テルマ&ルイーズ/女二人のバカンスからの逃避行

夫に支配され友人との旅行も言い出せないテルマと、ウェイトレスとして働くしっかりもののテルマ。
二人は久々のバカンスを満喫するため、ルイーズの運転する車で山荘に向かっていた。しかし、途中に立ち寄った店でテルマが男に襲われてしまう。そこに駆けつけたルイーズ。テルマの持ってきていた銃で男を威嚇し助けだすことができたけれども、男が侮蔑的な言葉を吐いたのが許せず、ルイーズはたまらず男を撃ち殺してしまった。

ここから二人のバカンスは、メキシコへの逃避行となった。

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とても好きな映画!

この映画最大の見所は二人の変化。特にテルマの変貌ぶりはわかりやすくすごい。

最初のテルマはとにかくみていて不安になった。夫の腕時計を甲斐甲斐しくつけてやるような従順ぶり。逃避行の最中には思慮のなさで大事な逃走資金をうかつにも盗まれるお粗末ぶり。

そんなテルマが、この逃走資金を盗まれたのを私のせいと自覚してから大きく変わる。行為の良し悪しはさておき、やっと誰かを、夫を、ルイーズを、行きずりの男を介さない、意思決定をはじめるのだ。

一度目覚めたテルマは、ルイーズからこの道の天才と褒められるほどの手腕を発揮する。

じゃあルイーズはといえば、こちらはこちらで変わっていく。
最初はとにかく一人で強い。焦りながらも、逃走の決定や今後の行き先も決めていた。けれど、恋人との苦しい別れとテルマの失態が重なって、もうおしまい、と泣き崩れてからは、警察がいるとわかってなおテルマの家に電話を繰り返し、警官と話し、終に逆探知され、逃走において最大の失態をおかしてしまった。

ここが本当に不思議だった。
なぜ、テルマは要求もしないのに、繰り返し電話をするの?

この回答は、逆探知された際の電話を横から切った、テルマの言葉に尽きるのかもしれない。

裏切らないでよ。

ルイーズはこの時点では、逃避行に少なからず後悔があったのだと思う。テルマと違って、ルイーズはこの旅で得たものはそう多くはない。友人の危機を救うことはできたけれど、帰る場所をなくし、最愛の恋人と結ばれてはいけなくなったのだ。だから、メキシコではなく恋人のいる場所に留まりたいという思いが、受話器をとらせたのではないか。

そうすると、ルイーズの変化は、誰かに寄り掛かれるようになったことだと思う。寄り掛かりたいと思える、というか。だけどそうなってからは戻れないから突き進むしかないのだ。

じゃあ始まりが全て間違っていたかというとそう否定的には見えない。メキシコに向かって突き進んでいく二人をみていれば、自分を抑圧してきたものに反発できた開放感が伺える。特に、二人を追う警官たちの陰鬱な画面と、広大な赤みがかった大地をブルーのサンダーバードで疾走する二人の画面は対照的だった。

そしてラストシーンでのテルマの、泣き出しそうな困惑したような、それでもこの旅は最高だったと言うあの笑顔がとても印象深く残る。二人の選択は、あまりに清々しかった。

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