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私の原点

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NHKの取材者たちの「原点」はどこに?ルーツを語った記事のマガジンです。
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#小児がん

「小児がん」治療のあり方を変えなければ…患者の親となった私は自ら取材することを決意し、巨大省庁に乗り込んだ

「それでジャーナリストと言えるのか」 娘が小児がんを発症したことで、事件記者だった私は、信頼できる仲間に日本の医療体制の問題を取材してもらいたいと懇願した。 しかし彼らから返ってきたのは、予期せぬ答えだった。 そして私は、それまで培ってきたキャリアに別れを告げ、「当事者」の立場から取材することを決めた。(前編はこちらから) 「もし娘が」インタビューができない2008年の夏の異動で、神戸局から社会部に戻った。ほどなくして私は小児脳腫瘍をテーマにした「クローズアップ現代」

「医者によって子どもの運命が変わる」日本の医療の現実、娘のため「当事者」になった私は一線を踏み越えた

記者は取材すべきことを、客観的に見なければならない。だから、当事者は取材に関わるべきではない。そう思い続けてきた。 記者になって10年以上が経過し、その考えが変わったきっかけがある。 わが子が小児がんを患ったことだ。 娘は小学1年生の時に小児脳腫瘍を発症した。彼女の闘病生活、そして同じ病と闘う子どもたちを見て、私は初めてこの国の小児がん医療の現実を知った。 “かかった病院や医師によって、その子の運命が変わってしまう” この現実を何としても変えたいと思った。ただ、当初