見出し画像

グリーンティーと尺取り虫

今日は全国的に猛暑日を記録しており、小生が本拠地としている三河もその例をもれなかった。それ故に西尾の平原の滝に赴いたのは至極当然の流れに思えてならない。平原の滝で涼を十分に感じた後は抹鶴園さんでお茶をいただくのが三河の若者の間の密かなブームだ。店内には席の種類がいくつかあるが若者なら脳死で窓際のカウンター席だろう。前面がガラス張りになっており、奥行きこそないものの眼前にはオシャレな庭が広がっている。庭の緑と抹茶の緑にお盆の赤のコントラストの美しさに眼を奪われ、目の前のガラスの胸の高さ辺りにへばり付いている尺取り虫はさして気にならなかった。(以降は文章の省略と尺取り虫への親近感も込めて尺取り虫を"彼"と呼ぶことをここで宣言したい。これはポツダム宣言のような仰々しいものではなく、あくまでもフランクなものであり、友達の結婚式を一ヶ月後に控えた女子が言う「明日から甘い物控える!」ぐらいの力感の宣言であることに留意してもらいたい)もしガラスの内側に尺取り虫がへばり付いていようものなら裁判沙汰ではあるが、庭側なので大事にはせず平静を装いながら抹茶点てグリーンティーをすすり、抹茶パフェを頬張った。食べ終わる頃には尺取り虫は頭の上の高さくらいまで登り進めていた。尺取り虫が進む先にはただただガラスが続くだけで何かがある様には見えない。尺取り虫は何かがあるから上を目指している訳ではない。何があるか分からないから上を目指している。僕たちの人生も同じだ。コロナ禍の不透明な未来は何があるか分からないけれど、進み続けなければいけない私たちの現状を尺取り虫は指し示しているようだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?