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求められるということ

恋愛ってなんだろうって考えてしまう。マッチングアプリをしてきて、まず驚いたのは寂しがり屋が思っていた以上に多かったということだった。私は1人の方が好きだし、一人暮らししても1人を謳歌してした。それが普通に皆していることだと思っていたが、現実はとても違ったらしい。寂しがり屋は聞くところによると、仲良い友達のところに遊びに行ったりしているらしい。反対に言えば私には近くにそんな人がいなかったので1人で過ござるを得ず、それでも普通にいられたことがすごいことになってしまうらしい。仮に寂しがり屋が一人暮らしして誰も仲良い人がいなかったらどうするんだろうとか考えてしまった。寂しがり屋はとても大変そうだ。

話は逸れてしまったが、私のことが好きな人は寂しがり屋で会いたがるし、それが出来なかったら毎日電話したいらしく、いつもいつも飽きずに聞いてきてようめげないなぁと感心してしまう。仕方なく電話に付き合ったが、私がノリに乗れず空気が重くなった。「名前で呼んでいいですか?」と訊かれた。少し私を恋人にしたいという欲が垣間見せた気がした。あまり呼ばれることが少なく呼ばれ慣れなくて嫌だった。どうしてそう呼びたいか訊いてみたら「親密になりたいから」だそうだ。名前を呼んだだけで親しくなれるのかと疑問に思ってしまった。普通なら苗字より名前の方がいいと思えるとは思うのだが、私はそう思えなかった。いやだと言ったからかさらに空気は重くなった。

「氏子さんの理想の関係ってなんですか?」
なんだろう。互いが対等にいられる関係かなぁ。別に名前は渾名でいいし、別にしょっちゅう会わなくてもいいし、電話も何か聞きたいことか生存確認だけでいいし、ハグや手なんて繋がなくていい。互いが対等に主張できて理解し合える関係ならそれでいい。私やその相手がいなくても大丈夫だと思えるような関係。束縛だけは御免だ。でも、今話している相手との理想とは違った。名前で呼びたいし、会いたいし、電話なら毎日したいし、ハグや手を繋ぎたいし、なんなら染まりたいとも言っていたし、甘えたいし甘えられたいし、なんなら私を独り占めしたいとも言っていたし、お互いに支え合える関係がいいらしい。まぁ、それが普通なんだろうけど、私はそうは思えなかった。価値観のすれ違いが多いのか相手が「もっと自分をコントロールしなきゃ」とか「頑張るから」とか言い始めて、そういう関係になると恋人には慣れんよなぁと思いながら聞いていた。あぁ、相手に気を遣わせているんだと思いながら聞いてた。

その人とは1度だけ会ったことがあった。一緒にご飯を食べようとのことだったが、会うのが7時くらいなってしまい、このご時世的に空いている店はあまりなくドライブという形になった。私がよく白湯を飲むと言っていたからかわざわざ作ってくれて驚いた。え、コップないよ?どうやって飲むの?と内心思った。以前にも口付けで飲んだことがあってから男性は口付けを好むのかと思ってしまったくらいの衝撃だった。それにわざわざそこまでしてくれなくてもなと思ってしまった。その時も私の調子が乗らなくて無言の時間が続き、相手が探り探りしなから色々話した。「夜じゃないと調子乗らないですもんね」とか「あまり人混みが好きじゃないんですね」とか言って謎の山奥にある公園をブラブラ歩いて少し座って、無言の時間が長く続き痺れを切らして次の予定を立てようとしてきたが、私にはもう次はなく、結局また今度決めようということになり車に戻った。いちいちドアまで開けてくれて姫扱いしてくれて、やっぱりそこまでせんでもええのになぁという感情が勝ってしまった。

その後に「氏子さんが考えるようになったきっかけはなんですか?」と訊かれ、普通に答えその後に珍しく彼から自分の話をしてきた。聞いて欲しかったんだろう。とても重かった。それに耐えられず涙が溢れてしまったのだが、彼は琴線に触れたと勘違いしていてそれに釣られて彼も泣いていた。いい感じのムードっぽいが実は違ったと言った残念な現象を味わってしまった。ついでに手も握らされた。自分、何してるんだろうとすごく冷めた感情が湧き上がった。あぁ、彼は過去の自分を受け入れてくれたと思っているけど、本当は違うのになぁと思っていたら「手を握って」という要求もされて素直に自分のしたいことがいえる彼が羨ましくもなった。

その後に彼は物足りないと感じたのか帰ったら電話もしていいかと訊いてきた。会ってほとんど喋っていない状況だし、そんな話をして浸っているのならそうなっても仕方ないよなぁと思い朝まで電話した。やはり私は夜行性だし、人と会うのは苦手だとも思った瞬間ではあったが、相手が満足しているならまぁいいかと思った。我ながらとても冷めている。彼に「氏子さんら歳下けど歳上みたいな感じ」と言われて歳上な感じで少し荒っぽくしたら彼の何かを目覚めさせてしまったらしい。

今回もそういったことをされたいと要求してきた。さらには甘えたいとも言ってきた。私は求められると反対のことをしてしまう。そういう癖なのか?私も私で戸惑ったし、前と全然違う雰囲気で彼も彼で戸惑っていた。挙句の果てには、価値観のズレで不安がられて収拾がつかない状況にまで陥ってしまい後味悪いまま電話を切った。恋愛特有のあの不安感にはなかなか慣れない。

こういった寂しがり屋な男性を今まで見てきて、自分の思っていた男性像と違って戸惑い、段々自分の思う感情がおかしいのではないのかと思うようにもなった。もっと男性は強い生き物だと思っていた。こんなにも弱い姿を平気で見せる人たちを見て逆に羨ましいと思った。私は人に頼ることが苦手だ。相手によっては頼っている自分が嫌になってしまうし、弱いところは隠したいと思ってしまうし、そんなに甘えられたらこっちがしっかりしないきゃと思ってしまうし、そんな人に甘えたくない。色んな感情が綯い交ぜになって気がおかしくなりそうだ。本当に好きな人になら知りたい、聞きたい、話したい、触れたい、会いたい、となるとは思う。となると相手のことはそこまでいっていないのだろう。いい人止まりってやつ?すごくいい人。私のことをちゃんと考えてくれている。けど私は相手のことを恋人にしたいとは思わない。学生の時期に1度は恋愛を経験したいけど、この人でいいの?と思ってしまう自分がいる。あぁ、私にも夢中になれる人が欲しい。私には恋愛ができるのだろうか?

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