シーズン本格スタート前にもう1度、新ルールの主要3ポイントと疑問点

フィギュアスケートって五輪明けにルール変更が多いイメージあるんですが、今回は非常に多くの変更点があります。ファンの皆さんには釈迦に説法ではありますが、今一度新ルールのうち特に話題にもなった3つのルール変更の概要や疑問点、注目点を洗い出してみようじゃないかという記事です。
ちなみに手前味噌ですが、私のYouTubeの配信で過去に触れておりますのでそちらも是非ご覧ください。

理解できる一方実効性が今ひとつ見えない年齢引き上げ

シニアの年齢下限が15歳→17歳に引き上げになりました。日本でも島田麻央さんの次回五輪の出場可否を分かつルール変更であったため比較的話題になったルール変更ですね。
そもそも以前から議論されていた内容であることを理解した上で考えなければいけない話ではあるものの、この議論が年齢引き上げの結論に至るに急加速したのは北京五輪中に発覚したロシアのワリエワ選手のドーピング疑惑問題が大きく寄与したと思います。

ドーピング問題でなぜ議論が加速したか?そこにワリエワ選手の年齢が挙げられます。当時のワリエワ選手は15歳。ドーピング問題で氏名公表等を控える未成年的配慮を行う年齢も15歳以下であったため、当初五輪期間中にこの問題が出始めた頃は誰がどのような問題で問われているのか分からない、なんとも気持ちの悪い状態でした。最終的には選手名も公表されましたが、その上で「15歳以下の保護の観点等もあり試合には出場可能」という判断がくだされました。しかしながらオリンピック委員会側の反発もあり「出場はしゃーないけど表彰は保留」というモヤモヤ感のある対応となったのは皆さんの記憶にも新しいところかと思います。早くアメリカと日本の団体戦の表彰をしてあげてほしいですね。

そんなこんなで、平たく言えば「自分のケツを拭けない年齢の選手がシニアにいて良いのか?」という考えも出てくる中で年齢引き上げの議論が加速、最終的に17歳へ段階的に引き上げる議案が可決されました。
表向きには若い年齢の選手の肉体的・精神的負担の軽減を目的とされており、こちらの記事でも岡部由起子さんによりその類の説明がなされています。要は、特に女子の高難度ジャンプ(3回転アクセルや4回転)を若いうちからやる風潮が身体に負担というのが最たる趣旨となっています。

ただ、1つ疑問として残るのが、年齢を引き上げたとて17歳にシニアの年齢が引き上がったから4回転の練習を15歳や16歳まで待とうとはならないのでは?というところ。
つまり、練習では皆やっちゃうよね?そしたら結局回数も嵩むよね?ということです。
なんと言っても、五輪金メダルのシェルバコワ選手と銀メダルのトゥルソワ選手は皆さんも4回転のイメージが強いと思いますが、この2人北京五輪が17歳ルールだったとしても五輪出場出来てるんです。つまり、結局勝つためには高難度ジャンプ必須という風潮は変わらないのでは?ともすると若いうちから高難度ジャンプの練習をしないと17歳でシニアに上がった時に活躍できないという発想に至るのでは?と個人的には考えます。

ただ、自分のケツを自分で拭けない選手がシニアで良いのか?という点はもっともなので、私としては16歳に引き上げという選択肢があっても良かったのではないかなあと考えています。
期待されているような、ジャンプに比重が高い状況の修正はなされないと予想しています。寧ろ、高難度ジャンプを跳べる選手が増えて成熟していくのではないかとすら思います。(その辺の時代の変遷の話はまた別の機会にも記事にしたいと思います)

面白いジャンプが沢山観られそうなジャンプシークエンス

こちらもファンの間では話題になったルール変更。今までジャンプシークエンスはジャンプの合計点の8割が得点となっていましたが、10割で評価されることになりました。
そもそもジャンプシークエンスって?という方もいらっしゃるかもしれませんが、コンビネーションジャンプと違って着氷後にサクッと足を入れ替えてリズミカルかつ即時に次のジャンプ(アクセル)を跳ぶ(=踏み切りの足が変わるので普通のコンビネーションで跳ばれるトウループ・ループでなくアクセルが跳べる)、というものです。分かりづらいですね。要はコンビネーションジャンプの2個目か3個目のジャンプにアクセルが入ったらジャンプシークエンスなんだなと思えば観て楽しむ分にはOKでしょう。今までのルール下でもリーザことロシアのトゥクタミシェワ選手はほぼ毎シーズン入れていたのでイメージがある方もいらっしゃるでしょう。

