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ちぎり絵物語 3

『大金持ちのカメラマン』

久しぶりに話題の映画を盗み撮りしようと映画館に現れた映画泥棒。

「あ!ママ見て!映画泥棒いるよ!」

チケット購入後すぐにスタッフに取り押さえられた。
有名になりすぎたのだ。

今まで大量の作品を盗み撮りしてはお金に変えていた映画泥棒はすぐに刑務所に放り込まれた。

映画泥棒は映画を見ることも大好きだったのだが、もちろん刑務所に映画はない。

その後刑務所内で唯一信頼できた看守と仲良くなり、映画泥棒は彼によく本を借りたり、買ってきてもらったりするようになった。

その看守は出所後の人生に役立てて欲しいとよく映画泥棒に自分のおすすめの本をプレゼントした。

特に刑務所内でもやることがなかった映画泥棒は刑務所内での出来事を録画するようになった。

刑務所内での日常は世間での生活に比べると新鮮だ。
カメラの容量もいっぱいになった頃。ついに映画泥棒は出所の日を迎えた。

出所後、来る日も来る日も生活をしていくための職場を探す映画泥棒。
長年泥棒を続けてた彼を雇ってくれる職場なんて一つもなかった。

打ちひしがれた映画泥棒の心にまた映画を盗んでお金にしてやろうという気持ちが湧き上がってきた。



刑務所で看守にもらった読書体験がその気持ちを抑えた。

その後「刑務所内で録画した自分の経験を映画にしてはどうか」と思い立った映画泥棒は自分の目で見た刑務所内での生活をドキュメンタリー映画にして映画会社に売り込んだ。

「映画泥棒が自分の目で録画した映像を映画に?面白いじゃないか」

持ち込み先の小さな映画会社の社長は映画泥棒のその案をとても面白がった。

その映画は瞬く間に全世界で大ヒット。

悪者として有名だった映画泥棒の知名度がこの時初めていい風に生きたのだ。

映画泥棒はこの現実に呆然としながら立ち尽くした。
目からは涙は出ないものの人生の不思議にこれでもかと感動した。

大ヒットに伴い、映画泥棒の毎日に潤沢な印税が舞い込んできた。

映画泥棒はそのお金を使って縁する人みんなにカメラをプレゼントするようになった。

自分の目で見たこと、感動したこと、好きなものを写真として、映像として残すことの価値を人一倍知ったからだ。

映画泥棒が出所してから全世界にいい写真が溢れている。

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