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8.10

今まで経験してきたことの全てが自分を成長させてくれるとか、経験が全てだなんてそんなことを言うつもりはない。

失ったものの全部が美化されることはないが、喪った人はみな一様に、あたしの記憶の中では微笑んでいるし、どうかそのままでいてほしいそれが救いだと思ったりもする。

頭が痛くて目が覚めて、薬を飲んでまた微睡んで。それでも朝が来てしまえば必ず体を起こさなければならない。そのことを不自由だと思った時もあったが今ではもう仕方がないと思っているのか慣れたのか。嗚呼、と起きて薬を噛み、飲んで、いつもは低すぎるであろう血圧が上がっていないか心配する。
死ぬことを怖くないと思っていたあの頃のあたしに、この気持ちを薬にして飲み干させたい。大切で有意義な20代、もっとできることはたくさんあったろうにと、そこだけを後悔している。

欲が全て消えてしまったので一度Twitterを離れた。流れてくるタイムラインがキラキラしていて、いいねと推したいけれど、そこにすら白々しさを感じてしまう。
この場合の「欲」は全ての欲である。
若い頃に患った双極性障害が、寛解した今でもたまに尾を引く。2週間から1ヶ月は続く躁鬱の繰り返し。躁期はまだコントロール可能だが、鬱期はもうどうしようもなく、そこからさらに深みに引き摺り込まれないように生活を整えるだけが全てだ。高いところから落ちたら誰でも死んでしまう。眠たくって仕方がない。家族の喧騒が鬱陶しくて仕方がない。

他人に話しても理解されない(されたいとも思わない)ことを、似たような属性の人に話をする。似たような、とは言うが対極である。
この際なので自分はもう、ドミナントとも名乗りたくないが、赤の他人のサブミッシブに自分を語っているうちに、少しだけ自分が見えてくる。つくづく、サディストではなかったのだと。もう落胆もしなくなった。

加虐したい、が先に来るわけでなく、愛情表現として加虐行為をしたい、と言えば聞こえはいい。だが、愛情を注げる相手がいなければ、加虐欲が湧いてこないのは、これは結局どういうこと? と少し考えて考えるのをやめる。
可愛いと思えば抱きしめたいし、愛していると思えたなら大事にすればいいのだけど。

「自分はいいけど他人は駄目」という考え方が嫌いだ。嫌いだけどみんなにそれをしてほしいというわけじゃない。あたしだけが守りたいルールのようなもの。

暑いので外には出たくないが、できれば一生。しかし鬱期は無理をしてでも外に出て体内時計をリセットさせていくという使命に駆られているので、ヨウジヤマモトのキャップを深く被る。会う時にいつも全身ヨウジヤマモトの出立でやってくるとても若い友人はどうしてるだろうか。発熱したという連絡を機に、何も連絡もなくあたしも連絡していない。だけど、たいして心配でない。またふらっと連絡を寄越してくるだろうと思っている時点で、あたしは彼のことは大事ではないのか? と猜疑したりする。そんなわけもないのに。大事だよ。きみも、きみも、きみも。

大事と言えば、誰にも大事にされてない、と思う時は、自分が自分を大事にしてやればいいんだなと思うようになったこと。18歳の自分に聞かせてやりたいな。もっと自由に気ままに生きてよかった。誰かのために生きる必要なんて、ひとつもなかった。
病的に愛してくる夫が煩わしいとすら思える日が来るよ。本当に煩わしい。

少し前くらいから、「家に呼んでも玄関から先に入ってくれないマゾ」のことを思い出していた。彼から得たものは多いが彼が直接教えてくれたわけでなく、彼を通じて考えさせられることが多かった。彼は完全にあたしに対して恋愛感情を持っていたと思うが、ゆえにそれが燃え尽きるのも早かったとは思う。だけど、人を想う気持ちとか、気遣う精神とか、そういうものはふんだんに得た。春だったからよかったね。夏はあの部屋の玄関は本当に暑いから、2人とも熱中症で倒れてたと思うよ。きみは全裸のままで。そのうち文面に起こそうと思う。玄関マゾ。

この世に嫌いなものはたくさんあるが、あたしの体調が悪いと露骨に嫌な顔をする彼のことが一番嫌いだ。

この世は嘘ばかりだけど、疑問を抱かずに愛しちゃう程度には愛おしい。あたしも嘘ばかりかもしれない。と思いながら時間をかけて洗濯物をたたむ。日常とは一番残酷な時間なのかもしれない。疑問にすら思わないから。

たまに泣きそうになりながら、3年半ほど会話もしなかった無邪気な魂を抱き寄せる。目も合わなかったのに、今では気持ちを伝えてくれる。だけどあたしが抱きしめた時は鬱陶しそうにする。泣きながら笑ってそれを離す。なのに静かに隣に来て抱きしめてくる時がある。これを愛しさの根源と言わずしてなんと言おう。いつかあたしが突然消えてしまっても、どうか強く生きていってね、と伝えたら、魂を傷つけてしまうかもしれないから言わないようにしている。だけど幼い魂の口癖は「早く自立したい」。

何を大事にするか。誰を、じゃない。何を。
それはずっとぶれずに持っているつもりだし、かと言ってこれが自分の芯の部分だから理解してと言うつもりもない。いろんなことが起きて、いろんな出会いがあって、ターニングポイントがあって、ライフワークが変わる。それだけで考え方は変わるけれど、何を大事にするかの根本は変わらない。

今日は何をしようかなと思えるだけの気力がなく、無気力。こういう時に無理をしてでも気持ちを高める、というのは逆効果であることを、長い人生の中で学んだので、もう1錠薬を飲んだら少し眠ろうと思います。

今日のこれは全部本音。

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