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おもしろ韓国語教室(04)待遇法・超整理法 その1

きょうは「待遇法」の勉強です。「待遇」というのは,ふつう人や客をもてなすことですよね。たとえば「このあいだの韓国への招待旅行は,それこそ部長待遇だったよ」などといいますよね。しかし文法で言う「待遇表現」というのは,言葉で相手にどうやって接するかという「言葉遣い」のことで,話し手と聞き手の社会的関係や心理的距離によって違ってきます。
 
韓国語も日本語も似ているようで,この「待遇表現」には違いがあり,学習者にとっては難しいところです。日本語がある程度できる韓国人でも「うちのお父様が~なさいました」なんて言う人,けっこういますからね。
 
日本人の韓国語も,この「待遇表現」が不自然なために,ネイティブには変な感じに聞こえてしまうことがありますよね。“아버지는 밥을 안 먹었어요.”なんて。
 
この「待遇表現」は,文法書では上称,中称,等称,下称などと堅苦しい表記で書かれていますが,これは簡単に言えば,「上下関係を表す程度」のことです。ていねいか,ぞんざいかということです。日本語でも,何か頼み事をするときに,偉い先生とか社長さんのような人には「ひとつお願いがございますが,聞いていただけますでしょうか」とていねいに言うし,もうちょっと親しい年上の人とかには「ひとつお願いがありますが,聞いてくれますか」のように言いますよね。「おい,キミ!これ頼むよ」と,ぼくに勝手に仕事を押し付けてくる失礼な輩もいますしね。
 
どうですか。もうみなさん「待遇表現」が何かが分かったと思います。そしてこの表現法はしっぽの部分,つまり語尾に現れるんです。
 
この語尾変化のうち,上司や先生などふつう年齢の下のものが上のものに対して言うときに使われるのを「上称」と言います。この「上称」は,また,年齢に関係なく,あまり知らない人どうしでの大人の会話でも用いられます。では,具体的に「待遇表現」の語尾の変化を見ていきましょう。これは,ある映画のワンシーンです。ちょっと聞いてみましょうか。
 
― 정원아
― 예, 아버지
― 테이프 좀 틀어줄래?
― 테이프요? 빌려 오신 거예요?
 
父親が息子を部屋に呼んで,ビデオをかけてくれといっているシーンですね。みなさんはどちらが父親で,どちらが息子かわかりますよね。はっきりと「待遇表現」の違いが出ていますね。
 
日本の敬語の使い方とはだいぶ違います。韓国では,家庭の中でも父親に敬語を使っているんですね。日本の場合は,聞き手への配慮が一番重視されます。目上の人のことを言うときでも,自分の身内であれば謙譲語で話しますけど,韓国語の場合は身内でも年上の人は尊敬の対象なんです。身内に尊敬語を使うのは,どうしても歯がゆい感じで,上級になってもなかなか慣れませんね。
 
韓国語の待遇表現の形を整理しましょう。現代の待遇法は,下のように大きく「格式体」と「非格式体」に分かれています。

【格式体】
        平叙形  疑問形     命令形   勧誘形
합쇼体(上称) 합니다. 합니까?                 하십시오.     하십시다.
하오体(中称) 하오.  하오?          하오.     합시다.
하게体(等称) 하네.  하는가??/하나?  하게      하세.
해라体(下称) 한다.  하느냐?/하니?    해라.    하자.

格式体は新聞記事などに用いられる形で,これは,さらに「上称」「中称」「等称」「下称」に分かれています。韓国語では,それぞれを,합쇼体,하오体,하게体,해라体と呼んでいます。参考書によっては平叙形を使って,합쇼体を합니다体,하게体を하네体,해라体を한다体と呼ぶこともありますが,とくに名称の違いは気にしなくて構いません。

また「非格式体」は, インフォーマルな形ですが,やわらかな表現ですので日常会話で一般に使えます。非格式体もさらに2つに分かれていますが。「略待上称」というのは,親しい間で使われる丁寧形の해요体のことです。そして「略待」と呼ばれるのは,いわゆるパンマルの形です。

 【非格式体】
          平叙形   疑問形   命令形   勧誘形
해요体(略待上称) 해요.    해요?    하요.    하요.
해体(略待)    해/하지.    해/하지?       해/하지.   해/하지.

「明日は雨が降ります」という表現を,それぞれの形で言ってみると次のようになります。
(1) 합니다体(上称) 내일은 비가 옵니다.
(2) 하오体(中称) 내일은 비가 오우.
(3) 하네体(等称) 내일은 비가 오네.
(4) 한다体(下称) 내일은 비가 온다.
(5) 해요体(略待上称) 내일은 비가 와요.
(6) 해体(略待) 내일은 비가 와.
 
このうち(1)の합니다体(합쇼体)は,韓国語を一番はじめに習うときの形で,日本語の「です,ます」にあたるものです。相手に対して失礼にならない一番ていねいな形ですね。また, (2)の하오体と(3)の하네体(합게体)は,主に中年以上の世代でのみ用いられ,若い人の中では,だんだん使われなくなってきています。
 
最近会話でよく使われる~요の形は柔らかい感じがするので,男女の区別なく,ソウルでは会話体で結構使われています。うち解けたていねいな表現を表すもので,해요体と言っています。ただ,この~요の形は少し砕けた言い方ですから,男性は初対面のときにすぐには使わない方がいいでしょう。
 
(*)韓国では,これと別に,中立的待遇法として하라体があるとしている。これは,文章に使われるもので,해라体と違って,聞き手(読み手)を同等以下とみなすものではない。
 
 

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