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はじめての長崎、はじめての日本

私は普段、石川県金沢市に住んでいます。金沢は北陸新幹線の開業とともに観光ブーム。若い世代から年配の方までいろんな方が旅先として選び、年間で1000万人を超える方がやってきます。聞くと、食や歴史、伝統やアートなど様々な魅力があるとか。 そんな金沢に生まれ住んで30年。普段とは違う人と景色を求め、“はじめて”長崎へ行き、およそ1ヶ月滞在したときのお話です。

長崎を遊行する|この記事を書いた人:土居佑治さん

私は現在、長崎友輪家の発起人である大瀬良さんが立ち上げた会社「遊行」にて、ディレクター業務などに携わっています。

遊行は元々仏教用語。僧侶 空海や空也、一遍などに由来する言葉で、簡単に言うと旅して修行をすること。もう少し言えば、旅の先々で人々の暮らしを知り、智徳を得ていく一方で、自分の持っている都や大陸からの知恵を授けたりすることで、お互いに豊かになっていくことを意味しています。

旅では自分の暮らす地域の外と交わり、「違い」を体感し、地域の欠点や魅力を再認識する。旅をすることで、いろんな人と出会い、「差」を見つめることで、自分の気持ちや能力に気づいていく。

遊行は、そんな地域の外と中を、人と人とを紡いでいくようなインフラとなるべく、各地域の魅力づくりに関わったり、発信をしたりしています。

そんな中で、今回訪れることになったのは長崎。
長崎というと、出島や長崎ちゃんぽんなどが有名で、雲仙普賢岳や対馬、五島など、自然の豊かな地域でもあります。日本の中でも最も西にある県の1つで、大陸に近く、それこそ、空海や最澄が中国(唐)へ行く際の航路の拠点といったことなど、日本の歴史の中で度々登場する地域です。

長崎港にて photo by Naohiro Sawada

金沢からは、県内の小松空港まで行き、福岡へ。福岡からは、電車やバスを使って長崎まで向かうことができる。

- 18:05 - 18:45 金沢駅 - 小松空港(高速バス)
- 19:35 - 21:15 小松空港 - 福岡空港(博多で 1泊)
- 11:16 - 13:49 博多駅 - 長崎駅(高速バス)

異国の中の異国。

いざ、長崎(長崎市)へ訪れて一番最初に驚いたのは、暖かさ。1月は真冬。同じ日本海側にあるはずなのに、これほどまでに気温が違うのか!!と。

カフェの扉は全開、陽の光を感じる昼、西陽が差し込む夕暮れの店内。雪雲に覆われる北陸に住む自分にとっては、なんだかそれだけで気分があがる。本当は天気が良かっただけかもしれないけど、天候の違いがここまで不思議に感じたことは、今までなかった。

思いがけず撮った写真に写るPM2.5

実は暖かさよりも真っ先に感じていったことがあって。それは、バスを降りると広がっていた“霞んだ”景色。霞に揺れるビルに、薄靄の中の路面電車。最初は気づかずに、スモッグに差し込む光に幻想を感じていた。

薄靄の光と路電の駅

長崎市の駅前は開発が進み、オシャレな街に変わりつつある。一方、市街には昭和モダンなビルや商店街が並んでいる。街中を走る路面電車の鉄の音、港に入ってくる船の汽笛、山から吹き下ろす風の音にふれる。

金沢では、江戸〜戦後までの建築が大切にされ、昭和コンクリートな建築や文化はほとんどなくなってしまっている。しかし長崎では、街並みせいか、どこか映画やアニメで見た、昭和の世界に入り込んだ気分。自分が実際に暮らしている日本と、イメージの中にある日本のギャップに気づく。

電柱を見ると日本に来た気分になる!という海外の人は多いけれど、自分も今はじめて日本に来たのかもしれない。

そんな私にとっての異国長崎には、その中にも”異国“たちが溢れている。長崎市街を歩くと、西洋文化を見せる大浦天主堂にグラバー園、キリスト系の学園の姿も美しい。豚まんの匂いを漂わせる新地中華街に、中国伝統の変面ショーが見られる孔子廟。昭和スナックな思案橋を歩けば、どこからか豚骨ラーメンの匂いまで漂ってくる。え、今までどこにいたんだっけ?…本当にカオス。

