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2023.07.10

猫を病院に連れて行く日。
検診を受けて爪を切ってもらうだけ。のはずであった。

猫というのはどうしていつもと違う気配に聡いのだろうか。
5年ほど前に拾ってきたオスの子猫は、元々野良だったこともあり少しの物音でもビビり倒す臆病な猫に成長した。そのため今日は皆絶対に病院に行くことを気取られないよう、かなり精神を張り詰めさせて生活していた。それでも病院の時間が近づくにつれ、これから起こる戦いに向けて人間側がソワソワし始めてしまい、猫も何かを感じ取り落ち着きなくウロウロしている。

これはまずい。完全に気づかれる前にキャリーに入れてしまおう。
そう思って優しく声をかけながら普段通り抱き上げた。最初はされるがままに大人しかったのだが、キャリーを視認した途端大暴れを始める。なんとか中に入れようとするも足を突っ張っていて入り口から入らない。格闘しているうちに猫は鰻のようにぬるりと抜け出し、走り去っていった。

大人3人がかりでこの様である。しかもこちらは流血。
無言で引っ掻き傷の手当てをした後に猫を探すと、到底引っ張り出すことができないような隙間からこちらを睨んでいた。
好きな羽根のおもちゃをちらつかせてなんとか捕まえようと奮闘していると、なんと外で雷がゴロゴロ言い始めた。雨の匂いとともに、これ今日はもう無理だな……という諦めの空気が部屋に充満する。

結局動物病院に断りの電話を入れ、本日の通院は断念した。
まあ人間だってできることなら病院なんて絶対行きたくないもんな。わかるよ。でも爪は切らせてほしい。切実に。

来週あたりリベンジさせてください。

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