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その指先に触れたなら(後書)

─ご挨拶のあとがき風味とネタバレを添えて─
初めて声劇用の台本を書いてみたので裏設定は実は沢山ありました。ただ、余りにそれを入れ込んでしまうと説明調になってしまうことと声劇には向かない台本になってしまうのではないかということで、必要なところを抜粋した上で書きました。設定を踏まえた上で説明をせずにこの台本を書いたという意味では裏設定でもありネタバレになります。なので、此方はあくまでもただの作者の独り言です。

では、ここから先はネタバレになりますのでご注意を。

ネタバレ其ノ壱
女の子の病気は脳腫瘍です。
途中で出てくるサナトリウム、こちらは本来は結核療養に使われることでは有名ですが、戦争が終わり段々と結核も治らない病気では無くなっていったことから実際にホスピスとしての役割も担うことも増えていきました。
実際サナトリウムは療養所、ホスピスは緩和ケア病棟なのですがそれを混ぜたようなものもありますのでそちらを参考にしました。最近のホスピスでは、終末期のがん患者だけではなく脳の病気、また精神科医が出て来て驚かれた方もいるかもしれませんが精神疾患の患者さんの療養先にもなっていることもあり、病気療養中の患者さんの精神的ケアをする、という側面をここでは設定しました。
本題の女の子の病気の話に戻りますと、設定としての年齢が若いので若いが故に進行が早く倒れた頃には既に脳の血管に腫瘍が絡みついてしまい、手術が出来ない程でした。また、腫瘍が出来た場所も悪く脳の中心部にほど近い場所であったことが災いとなり、頭痛や目眩、吐き気があったけど疲れのせいか、と放置してしまった、という経緯になっております。
ネタバレ其ノ弐
本編の通り、女の子は虐待を受けて育ってきました。彼女の周りには彼女を助ける人も居らず高校までは、と我慢して生活していました。なので大学は奨学金を使って通うことで親元での生活からの脱却に成功しました。ですが昨今の奨学金返済の大変さは報道されていることもありご存知の方もいるかもしれませんが、返すだけでやっと、という実情です。返す為には体調が悪くても休むに休めない…そんな事もあって発見が遅れた一因にもなっています。
ネタバレ其ノ参
女の子と先輩には恋愛感情はありませんでした。
普通の会社の先輩・後輩なのです。此方も本編の通り、先輩の前で倒れてしまった事へのお詫びとして経緯を話しています(その証拠に先輩には彼女がいます)。
また、女の子も恋愛にはかなり消極的です。両親を見ていて幸せな家族ではなかったので、結婚や恋愛、そして自分と両親とは別モノとは頭では分かっていてもどうしても踏み出せなかったのです。なので女の子は以前からそういう傾向はあったものの病気が分かってからは尚のこと1人で死んでいくものなんだと当たり前のように思っていました。長くない時間をまるで猫が死に場所を選ぶかの如く終活をして自分の痕跡を全て消していきます。
ですが、入社当時から面倒を見てきた彼女が会社を辞め、仲の良かったはずの同期にすら何も言わずに行方を消した事で先輩の中で女の子が自分にどういう存在だったのか考え始めてしまった。それが最後のあの行動になります。ただ、それでもやっぱりはっきりとしたものとしては最後まで分からないままです。実は知らない事だらけだった、知ったつもりでいただけだったことを後悔するばかりの先輩。彼女のあの冷えていた指先に触れればこの感情がなんなのか分かるのかもしれない、と思っての行動、という訳です。…まぁ、こんな事してる時点でお察しになるかというツッコミは出来ればしないでください。
最後まで女の子の方には先輩への感情を明確にはしていません。そこは演者様にお任せします。

という事で、ここまで読んでいただき本当に有難う御座いました。
最後に、この台本を書くに当たって、協力してくれた「そふぃあ」さん、本当に有難う!