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カステラの味。【'お菓子の物語'松下友香さん企画】

松下友香さんの企画『お菓子の物語』に参加させていただきます。ギリギリの参加で申し訳ありません。宜しくお願いします。



私にとってカステラは特別なお菓子。

それは曽祖父が昔長崎県からのお土産でもらってきたことからはじまりで、
私の生まれた地域は雪国では当時はあまり知られていなかった。
お菓子のお店は数点あったが、カステラというお菓子を食べる習慣は根付いていなかったようでした。

そんな中、曽祖父は一大発起し
長崎のカステラ職人に作り方を教わってはじめたカステラは、いつの間にかこの地域の名物菓子処へと変わっていった。

型に流し込み、じっくり焼いた職人のカステラは、、ハチミツ、鶏卵、小麦粉、砂糖とシンプルな材料で作られている。焼きたての香りは朝の特別な匂い。
小学校も中学校もこの匂いを毎日嗅ぎながら、
ランドセルをしょった。

いつしか私は大人になり、家を出てカステラを食べなくなった。あんなに馴染みのあったお菓子も、時が過ぎ住む場所が変われば、記憶も薄れてしまう。
コンビニで買うお菓子は流行りのグミや専らポテチだった。

カステラの味を忘れた訳じゃない。
ただあの焼き立ての香りは、私の苦い幼少期の想い出も含まれていたようで、母と喧嘩した朝。
注意しても言う事を聞かない弟。
友達が待っているのに家のお手伝いをして遅れた待ち合わせ、嫌な顔をされた。
嫌いじゃない。
だけどほんのり頭の片隅から薄れていった。


久しぶりに実家からの仕送り便にカステラが入っていた。それはわたしの大好きだった「ほうじ茶味」のカステラだった。
急ぎ手に包装紙をめくる、袋を開けてひとくち頬張る。
ああ、この味だ。私の頭の中が砂糖でとろける。
一瞬にして私を故郷へと連れていってくれた。


春は「しょうが」、夏は「よもぎ」、秋は「ほうじ茶」、冬は「みそ」

秋の味が一番すきだった。
職人さんの毎日変わらない手つき、変わらない接客に店頭のオブジェ。丁寧な手付きでそれらが混ぜ合わされまるで一瞬機械かと思えるような動きで、出来上がるカステラは絶品だ。


これらがすべての日常は、私にとってかけがえのないものだ。いつしか大人になり忘れかけていたのかもしれない。
だけれど、この変わらない繰り返しこそが、私の日常を守っていてくれていたのだ。
忘れていた想い出をこの味が思い出させてくれた。


私のお気に入りは秋の「ほうじ茶」、カステラにほうじ茶なんてと思われるかもしれませんが、ほろ苦いお茶の香りと、鶏卵の甘さがとても合うんです。


お菓子は人を幸せにしてくれる。
お砂糖の甘さは辛さを薄めてくれる。
恋人と分け合う、お菓子は幸せを2倍にしてくれる。

カステラはとても素朴な味だけれど、だからこそ日本茶にも合うし、コーヒーや紅茶の、洋風にも合うんです。いまの季節は冷やしミルクなんていいかもしれません。


令和、
ロシア戦争
パリオリンピック
変わりつつある世界の中に、
少しでも変わらない味があなたを幸せにしてくれますように。


#お菓子の物語#カステラ#故郷の味
#自分の好きなお菓子に着想した物語
#お菓子に愛を❤️

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