三ヶ島さんのインタビューを聞いて最高位戦競技規程に感じたこと

4/6(土)に行われた最高位戦A2リーグ対局終了後のインタビューにおける三ヶ島幸助プロの発言について考えたことをまとめる。

アーカイブは視聴可能だが、無料の公開媒体に記録されることを望まない可能性もあるため文字起こしは行わない。内容を要約すると以下のようなものだった。

ここには発言要約を載せていましたが、最高位戦Youtubeチャンネルのアーカイブにおいて当該箇所の映像がカットされた状態でアップロードされていたことを確認致しました。発言が他人に確認できる状態で記録されることが本意ではないことも考えられるため要約についても削除いたします。

もし矛盾や語弊があればそれは私の要約が稚拙ということなので申し訳ない。三ヶ島さんは努めて理性的に話そうとしていたように思うが、それでも語気がやや荒くなったり、強い表現が混じる場面もあった。

ここで話に出た競技規程とは次のものを指す。

注意
該当の半荘で 2 回の注意を受けることにより罰則を受ける者のトータルポイントから 5P の減算を行う。以降注 意 1 回ごとにさらに 5P ずつ減算を行う。半荘の終了により注意の回数は 0 に戻る。

罰則の対象となる行為
5.注意
(1) 1~2 枚の見せ牌
(2) 局中の中座の要求
(3) 副露の指示牌間違い
(4) 立会人判断で同じ内容での指導が繰り返された場合
(5) その他立会人が適当と判断した場合 

最高位戦日本プロ麻雀協会 競技規定 一部抜粋



三ヶ島さんのインタビューについて2つの観点に分解して考え、意見を述べる。

1.規程の妥当性に関して

まず、競技規程のことが頭にあり昨年までは拾えていたかもしれない要素を見逃してしまった、という部分について。
今期の最高位戦の放送で「わざとじゃないかもしれないけど、本来見えないはずの牌が見えてしまったことに対しての罰則はあるべきだよね」という考えの元、競技上の公平性の担保を目的としてこのルールを導入したというような話を何度か聞いた。

まず、そもそもこのルールで公平性が担保できるのか?
できる、と思う。そもそも見せ牌が状況によっては公平性を大きく害する行為であるので、罰則を設けることでそれを抑止する効果が見込めるからだ。
次に、このルールによって思考の質が落ちるのはなぜか?
思考以外の部分に脳のリソースを割くから。確実にゆっくりとした所作と十分な思考時間を遣えば可能かもしれないが、三ヶ島さんは以前から自分の反射神経の衰えなどを加味し、対局時間短縮のため所作、長考について気を遣っていた。この点については「2.放送コンテンツとして」で詳しく述べる。
では、公平性と質のバランスをとる方法はないのか。
ある、と思う。現行の規程は理事会が矛盾の無いよう議論を重ねて決めたものであろう。しかし、「同一『半荘』で『2』回目以降」「『5』ptの減算」という規程の『』の数字、単位に関しては感覚によるところもあるのではないか。個人的な感覚としてこの数字は、故意犯に対してなら緩いし、過失犯に対しては厳しいと感じている。
ではどちらに寄せるか。園田さんが下の動画で、Mリーグは現行のルールのままじゃやりたい放題されると別競技になってしまう、という旨の発言をしている。しかし、園田さんが自身のポイント最大化のために動画内で話すような行動をしたのを見た覚えはない。それはポイント、並びに賞金の期待値だけを考えれば得だが、評判や立場を含めた人生の期待値としては損だからだと思う。この「ポイント以外の期待値」の存在が故意犯を排除しうる、という前提に立てば、競技規程は基本は過失犯を想定するべきであり、(故意犯に対する罰則は別途設けるとして、)それならば現行の規程は厳しいので、少し緩和しても良いのでは、というのが私の意見だ。
無意味なのは承知だが現状を否定するなら代案を示す方が良いと思うので以下に書きます。

個人的な案:同一の局で2回、半荘で3回の注意で3ptの減算。
局で区切るのは東発で注意を受けたら半荘中ずっと減点リーチなのは酷という観点から。本当は「壁牌を崩し見せ牌をしたものは開示された牌を使用しての和了を禁止する。」を入れたいが、これを書いてる途中で「それで親の連荘率が上がるのは公平なの?」という心の声が聞こえてきたのでやめます。ルール作るのむずいです。


2.放送コンテンツとして

次に、最高位戦の対局時間が長すぎるという点について述べる。
最高位戦の対局は長いとよく言われているが、私は全くそうは思わない。
理由としては「通しで見ないから」というのが大きい。放送全体が8時間あったとして、画面を見ているのは長くても2~3時間だろう。私の中ではそもそも通しで見るコンテンツとしての長い長くない議論の対象にはなっていない。いくら長かろうと空き時間にちょいちょい見るだけなら問題ないし、盛り上がっているところがあれば追っかけ再生で確認すればいい。
じゃあなるべく早い進行を心がける三ヶ島さんの心がけは無意味なのか、といえばそうではない。隙間時間に放送を覗いたら長考で1~2分局面が全く動かなければ視聴者は離れていってしまうだろう。でも「進行のスムーズさ」と「競技の質」のバランスの取り方は規程には書いていないし、個人の選択に任されている。視聴者のことを考えている人ほど損してしまうのが現状だ。この問題は時間だけではない。三ヶ島さんはインタビューで「手が震えた際にはしばらく理牌をせずに打っていた」と語っている。理牌は規程にはないが、少なくとも放送においては視聴者のためにほぼ全員が行っている。理牌をすればするほど見せ牌、注意、減点のリスクが増加するのであれば、今後理牌をしない選手が出てきてもおかしくない。
であれば視聴者が何を求めているかを正確に把握し、見やすい放送、局の遅滞なき進行を確保するための規程も競技の公平性を確保する規程と同様に設定し、選手の裁量による有利不利の余地を減らすべきだと思う。

まとめ

競技性を担保したいという目的で規程を作ったのは理解出来るし、それを突き詰める団体だからこそ支持する人もいると思う。私もその一人だ。
ただ、規程の遵守によって競技の質が低下してもよいのか、それとも質が低下してしまう選手はレベルが低いとしていくのか、という点に疑問を感じている。もちろん全ての規程が脳のリソースを割き、思考の質を下げうるものではあるので、規程に則った思考の質がその選手の実力だというのは納得している。ただ、じゃあそれに従えないのであれば・・・とならないよう妥協点を突き詰めて欲しいし、それが出来る団体だと思いたい。

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