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こぼの楽曲、「HELP!!」と「Entah..」について

語りたいと思います。あくまで独自の解釈なので、考察の一つとして捉えていただければ。

「HELP!!」は2024年3月27日に公開された楽曲で、なとり作曲のカッコいいメロディと(ほぼ)全編にわたる日本語詞が特長です。まだ聴いたことがない人はぜひ素敵なMVと併せてご覧ください。
(https://youtu.be/50Ura_ZcSvY?si=-eUoGLosKER9ZnkM)

「Entah..」は2023年12月13日に公開された楽曲で、これまでの明るく可愛らしい「Mantra Hujan」や「Oh! Asmara」とは印象の異なるしっとりしたメロディととんでもなく重い歌詞が特長です。私はこの曲がきっかけでこぼ推しになりました。
(https://youtu.be/Y1lI26a0E1E?si=oQap6L4f6a1aDsmT)

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本題に入ります。
私は、「HELP!!」は「Entah..」のアンサーソングだと解釈しています。ちなみに、「Entah」はインドネシア語で「何が何やら」という意味合いの言葉で、私は「分からない」と訳しました。
「分からない…」からの「HELP!!」という時点でだいぶ雲行きが怪しいですね。一雨来そうです、こぼだけに。

時系列を分かりやすくするため、まずは「Entah..」について述べたいと思います。なお、この曲は公式の日本語訳がないため私の意訳を前提に要所を抜粋し、解説していきます(誤訳や解釈違いは指摘いただけると助かります)。

イントロはなく、いきなり歌から始まります。
①『Sempatkah jika aku bangun
  Melawan demi diriku』
:『もし私の目が覚めたら、まだチャンスはあるかな?
  挑戦するための。』

②『Tidurlah wahai diri yang rapuh
  Dunia enggan mengganggu
  Kapan terakhir kau bermimpi?
  Memiliki ambisi』
:「おやすみなさい、弱い私。
  誰も引き留めはしない。
  …最後に夢を見たのはいつだっけ?」

①は②より未来の時点であり、冒頭で眠りに就いている『aku(私)』が『diri yang rapuh(脆く壊れやすい自身=弱い私)』のことだと分かります。
夢が破れた事実に耐えられない『弱い私』を守るために、『弱い私』ではない新たな人格が生まれたことが想像できます。

③『Letihnya kaki menari
  Dalam bayang-bayang
  Tapi siapa peduli?』
:『幻影の中で踊る足が疲れたって、
  誰が気にするだろう?』

1番と2番のサビ前で共通に使われる歌詞ですが、それゆえに感情(発音)の変化が分かりやすく、2番の悲愴感が際立ちます。とても好きなフレーズです。
『幻影の中(夢と現実の狭間)で踊る足が疲れたって、誰が気にするだろう?』という言葉からは度重なる挫折と苦悩、そして孤独が感じられます。

④『Mendung tak berawan
  Hujan! Berhentilah!』
:『雲一つない雨空。
  …雨、止んでよ!』

『Hujan』は『雨』という意味で、2022年3月27日のデビュー時に披露された楽曲「Mantra Hujan」にも含まれ、こぼを象徴する言葉といえます。また、ここでは『Mendung tak berawan(雲のない雨雲=雲一つない雨空)』という矛盾した表現が気になります。レインシャーマンであるこぼが制御できていない雨、実際には降っていない雨…つまり涙のことでしょう。「Entah..」のMVは涙を浮かべたこぼの姿が印象的です。

⑤『Bersenandung dalam kerapuhan
  Buram ku melihat, silau menusuk mataku, haaa

  Semua hilang satu persatu
  Mimpi dan impianku
  Apa dunia sejahat itu?
  Aku ingin hidup』
:『儚さの中で歌う。
  …曇った視界を突き刺すような眩さが見えた、嗚呼

