急に不機嫌になる夫の話

仕事から帰ってきた夫が急に不機嫌になった。
理由がよくわからない。
帰ってから二言三言しか会話していない。
「おかえりなさい」
「お疲れ様」
「お風呂湧いてるよ」
「明日は何時起き?」
「娘ちゃんの宿泊学習の時の写真が届いてるよ」
何かが気に入らなかったらしく「言ってもわからないだろうからいい」
と言ったきり、ご飯も食べずにスマホをいじっている。
空気も悪いしわけがわからないしめんどくさい。
いつもこんな調子だ。
うんざりする。
娘も神妙にして、夫に話しかけるのを遠慮している。
家族に気を使わせて、家の空気を悪くして、さぞ気分が良いのだろうと思うが、本人の中では「妻のせいで気分を悪くされた被害者」なのだろう。
つい二日前に「言ってくれなければわからないのだから、ちゃんと話して欲しい」と言われたのだが、かといって何を言っても否定してくる相手に何を言えば良いのかよくわからない。
絶望が積もって、もはや地平が見えなくなっている。
このままでは娘にも良くないなぁとは思うが、「娘のために夫と別れて私ひとりの力で娘を育てていこう」というほど娘のことも好きではないのだ。
逃げるのならばひとりで行く。
身軽だ。
ただただ責任感で毎日家事をして家族の世話をしている。
今日は娘の学校に二往復した。
不登校気味で、毎日遅刻していく娘を学校まで送り、帰って一時間ほどで今度は図書館ボランティアで学校に行った。
校区の端にある今の部屋から学校までは三十分かかる。
往復で一時間。
二往復で二時間だ。
毎日この調子だ。

最近、駅チカで小学校にも近い物件を見に行った。中学校は眼の前だ。最高の立地だ。管理費も修繕積立金もそれほど高くなく、ローンを考えてもこれなら問題なく払っていける。
夫はにべもなく反対した。
近くに駐車場が無かったから。
近隣駐車場は7〜8分のところにあるのだが、それが我慢ならないという。
敷地内にある駐車場は今はいっぱいだが、そのうち空くだろう。だが、今の部屋に一生いても学校も駅も近くならない。そう言っても。
「いつか空くって、それはいつ?」
それで終了だ。
しかも今の部屋の隣の敷地に建つ物件を嬉しそうに持ってくる。学校まで三十分、駅まで二十分の物件の何がそんなに嬉しいのか。「近隣駐車場が確保されてるって」
もう駐車場で暮せば良いのに。



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