見出し画像

コスプレ衣装製作、依頼人が男性だと断られるのは何故なのか?

Twitterのコスプレ系のハッシュタグ付きツイートを見ていると、たまに「衣装屋に製作依頼したけど断られたのが始まりで、自分で衣装製作始めた」っていう趣旨の男性のツイートをチラホラ見かける事があるのね。

これ、結構コスプレ衣装製作を代行している個人の方の受付サイトの注意事項にも普通に記載されていたりするので、本当なんだろうなって思う。

(*これを書いている当方は、高校は家政科に所属しそのまま服飾専門学校に進学し、アパレル業界に就職した元プロ(現在は仕事としてのアパレルから離れています)に一応なります。)

私は個人の方の製作代行は受けていないのだけど、私個人がその時々で「作りたい!」と思った好きな作品の好きなキャラクターの衣装を勝手にMサイズで製作して、完成後にネット販売していたりする。もしそんな自分が製作代行を依頼されてお金を頂いてやる場合を想定して考えても、はっきり「自分も男性の依頼は断るなぁ」ってなっちゃうから。

えー、それって差別じゃん?何で男だと断るのさ??って思う方多く居るかもしれないけれど、実はこれってコスプレ界隈と服飾界隈の問題点の重なる深い事情もあるんだよね。

軽く説明すると…

①服飾の専門学校でも勉強するのは基本的に女性の服の作り方のみ

例えば、男性であろうと女性であろうと専門学校に入学すると、基本的に勉強するのは女性の服の作り方のみ。男性であろうと一番最初に作る授業の課題の洋服はシンプルなスカートで、授業で学べるのは女性の服の作り方だけ。4年生制とか、更に上のコース、もしくは専攻授業なんかで自分から自主的に選択するか、授業外のプライベートを犠牲にしない限り男性の服の作り方って学べない。そう、それくらい機会が無いの。

卒業後、就職した会社やブランドでメンズ部門があって初めて触れる、なんてこともしょっちゅうあるよ☆

因みに私が通っていた専門学校では、一番長い四年コースに在籍していたけれど四年間で男性の服の製作に関する授業は一回も無かった。休み時間に講師と雑談で「そういえば男性原型の書き方のプリント今あるけどいる?」って言われて、コピーさせてもらった程度のやりとりかな(;´Д`)

つまり、元プロの私でさえも女性の服はなんなく作れても、男性の服の作り方の知識はほぼ皆無なのだ。勉強して、試作を重ねないと仕上げることは無理だろう。

②コスプレ界隈って女性が多い。

コスプレを楽しんでいる人たちの比率って圧倒的に女性が多い。自分で衣装を製作するタイプのレイヤーさんでも、女性キャラクターをするのであれば型紙なんかは市販のもので賄える。

逆に女性だけど、男装(男性キャラクター)中心にコスプレ楽しんでいるよって人でも、使用する型紙は女性の型紙を改造して製作する事が多い。人によっては、男性キャラクターを演じる時は市販のメンズ服を購入するっていう事もあるみたいだけど、女性が男性の服を着てもそれが体に合うかっていうと基本的に合わないからやっぱり探すのは大変だし、写真の見えない所で色々と工夫をして合わせる事がほとんど。だって女性と男性じゃ同じMサイズだとしても骨格も体のサイズも違う。

だから、自作する女性レイヤーさんでも市販の女性用型紙から改造して男性キャラクターの衣装を製作する。

やっぱりここでも必要になるのは女性の服の作り方に関する知識の方なのだ。

③一番いいのは餅は餅屋に。

①と②で書いたような土台を踏まえて「じゃあ俺はどうしたらいいんだ…?」って思った男性レイヤーさんは、一般の男性服をオーダーメイドで作れるような職人さんを探した方がいい。

男性服を作れる職人さんって、服飾の技術の頂点に立つ人たちとされていて、女性服の知識もあるし、男性服の知識もある。学問で言えば二つの部門を極めたようなプロ中のプロ。勿論、そんな凄い人たちだからお賃金は高いんだけど確実だ。

待ってくれ、俺は男性だがやりたいキャラクターは女性キャラなんだ!!って人は、「女装子」さんとか「ドラァグクイーン」さんの衣装を作ってますって人に頼むのが一番確実。土台は男性のパターンだけど、そこから女性に見える用に知識と技術を駆使しているプロだからね!

餅は餅屋に、です。


コスプレ服ってある意味特殊なんだけど、服といえば服だしプロに頼むとプロの知識に基づく衣装を作ってくれるから、より二次元の中の筈のキャラクター達が実際に現実(三次元)に存在する落とし込みをしてくれるから、そういう専門家を探すのが一番近道だよ。


コスプレ衣装製作代行しますっていう依頼を受けている人たちは形として

①、個人(一人で回してる)

②、サークル(何人かで集まって運営してる)

上記のタイプあって、更にその内実が

③、専門卒(資格有) 、現職アパレル

④、独学(製作年数〇〇年、製作着数〇〇着)

⑤、専業(衣装製作のみで食べてる)

⑥、本業は別でお休みの日や仕事終わりに作業している

になるんだけど、圧倒的に①と④と⑥でやっている衣装屋さん多いので。

①と③と⑤の場合、業界(舞台とかアイドルさんとか)の衣装製作を中心に活動していて一般の方からの依頼は受けないっていう業界専門(に実質なっちゃっている)衣装屋さんが多い。

スケジュールの確保や製作を受けられる件数を月に何着までって限っている事も多いので、「男性から依頼があって、ステップアップに引き受けてみたいけど勉強する時間もないし…」っていう切実な部分もあると思う。

市販の手芸本で男性服の作り方の冊子が出始めたのもここ数年だし、③の場合は更に其処にスケジュール埋まっていて一般の方の依頼受けられるの〇年先とかしょっちゅうだしね……。

……実はもう長い間、私も男性服の勉強したいなって思いつつ中々時間が取れないっていう(;´Д`)<精進します

(現実に殺されております)

私も女性服なら試作を作って、自分で着用したり動いたりして問題点見つけられるけど、男性服を作ったところで見た目はちゃんと出ていても、着たらちょっとここが…みたいな問題点あっても見つけられないからね。

それを着てくれるような男性の知り合いもいないしな?!!

まぁ勿論、上記で書いた以外の何らかの理由があるかもしれない。でも、多分ここに書いた理由でお断りになっている事多いと思うんだ…。

衣装屋に製作依頼したのに、男性だから断られた!ってショックを受けたり、怒ったりする前に、こんな理由もあるんだよ~っていう可能性を知ってもらえるといいな。


そして、なによりそこから「なら自分で作ったらー!!」となった貴方はとても凄い。自分のサイズにあった自分の衣装を自分で作れちゃうなんて最高だぜ。


#コスプレ #衣装 #衣装製作




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?