  一つ、また一つ、ぜんぶ消えていく夢、私の夢。
  世界はそんなに意地悪なの?
  私は生きていたい』

Cメロと最後のサビになります。MV冒頭からこれまで涙を浮かべていたこぼの目から、(よりによって)ここで涙が消えます。ちなみに、背景でひっそり降り続けていた雨も止んでいます。MVだけ観ていると雨(涙)が止んでハッピー!みたいな印象もありますが、とんでもなく重い歌詞がそれを許しません。

Aku ingin hidup(私は生きていたい)

今まで、『足が疲れ』涙を浮かべながらも何とか『幻影の中で踊り続けていた』ものの、ついに限界を迎えてしまいます。自身そのものともいえる夢たちは、全て消えてしまった。それでも『私は生きていたい』と願った。その結果生まれたものが『私』という人格と、晴れた笑顔でした。ムーナの「Perisai Jitu」、『(自分を守る)適切な盾』もとい『笑顔』に通ずるものがあります。
そして笑顔とは対照的な、これまでのサビよりひと際激しくなったガムランのような伴奏(心象)が胸を締め付けます。

⑥『Perlahan ku menelan… (Pahit hidup)
  Sampai jumpa diriku yang lain』
:『(悲しい運命を、)ゆっくりと受け入れていく。
  …またね、もう一人の私。』

時系列的には②の直前でしょうか。現実と向き合い、涙を浮かべていた『弱い私』、『もう一人の私』に、笑顔で別れを告げます。
ここでは2通りの解釈ができます。
・夢(≒自分自身)は全て消えてしまったのだから『弱い私』は永遠の眠りに就いた。
・『もう一人の私(≒最後に残った夢)』を守るために一時的に眠らせる(berteduh:雨宿り)ことにした。
前者は私好みではあるのですが、あまりにも救いがありません。コノウタニ救イアレ…。そして、ここで活きてくるのが冒頭の①なのです。

『もし私の目が覚めたら、まだチャンスはあるかな?』

良かった…『もう一人の私』は生きていました。『Sampai jumpa』は別れの挨拶で『さようなら』と訳すことが多いのですが、ここでは後者の解釈に基づき『またね』としました。

以上、「Entah..」の趣旨(解釈)は伝わりましたでしょうか。最後にまとめたい気持ちもあるのですが、(一縷の希望はあれど)たいへん辛い内容ゆえ、控えることとします。

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さて、長丁場ですが今しばらくお付き合いいただけたら幸いです。
続いて「HELP!!」について述べていきます。

この楽曲は、
>Lyrics: natori / Kobo Kanaeru
ということで、日本語詞については主になとりが担当しているものと思われますが、Cメロにはこぼ作(推測)のインドネシア語詞が含まれています。私が「HELP!!」を「Entah..」のアンサーソングと捉える所以は、ここにあります。したがって、まずは当該のCメロについて解説し、そのあと初めから紐解いていくことにしましょう。

⑦『夢を見たい、けど.
  Mimpi terasa jauh, ku terkurung
  Bagai mesin tak berdaya, hampa dan tak bernyawa
  Karna ku tak punya pilihan』
:『夢を見たい、けど.
  夢が遠くに感じられる、私は囚われてしまった。
  力はなく空っぽで、命を持たない機械のように。
  だから私に選択肢はない。』

先述した「Entah..」の内容が集約された歌詞と言えます。これを踏まえると「HELP!!」はそこ彼処に「Entah..」が感じられます。

⑧『天使は、もうこの部屋にはいない』

単にこれだけだとクソガキ(尊称)がイキっているようにも見えますが、前提に基づき『天使』を⑥『もう一人の私』と捉えると、『またね』と笑顔で送った『私』が事実を淡々と説明しているものと考えられます。すると、一気に『悲しい運命』が感じられる儚い歌詞に思えてきます。

