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老いが怖い

 誰しもいつか必ずくる老い。最近、特に感じるようになった。
ちょっとしたケガの治りも遅くなったし、若い時と同じ運動量をこなしても痩せなくなった。分厚いベーコンと角切りパイナップルが乗った焼きたてアメリカハワイアンピザを2~3ピース食べた翌日は、必ずといっていいほど胃もたれに襲われる。そして特に顕著なものが身体の筋肉や柔軟性が衰えたのか、少しの段差につまずくことが増えた。

 もうどれだけあがいても、20代30代の溌剌とした若さには敵わないのだ。
なんでこんなことを書いたかというとペットの老いに直面し始めたから。
我が家の猫3匹のうち2匹(姉弟)は今年で11歳になった。人間年齢に換算すると80代後半のおじいちゃんおばあちゃんである。残り1匹は4年前に近所で、生後1週間足らずのときに拾った猫で今年で3歳になった。こちらは人間年齢20~30代のシャキシャキとした若者で、動作が機敏で動くものならなんでも反応するし、自宅に侵入してきた羽虫を見つけると
「獲物だぁ!」
と、狩猟本能全開で追いかけまわす。全身全霊で若さを体現しており、まぶしいことこの上ない。

 かたや老猫たちは動きがゆっくりになり、椅子の座面に飛び乗るにも床を踏みしめる動作を何度も何度もやり直してから
「フンキュッ!」
と掛け声付きでジャンプするする。人間でいうところの
「ヨイショ!」
だろうか。階段昇降もトントントントンとリズミカルな足音ではなく、トッテントッテンとゆっくりなリズムになった。
 餌を食べるときも若者はガツガツ食べるのに、老猫たちはゆっくり静かに時間をかけて食べる。しかも時々、口のはしからポロポロこぼしながら。

 猫は人間の7倍の速さで年を取ると言われており、7歳が初老で10歳が完全な老猫と言われる。15歳で長生きと呼ばれて、25歳を超えるとシッポが二股に分かれて人語をしゃべるようになるらしい。

 私自身は子供がいなくなった今、このまま働いてさえいれば最低限食うには困らないだろうと考えていたけど、ペットの老いを間近で見せつけられてさらに自分自身の老い『身体にガタがくる』とはこういうことなのかと実感した。
 ケガをしたわけでもないのに、ある日突然ヒザが痛くなる。重い物を持ち運んだわけじゃないのになぜか腰が痛い。自宅の階段を下りるときに右足に力が入らずふんばりが効かないなどを経験して、初めて老いて動けなくなる実感を味わった。老いて働けなくなるとはこういうことなのかと心底ゾッとした。

 どこかの有名な漫談家が言っていた。
「いつまでも若くないんですよ! 弛んだ腹は食料タンク! でっかいシリは燃料タンク! 非常時には食料いらずと前向きに考えましょう! そうです! どれだけがんばっても10代20代のピチピチした若さには敵わないんですよ! 若さはいさぎよく若い世代に明け渡して、おばさんと呼ばれる世代を楽しもうじゃありませんか!」

 今からでも遅くないから、せめて飼い猫3匹が寿命で旅立つまで健康的に生き延びねば。毎朝のラジオ体操から始めよう。

                        おわり

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