スピードアップの時代
「タイパ」という言葉を、よく耳にするようになりました。いまさらではありますが、例の先生に聞いてみました。
なるほどね。
昔から、ある程度の速読をしていましたが、近年は動画に移っているのですね。ユーチューブを倍速で観ることができるのを知ったのは、つい最近のことでした。調べてみると、Abemaテレビも倍速で視聴できますし、Voicyも倍速対応しているようです。
全然知りませんでした。
使ってみると、たしかに便利です。よほど滑舌が悪くない限り、ほぼ聞き取れます。近年は「オーディオブック」の人気も、高まっていると聞きました。こちらも倍速で聴く人が増えているようです。
タイパなどと言うと、世知辛い印象がなくもないですが、聞き取れるのであれば、積極的に利用して何の問題もありません。
音声メディアのメリットは、2つあると思われます。
ひとつは他の作業をやりながら、並行して楽しめること。もうひとつは、速度を調節できること。便利です。そりゃ、流行るわけです。
念のため、こうした音声メディアの「タイパ」について、ChatGPTにお伺いを立てると、とても好意的な答えが返ってきました。
以下のメリットがあるそうです。
メリットについて
もっとも、デメリットがないわけではありません。
倍速で聴くことで、理解度が下がったり、ストレスや疲労を引き起こすことがあるので、個人差はあれど、一定の注意が必要とのことでした。
要するに、過度のストレスにならないように、自分にあった速度で聴けば問題はないようです。
音声データは、いずれ倍速で聴くのが当たり前になるのかもしれません。是も非もありません。それが時代の流れです。
ただし、ひとつだけ例外があるのです。これだけは倍速にできないものがある。それは何か?
Mahler: Symphony No. 5 (Adagietto) / Rattle · Berliner Philharmoniker
上記の動画は、マーラーの交響曲第5番から「アダージェット」です。
ハープと弦楽器によって演奏される、とても美しい音楽です。大好きな曲です。作曲家は楽譜にこう書きました。
Adagietto. Sehr langsam.
アダージェット。 とてもゆっくりと。
18世紀以降の作曲家は、アレグロ、アンダンテ、アダージョといった、いわゆる「速度標語」を楽譜に記載します。楽曲が演奏される「スピード」が指定されるようになるのです。
こと音楽に関しては、倍速は不可能です。ゆっくり演奏するように作曲家が指定した楽曲を、演奏家がトップスピードで駆け抜けることはできません。
タイパ全盛の時代、あらゆるデータがスピード競争となり、猛烈な速度で消費されていくなかで、音楽だけは、そういった聴き方を断固拒絶します。面白いところです。
もっとも、1時間を超えるようなマーラーの交響曲を30分で聴いたところで、感動も何もありませんから、当たり前の話なんですけども。
音楽は倍速を許さない。音楽は偉大です。
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