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⑧私は便利屋じゃない

「洗濯機と冷蔵庫を買いたいから、車で電気屋に連れて行ってくれへん?」

母親が言い出した。

前ならなんとも思わず普通に行ってたことだけど、あんなことを言っておいてまだ私を使う?

父親が亡くなった途端に、あんたもう用済みだと言っておいて全く自覚がない。
恐らく言ったことも覚えてないだろう。

散々都合よく私を使ってきたくせに、父親が亡くなって自分が解放されたと大喜びし、その嬉しさのあまり飛び出した言葉。
そして弟が急に母親にご機嫌伺いの電話をしてくるようになって、嬉しさのあまり飛び出した言葉。
「家を売って弟にお金をあげるんだから、あんた早く出ていきや。」
これって用済みってことでしょ?
もういらないって言ってるんでしょ。

散々、家のことも親のことも、やってきたのは私。
弟はこの何十年、何一つしてきてない。私に任せっきり。
父親が亡くなった時だって、弟は仕事があるからと来なかった。
私は自分の人生も生きられなかったのに、何もしてない弟は家を売ったお金をもらえるの?
親の世話も介護もやってきたから、せめてここに住んでても良いのかと思ってた。
しかも体を壊してる私に、この人は悪魔か。

ここまで怒りが強いのは、『家を売って弟にお金をあげる』ここなんだろうな。
家を売ったお金で母親が施設に入る、だったらそこまで怒りも強くなかったかもしれない。

それならそれで、今後一切、私に頼らないでくれるならまだしも、今まで通り都合良く必要な時だけ使おうとする。

いつも自分の都合、気分で物を言って何も覚えてない。
どれだけ嫌な思いをさせたら気が済むんだろう。
どこまで我慢したらいいんだろう。

体さえ元気なら、すぐにでも家を出たい。
仕事が出来ない状態ではまだ出られない。

わかってないんだから、いっそ言ってしまう?
私に出て行けと言っておいて、困った時だけ使うなって。

あの人は恐らく、倍返しで言い返してくるだろう。
今までずっとそうだった。

子供の頃から毎日毎日、父親の悪口を聞かされてもう嫌になって、
「そんな嫌なら離婚したら?」って言ったら、
「あんたがお腹に出来たせいで離婚できへんかったんや!」と怒鳴られた。
怒鳴った後には、
「あ、いや、いると思ったから産んだんや…」モゴモゴと言い訳してた。

口から出た言葉は取り消せない。
私は母親から学んだ。
普通ならそんな失敗をしたら何か学ぶと思うけど、この人は学ばない。
そういうことが度々繰り返されてきた。
無神経に言った言葉が、言われた人の心をどれだけ傷つけて一生治らない傷になるか、被害者意識の強いこの母親にはわからないだろう。
もうこれ以上、この母親に傷付けられるのはごめんだ。

だからもう関わらないって決めた。
母親とは距離を置く。
すぐには家を出られないから、心の距離を置く。
もう要らないって言ったんだから、私は何もしない。この家は私の家じゃない。全部自分でやればいい。
あなたも私の親でもなんでもない。
もう私に関わらないで。

そう思って家でも顔を合わせないように避けてるのに、困った時だけ擦り寄ってくる。
気持ち悪い。
もう嫌悪感しかない。

洗濯機と冷蔵庫、買いに行かなきゃいけないんだろうか。
母親に対して恐怖心もあるから、結局いつも都合のいいように動かされる。
やらなかったら、どれだけ悪口を言われるんだろう。
可哀想な自分をアピールして、めちゃくちゃ言われるんだろうな。
外面はいいから良い人だと思われてるので、弟もお嫁さんも親戚も、そのまま受け止める。
母親の正体は私しか知らない。
私が機嫌が悪くて母親に辛く当たる困ったヤツだと決めつけてる。
ほっときゃいいと思えたら楽だけど、そこまで無にはなれない。

やりたくないのに、口を真一文字に結んで黙って運転して、電気屋に行かなきゃ行けないのか…
ネットで買えたらいいけど、そうなると私がやらなきゃいけない。
母親も横から口を出してくる。
関わらなきゃいけないのは同じ。

一緒に車に乗るって考えただけで、気が滅入る。
隣に座られるのも気持ち悪い。
あなたこそ、もう要らない。
早く私の前からいなくなって欲しい。

早く体を治して家を出なくちゃ。
来年は動けるようになるかな。

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