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来たら後悔する街(鶏鳴山)

下花園駅という北京から新幹線で1時間ほどの駅を降りると、駅の前の建築の止まった背の高いマンション群に圧倒された。虎視眈々と顧客の狙いを定めるタクシー乗り場を素通りして大通りでタクシーを捕まえて鶏鳴という宿場町を目指した。

「この街に興味を持った人はみんな来たがる。ただ来てみた後には後悔する街だ」。河北省訛りのタクシーの運ちゃんが来たばかりの私の出鼻を挫いていく。格差社会の中国で地元に残るしかない運ちゃんからみたら、外地から呑気に旅行にくる人は妬みの対象なのかなと思いながら、適当に会話する。

鶏鳴の宿場は一辺が5百メートルほどの四角の城壁で囲まれている。城壁にも上ることができ、街の後ろ側には壮大な鶏鳴山が聳えている。平野の中でひと際目立つこの山がランドマークになり、ここに宿場町ができて情報伝達の駅として役割を果たしてきたようだ。

城壁に囲まれた街の中には収穫されたトウモロコシが家々に積まれていた。なるほど、このあたりの平野では家畜用のトウモロコシが作られているのかもしれない。過去には賑やかであっただろう街も時代には逆らえず、若い人はもっと大きな都市にでていったのであろう。荒廃した家々も目立っていた。

宿場を一周し次に鶏鳴山に向かった。山腹に仏教、道教、儒教の3つのお堂を持つが、確かに平野の真ん中に聳えるこの山には力を感じざるを得ない。標高1,140mの半分くらいまで車で行き、残りを歩いて上る。残雪が残る道中になったが、いい感じの間隔でお堂が現れるため一気に山頂を目指すことができた。

山頂から南側をみるとさきほど訪れた宿場町の四角形が綺麗に見える。あまりの綺麗さに昔の人の仕事の細かさに感心する。さきほど宿場で轟いて音は貨物列車のようで、四角形の宿場のさらに南側には貨物列車がひっきりなしに通っている。西側をみると火力発電所のような施設があり、朝見たマンションの廃墟とは違う魔鬼城が目に入る。よくみると建物はスケルトンで窓にはガラスが入っていない。

上空は飛行機の航路となっているようで、下山中には高度の違うところを同じ方向に飛んでいる飛行機2機が青空に飛行機雲を作っていた。

新幹線の駅まで再びタクシーに乗ると、今回のタクシーの運転手もまた同じようなことを言っていた。「この街に朝観光に来た人は午後に帰っていく。そんな街だ」。閉塞感というか、希望を持てないというか。。。北京のような大都市に生気を吸いつくされてしまい抜け殻になった街を新幹線で脱出した。

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