さて、そんなジャンプシークエンスの得点がコンビネーションジャンプと同じように点数評価されるようになったので、今季以降ジャンプシークエンスを見る機会は劇的に増えるでしょう。特に今までコンビネーションに+2T(2回転トウループ)をつけていた選手がそこを+2A(2回転アクセル)にするケースは多くなりそうです。
そして、今までなかなか観られなかった面白い組み合わせも出てくるような気がします。具体的には、過去羽生選手が決めている4T+3Aなどの4回転+アクセルというジャンプシークエンスや、宇野選手が練習していることも報じられている3A+3Aというアクセル盛り合わせなどです。4年後の五輪頃には一定の最適解が出ているかもしれないですが、向こう2年くらいはお試しで色々な今までにあまり見慣れないジャンプ技が観られそうで楽しみです。(既にローカル大会で3T+2A+2Aなんて面白ジャンプもあったみたいですね)

検討して欲しい、演技構成点の0.25点刻みの撤廃

もう1つ、大きなルール変更として演技構成点(以降基本はPCSと記載)の採点項目が5つ→3つになったことが挙げられます。
細かい話は置いておいて、従来採点基準がなんとなく被ってる部分あったものを統合、スケーティングスキル・コンポジション・プレゼンテーションの3つで採点します!という内容です。選手にとって見られるポイントがそんなに変わるわけではなさそうなのでどちらかというと審判の採点の負担軽減の色が強いルール変更であり、選手への影響は実際には少なそうです。(ファンの間では色々話題になっていましたが)
そして、項目数が減った一方技術点との比重は変えたくないという意向から、PCSの係数が5/3倍されました。例えば、従来男子シングルのフリープログラムでPCSが各項目6点×5項目=30点と評価された場合男子フリーの係数は2倍だったので30点×2=60点になっていましたが、今季からは項目が3項目で係数が3.33倍となるので同じ採点がされた場合6点×3項目×3.33=59.94点となるイメージです。5/3が割り切れないので端数ズレは起きていますが概ね従来通りでありこれ自体は自然だと思います。
ただ、1つ気になるのが点数の目が粗くなることです。現在のPCSは各審判各項目ごとに0.25点刻みで採点がされていますが、0.25点引き上げることの重みが従来よりも重くなっていると考えます。
分かりづらいと思うので具体例で考えてみます。例えば男子シングルショートプログラムは従来の係数が1倍だったものが今回1.67倍になっているので、0.25点上がると従来は0.25×1=0.25点の影響だったものが今後は0.25×1.67≒0.41点と従来よりも0.16点大きくなるということです。
フィギュアスケートは0.01点を争うスポーツであり、この目の粗さは気になります。実際、過去には全くの同点という事例も複数例起きています。解決策はシンプルで、0.25点刻みをやめてしまえば良いのでは?と思うのですが、意外とこの目の粗さは話題にもなってないので私の気にしすぎなのかもしれません。ただ、技術点の審判と演技構成点の審判を分けるという案も今回検討事項(今後お試しでやってみる方向性)として上がっているので、それと並行してより精緻な採点方法の検討はしてほしいと感じます。

まだまだルール変更は色々!

さて、今回はファンの間でも比較的話題となった3つのルール変更について取り上げました。現状の想定される面白そうな点や懸念点も合わせて好き勝手書いてみました。
まだまだルール変更はあり、大きなところだとジュニアシングルのステップ要素の変更(今までステップだったのがコレオシークエンスになる)、スピンやステップのレベル認定のルールの変更等もあります。ルールって難しい!
実際に試合を観ながらまた慣れていきたいですね。
選手は凄い方々なのでおそらく新ルールにもすぐに順応して、ルールに合った好演技を沢山見せてくれることでしょう。シーズンの本格スタートが楽しみです。

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