⑨『ないものねだりで夜が明ける頃
  誰かの寝言が街を歩く頃』

初見ではこの歌詞が意味するものが何か分かりませんでした。しかし、「Entah..」を下敷きにすると、ありありとその姿が浮かんできます。
『誰かの寝言が街を歩く頃』、すなわち『眠りに就いた弱い私の寝言()が街を歩く頃』となります。⑧と併せ、「HELP!!」の主人公比重が「Entah..」ラストの『私』にあるという信憑性が増します。

かわいい(確信)

⑩『HELP!! このままじゃ、生きられない
  Daddy, Mummy 私、いい子じゃいられない!』

ところで、私が「Entah..」で最も衝撃を受けたのは、⑤泣き止んで笑顔で『Aku ingin hidup(私は生きていたい)』と歌った詞でした。ここで言う『このままじゃ、生きられない』は、それを言い換えたものに思えます。
しかし、「HELP!!」の主人公が『私』だとすると、『弱い私』のために生まれた『私』の心境に何らかの変化があったように感じられます。

⑪『夢見る時間に限りがあること
  期待した分、裏切られていく齟齬
  私じゃなきゃいけない、理由はどこ?
  あぁ、なんて失敗作』

ここも「Entah..」を思わせる内容ですが、どのように解釈するべきか悩みます。誰が誰を指し『失敗作』と表現するのか。ここで言う『私』は『弱い私』なのか、(それを笑顔で送った)『私』なのか、はたまた両方なのか。いずれの場合も意味が通じますが、私としては、両方ではないかと考えています。

その理由は「HELP!!」のMVにあります。MV冒頭ではまず、こぼの影だけが歩いていて、次第にこぼの実体がそれに近付いていきます。影が先に歩いているということは、影が本来の『(弱い)私』と考えることができ、それを実体を持った『私』が後ろから追い越していく様子は「Entah..」で描かれたストーリーを彷彿します。しかし、「HELP!!」の2番では再びこぼの影が実体に追い付き、ついに影の方が主体となります。また、各メロの後半やサビではこぼの影と実体がそれぞれ実体と影に重なりながら同じ動きをしていることは非常に興味深いです。
すなわち、『弱い私』(影)も『私』(実体)も決して切り離せるものではなかったのだと読み取ることができます。

⑫『このままじゃ、楽しくない』

「Entah..」において『弱い私』の『生きていたい』という願いにより分離した『私』が生まれたものの『このままじゃ、楽しくない』と、実体と影はリユニオンを果たすのでした。
このフレーズのあと、最後のサビでは実体と影が独立かつシンクロして存在しますが、これこそ人格(キャラクター)の完全な統合の象徴であり、ラスト(3:05)の布石と捉えています。

⑬『面倒なんで、全部大正解
  あれもこれも好き放題、私は叶えるの

  今だけを見つめていたい
  そう、今だけをこぼさないように』

とても好きな歌詞です。お気付きとは思いますが、『私は叶えるの』と『今だけをこぼさないように』から、この曲はこぼ・かなえるの歌だと分かります。まさにキャラクターソングであって、たとえ私たちは共感する箇所があれど、あくまでこれはこぼの、こぼ(&なとり)による、こぼのための楽曲なのです。
かつて⑤『Semua hilang satu persatu Mimpi dan impianku(一つ、また一つ、ぜんぶ消えていく夢、私の夢。)』と歌った人が、『あれもこれも好き放題、私は叶えるの』と歌っていること、『夢』ではなく『今だけを見つめていたい』と歌っていることは、私にとって救いです。

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以上がこぼの楽曲、「HELP!!」と「Entah..」についての私の解釈となります。ここまでご覧いただきありがとうございました。
もし、ご意見ご異論あればぜひ聞かせてください。ともに解釈を深めましょう。

今回は語りませんでしたが、こぼのその他の楽曲、「Mantra Hujan」、「Oh! Asmara」などもオススメです。センチメンタルになった心には「Sebatas Video Call」がよく沁みる…。

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