【書評】PERって何?という人のための投資指標の教科書 小宮一慶

概要

基本として知っておいた方が良い主だった指標についてやさしく解説してくれている本。対象とする指標は以下4つのカテゴリーに分けられており、それぞれの定義と基準が示されどんな風に仮説を立てていくかというところまで解説されている。

  1. 経済分析

  2. 企業分析

  3. 株価分析

  4. 投資信託

評価基準は以下の2つ

  1. 評価基準の妥当性

  2. 仮説の納得感

詳細

1.評価基準の妥当性

評価基準の妥当性は使い方によって違う場合もあるし、慣習的にこの程度と言われているようなもの、学術的な研究によるもの、実務家が経験的に決めたものという様にさまざまにありうると思う。
著者が示している基準は著者が経験的に決めた基準に沿ったものが多いように思う。他所で見た基準と比べると全体的に甘めに設定されているものが多いように感じた。
正解、不正解というよりは読者自身が実際に使用を継続して観察したり、他書でも勉強したりして、自分の基準を設定できるようにすることが大切だろうと思う。

2.仮説の納得感

こちらも評価基準の妥当性同様に、著者の経験に基づいた部分が大きいように感じた。参考文献の明示もなく、研究者やアナリストといった立場の方が書かれた本と比べるとマイルドな分析だと思う。強い言い方をすれば裏付けや理論的根拠が薄い。
ただ、本書がタイトルの通りPERって何?というところから始められる指標の本だという事を考えればこれは長所だと私は考えている。
自分が理解できる少ない指標を眺めて仮説を検証し、徐々に対象とする指標を拡げる方がいきなり高度な理論を使うよりも使える道具として身につくように思うので、いきなり他の統計や長期のデータと組み合わせた分析を例示されるよりも、入り口としては良いかもしれない。

総評

少し、著者の経験則に沿った説明の部分が大きいと感じるものの、株価指標や、経済指標単体ではなく広い範囲を学ぶ1冊目として良いと思う。逆に言えば2冊目、3冊目と読み比べたい本ではある。

また、非常に読みやすい本で机に向かって読むような本ではなく、通勤中や入浴のお供に難易度・ボリュームともにちょうど良い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?