凶夢

 友達からテレビに出るから、その番組を見てほしいと頼まれた。どういう理由で出演することになったのかはわからないけど、知人が出るのはすごいことだと、久々にテレビをつけた。こたつに入り、頭を机の上にのせてぼーっと眺めていると、友人は番組に出演するのではなく、番組を制作した側だった。ゲストを呼んで楽しそうにおしゃべりしている。その画だけが目に入って、内容は右から左へ流れていった。そのうち、家のチャイムが鳴り、狐目の知り合いの男が現れた。
「あなたも番組に連れて来いって頼まれたんです。いきましょう」
 ほう、番組制作者ともなるとそんなことが許されるのか。俺はいそいそと上着を羽織った。
 
 もぬけの殻になった男の家を見て、男の友人たちは顔を顰めた。
「くそ、偽物に連れ去られたか!」
 テレビには先ほどこの家に訪れた狐目の男と全く同じ姿の男が笑っていた。

 さて、偽物の狐目の男に連れ去られた男はというと不思議な土産物屋にきていた。土産物屋には男以外に子供が1人いて、きょろきょろとしていた。その少年は、狐目の男にちょいちょいと手招きされた。
「ここに手を入れてみてください。きっと面白いことが起きますよ」
 子供は、目の前の見た目はカラフラな血圧計に興味がそそられた。繁々と眺めていると、狐目に早く手を入れろとせかされるので、そっと手を近づけてみる。男もその様子をじっとみていた。と、もう少しで手が入るというときに、ごつごつしたでかい手に手首を掴まれた。その持ち主は男にとってはよく見知った顔で、いつのまにか、狐目が3人の男たちに羽交い締めにされてバタバタと暴れていた。

 子供があの血圧計のようなものに手を入れていた場合、針が突き出して手に突き刺さり、針から出た毒で殺されていたらしい。それを止めてくれた飲み仲間4人に男は心から感謝した。

 子供と助けに来てくれた友人4人と共に土産物屋をでる。まあなんの努力もしてない人間が、友人のつてだけで番組に出れるなんて、上手いことはないかと思って帰路につく途中、子供が何か気になったのか狭い路地に入っていったので、男は追いかけた。

 スーツを着た男が頭に拳銃を突きつけられ、血を流して死んでいた。拳銃を持った派手なジャケットを着たヤクザらしき男が、ギロッとこちらを睨みつけた。
「何見とんじゃこら、ぶち殺すぞ」
 パァンと破裂音がして男の眉間に球が打ち込まれた。男は子供が丸い目で自分を見ているのがわかった。友人たちも異変に気づき近寄ってきたがそのうちの2人が撃たれ、地面に倒れた。2人は親友だった。朦朧とする意識の中、互いの瞳が閉じていくのを互いに見つめていた。

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