どこか心地よい感じ。

本当に不思議なのは、まだ1日ほどしか経ってないのに、長崎市民の生活の中に溶け込んでいく自分の感覚。どうしてだろうと馴染んでいく身体に問うも、感覚がとしか言えない。

photo by Sawada Naohiro
photo by Sawada Naohiro
photo by Mera Hiroyuki

街の対岸には、明治の近代化を支えた三菱重工の造船用の巨大なクレーンがみえ、ちょっと北へ向かうと、原爆の歴史を伝える資料館や平和公園、爆心地公園(え、名前やばくない?)がある。

江戸のSAMURAI!! Ninja!! Zen!! Judo! みたいな文化は見当たらなかったけれど、江戸時代から現在に至るまでの道のりが途切れることなく、全てがあるように感じた。

これって結構すごいこと。

vintageやantiqueのように、長い年月を過ごしたものは価値が高く、新商品!New!の広告のような、最新のものにも需要はあるけど、その“間”にあるものは捨てられてしまうから。

長崎のさまざまなものが混ざるちゃんぽん文化。
実は、今、さまざまなものがあるという意味だけでなく、過去の多様な時代を残し続けていることを証明していて、これがどの世代の人にとっても安心できる居場所になっている。

これは食べておきたい長崎メシ

長崎市内にはちゃんぽん文化がもたらした食がたくさんある。代表的なのは、ちゃんぽん麺とトルコライス。ちゃんぽん麺には、太麺と細麺があることは知ってました?しかも、ウスターソース(ちゃんぽんと言ったら「金蝶ソース」らしい)をかけて味変するとか。(肉まんにはポン酢をつけて味変もするらしい。。。)まっっっったく未知の文化。

細麺はどこも似たような感じらしいけど、太麺はお店によって全然違うらしい。けど、今回の旅で何度食べても違いはあまりわからなかった……。あと、細麺の方が好きだった。笑  身近なもの、馴染みのあるものほど、知らず知らずのうちに感覚が研ぎ澄ませれるけど、長崎の人にとってはちゃんぽん麺がそれなんだと思った。

トルコライスは、大人のお子様ランチプレート。ニッキー・アースティンに行ってみて。メニュー見たらわかる。あぁ、そういうことね。と。めっちゃ大変。でも、楽しい。絶対行ってみて。絶対。

そんな中で、イチオシしたいのは、一口餃子。行ったのは、雲龍亭というお店。サクッと食べて、サクッと飲んで。でも、めちゃくちゃ美味しい。気づいたらなくなっている。多分好きな人は多い。正直、お昼から食べてもいいかもしれない。って思うほど。煙でモクモクになっちゃうけれど。

ぜひ2軒目に行ってみて。

足りないものは・・・

長崎では、ちゃんぽん文化のせいなのか、洗練?されたものを見つけるのが大変。こだわりは感じるけれど、研ぎ澄ましていく感じがどこか足りない。

味変しなくても食べ続けられるご飯はどこ?温度 0.1℃を気にする、デバイスオタクなロースタリーや、ワインショップは?って…。

「結局なんでも素材だよね」というけれど、素材が良ければごまかしも効いちゃう。これは、いろんな素材に溢れている長崎だからこその盲点。

掛け合わせるのは得意だけど、そこからの足し引きも見てみたい。

美味しい魚は、北陸にも北海道にもある。
中華街や西洋館は、神戸にも横浜にもある。
江戸時代からの歴史や伝統なんて日本中にある。

ただの紙とただのペン(素材)でどこまで描ける(磨ける)のか。 少ない線(素材)でどこまで描ける(洗練できる)のか。一つ一つが世界で一つの作品のように。

もしかしたら、単にどこかに見逃しているだけかもしれない。
もしかしたら、自分がズレているだけかもしれない。
でも、長崎の魅力はこんなもんじゃない。まだまだ眠っている気がする。と感じている。

次はそれをたくさん見つけに行きたい。

photographer

Hiroyuki Mera
IG:https://instagram.com/merahiroyuki/
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Naohiro Sawada
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