ウサギとカメ
ピョン、ピョーン。ウサギが、楽しそうに草原をかけ回っています。ウサギは、足が速いのが自慢です。ピョン、ピョーン。
そこへ、ゆっくり、ゆっくりとカメが歩いてきました。
「やあ、カメくん。あいかわらず、きみは足がのろいなぁ。この世の中で。きみが1番のろいんじゃないかい?」
ウサギは、ちょっとばかにしていいました。
ウサギの言葉を聞いたカメは、しばらく考えこんでしまいました。周りのことなど、気にしたことがありません。自分がのろまだなんて、思ってもみなかったのです。
「そんなことないよ。ぼくだってがんばれば、速く歩くことぐらいできるさ」
ウサギは大笑いです。
「あはははは。ぼくみたいに速くは無理だよ」
「それならウサギくん。ひとつ二人で競争してみようか?」
「いいとも。そうすれば。きみがどれだけのろまかわかるというものだ」
二人は、山のてっぺんまで競走することにしました。
「よーい、ドン!」
ウサギは、あっという間にカメを引きはなし、ピョン、ピョーンとかけていきます。それでもカメはあきらめずに、いっしょうけんめい歩きます。
ウサギは、すぐにゴールの近くに着いてしまいました。ふと横を見ると、おいしそうなニンジン畑が広がっています。ふりかえっても、カメの姿はまったく見えません。
「まだまだカメくんはやってきそうにないな。よ〜し、おやつにしようっと」
大好きなニンジンを、ウサギはパクパクと食べはじめました。そして、お腹いっぱいになると、
「ふわーあ、なんだかねむくなってきちゃった。まあどうせカメさんは、どんなに急いでも、夕方までかかるだろうしね」
といって、のんきに木の影でひと休み。そのうち、グウグウねむってしまいました。
その間も、カメはいっしょうけんめい歩き続けます。そうして、ねむっているウサギをいつのまにか追い抜いてしまいました。
「ふわ〜あ、よくねた。じゃあもうひとっ走りしようかな……って、あれっ?」
目をさましたウサギは、山の上を見てびっくり。なんとカメは、すでにてっぺんの近くを歩いているではありませんか。
「しまった! カメくんはもうゴールの目の前じゃないか!」
ウサギはあわててかけ出しました。
でも、もうおそすぎました。
いくらウサギの足が早くても、カメを追い抜くことはできなかったのです。
こうして、なまけないで歩き続けたカメは、油断したウサギに勝ったのでした。
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