ユモレスク的な朝
目を覚ますと雨の音がする。
朝かもしれないし昼かもしれない。そんな微妙な時間帯だってことはわかる。空は一面灰色でポツポツと一定のリズムで絶え間なく雨が降っていた。
僕はそんな朝にユモレスクをハミングした。何故だかユモレスクなのだ。ピアノでもなく、ヴァイオリンでもない、チェロ。チェロだけのユモレスク。
ユモレスク的な朝はチェロだけのユモレスクをハミングしながらトースターにパンを2枚ぶち込んでマーガリンをぬる。熱いコーヒーを用意して映画を流す。「TAR」だった。リディア・ターの衣装はかっこよかった。クールだった。
「音楽には言葉はいらない」と言っていた。どう感じてもいいのだと。
全くその通りだと思った。
空に青はなくても、鳥のさえずりは聞こえなくても、雨の降りしきる朝でも、ユモレスクをハミングして構わないのだ。チェロだけの。
雨の日、朝だか昼だか微妙な時間、絶え間ないポツポツという音、灰色の空、完璧な目覚め。
僕がユモレスクに感じるのはそういう類いの心地よさだ。
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