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     白の連還 終章

        白い蛇


 豪雪に翻弄された冬山シーズンもおわり、四月十日の山開きの祭事も無事終え、山岳スキー愛好家の来訪を待ち望む白馬山系の一角で、年末年始に多発した表層雪崩が原因とみられる遭難事故の現場が発見された。場所は、天狗原から蓮華温泉に下る沢筋の一角で、壊れた避難小屋の中から、年長者の男性一人、長髪の若い男性一人、大腿骨に添え木を施した若い男性一人、そして、五十代の女性一人の計四人の遺体が発見された、と地元紙が報じた。

 同記事には、すでに着手ずみの身元調査に触れ、回収した所持品、とくに彫銀の白蛇を心棒にあしらった木製のピッケルや、木製の竪琴などから、昨年末に入山したあと行方不明になった捜索中の四人ではないか、との観測も合わせ伝えられていた(完)。

 

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