいさんなの!?!?

「…まぁでも、私は来年からお年玉をあげる側になるからなぁ。めちゃ憂鬱」

「え、学生さんですか?どこ大です?」

自然な流れで次の話題に行けちゃったよ〜!会話ごとのラグがないなんてことあるの!?ぬるぬるすぎない!?高フレームレートなの!?288fpsなの!?

「一応〇〇大学」

「え、めっちゃ頭いいとこじゃないですか!私××大学狙ってるんですよ!」

「へぇ〜。そこも賢いとこやん」

「でも私バカすぎて。今んとこ行けなそうかもです、えへへ」

「かわいい〜!(言ってない)

「すごいですよね、頭いいのめちゃくちゃカッコいいですもん」

「あっあっ…もっと言って!(実際に言った)

なんだこの子〜!!年増もいかない若造だと思ってたのに私の喜ばせ方を知ってるよー!そうそう、私という人間はそれなりの大学に通ってる以外良いところがないもん!それ以外のとこ褒められてもお世辞にしか聞こえないもん〜!だからこそその褒め言葉はきちんと褒め言葉として受け止められるんだよ〜!嬉しいよ〜!

待って待って待って!普通初対面相手にカッコいいって言う?この子絶対私のこと好きだよ〜!一目惚れされちゃったよ〜!健全なお付き合いをしたいよ〜!例え社会から後ろ指を指されてもそんな社会私が変えてやるよ〜!手始めに消費税は100パーセントだよ〜!

…………はぁ。

…なんか、キャバクラとか通う人ってこんな気持ちなんだろうなぁ。もちろんただ単純に遊びたい人もいるんでしょうけど、ガチ恋勢と言いますか。自分を全肯定してくれる人ってよっぽどいないので。私みたいな人間は特に。仕事としてキャバ嬢さんは優しい言葉をくれるわけですけど、その優しい言葉を受け取ったことのない人にとってはそれが演技なのか否か分からないんですよね。だって本物の優しさを享受したことがないので。カニを食ったことないのにカニカマが大好物みたいな感じ。カニがあるのにカニカマで満足してる。多分この例えはだいぶ違うな。

…え?なんで急に哲学的な事言い出したかって?……冷静に考えたら私がカッコいいわけないと気づいたからですね。賢者モード的な。

…にしても、本当にすごいなこの子は。対人能力がカンストしてる。ちゃんと会話のキャッチボールをしてくれるし、ボールは私の胸元にきっちり返ってくるし。私が投げたボールが大きく逸れてしまっても大丈夫ですよ〜って笑ってくれるし。私がなんとなく飽きたな〜って感じたらそれを察してサッカーボール持ってきてパスしてくれそうですし。本当に女子高生か?これ人間観察バラエティのモニタリングか?『もし新人のバイトが人生2週目だったら気づく?気づかない?』か?ブラックマヨネーズが私をモニター越しに観て高笑いしてんのか?舐めるなよ。私は彼女が人生2週目だと気づいているからな。

普通に考えて、バイト先とはいえ異性の大学生と途切れなく会話をするって難しいはずなんですよ。少なくとも私が高校生の立場だったら無理でしょう。

楽しいだろうな、こんだけ話せたら。私の頭の中は次何話そうでいっぱいなのに。…すごいなぁ、最近の高校生って。

「髪染めたいんですよね、私。インナーカラーがああだこうだ、でもブリーチがああだこうだ…メッシュが〜アッシュが〜ベージュが〜」

「おお…いえすいえす、ソイソースソイソース」

な、何?BLEACH?あまり強い言葉を使うなよ。私が泣くぞ。

…え、アッシュっていった?apexやってるの?次元を切り裂くの?

って、高校生って髪染めていいんだ。私の母校はつい最近ようやくツーブロが許されるようになったって聞いたけど。

「なんかクラスでぇ、夏場なのに長袖の子がいて。めちゃくちゃリスカしてんじゃないかって噂立てられて。体育もジャージ着てるんですよ。明らかになんかあるな〜って!」

……あれ、なんか。急に話題が…元々会話の主導権なかったですけど、あまりにも私の管轄外な気が…?おそらく彼女の中で私は「得体の知れないインキャ先輩」から「会話くらいはしてあげてもいいインキャ先輩」にランクアップしたんでしょうけど。それは嬉しい限りなんですけど…リ、リスカ?高校生で?TOICA Suica manacaリスカってこと?

「でも全然プチ整形してる子いますよ。夏休み終わりとか、目元変わってる子いましたもん」

…………


本当に…すごいなぁ、今の高校生は。ついていけそうにないや。なんというか…うん。普通に怖いや。私の苦手な人間リストに『高校生』が追加されちゃったよ。

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