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【web連載#2-3】NG騎士ラムネ&40 FX


■公式外伝「NG騎士ラムネ&40 FX」
・原作・監修:葦プロダクション
・企画・制作:Frontier Works
・本編執筆:十一屋 翠

■第2話「パキャッ! モノクロエッグは破滅のタマゴ!?」(その3)

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「こ、これは一体!?」


パフパフ宮殿跡地の床が突然崩れ始めた事で、シンゲーンとケンシーンは何かしらの緊急事態が起きたと察した。


「いかん! ラムネス殿達が危ない!」


 すぐにラムネス達を助けに行くべきだと察したシンゲーン達だったが、さいわいにも地下室へ続く階段からラムネス達が姿を現した事で胸をなでおろす。


「おお、無事であったか皆様方」


「な、なんとかね……」


 無事地上に避難出来た安堵でラムネス達は地面にへたり込むが、しかし状況は彼等をゆっくりさせてはくれなかった。


「ぬ? アレは……!?」


 崩壊した床からせり出すように、巨大な二つの影が姿を現したのだ。

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「巨大メカ!? まさかモンスカー……?」


 地下での出来事を知らないシンゲーン達は、2体のロボットが妖神ゴブーリキの先兵であるモンスカーなのではと錯覚する。


「ふん、こ奴らをモンスカーなどと一緒にされては困るな」


 しかし心外だという否定の声が、黒いロボットの肩から聞こえてくる。


「その声は、モンエナ教授!?」


 そう、黒いロボットの肩に乗っていたのは、地下の崩落に巻き込まれたと思われたモンエナ教授だった。


「教授、無事だったんですね!」


「ああ、無事だともペプシブ君」


 無事を喜ぶペプシブに鷹揚な態度で接するモンエナ教授。


「それよりも危ないじゃないかモンエナ教授! 地下でそんな大きなロボットを召喚したらオレ達が生き埋めになるところだったよ!」


 ラムネスが怒るのも無理はない。
 この2体のロボットの大きさは軽く20メートルを超えており、そんなロボットが突然現れたなら、彼等が先ほどまでいた地下室が崩壊するのも当然であった。


「おや、すまないねラムネス君。本当ならもっとうまく君達を生き埋めにしたかったんだが」


「ええっ!?」


 目つきこそ悪いものの、振る舞いは好々爺然としたモンエナ教授から、自分達を生き埋めにするつもりだったと言われてミルク達は驚きの声をあげる。


「生き埋めって……ペプシブちゃんを巻き込むところだったんだぞ!? お前は一体何を考えてるんだ!!」


 自分達を生き埋めにしようとしていた事は許せない。だがそれ以上にラムネスが許せなかったのは、彼にとって家族同然であるはずのペプシブを巻き込んだ事だ。


「私が何を考えてか……か。ふふふ、知らないというのは忌々しい事だな。だが良いだろう。冥土の土産に教えてやろう。この私の正体をな!」


 モンエナ教授はラムネス達に良く見えるように前髪をかき分けて叫ぶ。


「これを見よ!」


「ああっ! それは!?」


 モンエナ教授の前髪に隠されていた額、そこには見覚えのあるマークが刻まれていたのである。


「ドン・ハルマゲ印!?」


かつてラムネス達と戦ったゴブーリキの部下達の中には、このハルマゲ印を額に刻んでいた者達がいた。
そしてそれと同じものが、モンエナ教授の額に刻まれていたのだ。


「お前、ゴブーリキの残党だったのか!」


「否! 私はゴブーリキ様の部下ではない!」


だがモンエナ教授はダ・サイダーの言葉を強く否定する。
そして誇らしげに彼は告げた。


「私はマウンテンデュー姉妹様直属の部下よ!」


「ゴールドちゃんと!」


「シルバーちゃんの部下!?」


 モンエナ教授の衝撃的な宣言を受けたラムネスとダ・サイダーの脳裏に、マウンテンデュー姉妹の悩ましい姿が思い出される。

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「「あ、あんな美人が上司だなんてうらやましい!!」」


「「あほかぁーい!」」


「「ぐはぁッ!!」」


思わず本音が漏れたラムネス達にすかさずミルク達がツッコミを入れる。
だがそれどころではない人物もいた。


「そんな! 教授があのゴブーリキの手下!?」


衝撃の事実を知って、ペプシブが真っ青な顔になる。


「はははははっ、秘密にしていてすまなかったねペプシブ君。だがそれもこのシロボロスとクロボロスを目覚めさせる為だったのだよ」


「シロボロスとクロボロス?」


呆然した顔で言葉を返すペプシブにモンエナ教授は満足気な顔になる。それは忘我の淵に遭ってなお知識欲を失わない生徒の姿に満足したからなのか、はたまた自分の成果を人に自慢できる喜びからなのか。


「その通り。この2体のロボットこそ、古代文明によって作り出された超兵器。その名もシロボロスとクロボロスだ!」


 不気味な威圧感を持つ巨大なロボットの姿にミルク達は思わず後ずさる。


「じゃあもしかして、モンエナ教授がベンドラーマシンから本当に出したかったのは……」


 ペプシブが信じたくないものを聞くように震えた声を絞り出す。


「くっくっくっ、そうだ、私が手に入れたかったのは、ワクワク時空の資料などではない。この2体の古代兵器だったのだよ!」


「そんなぁー! 次に出るのはエッチなグラビアじゃなかったんですかーっ!?」


「「「「「「「「だぁーっ!?」」」」」」」」


 あまりにも場違いなラムネスの発言に、思わずその場に居た全員がずっこけてしまう。


「ラムネスゥーっ! アンタそれが目当てだったのねぇー!」


「し、しまったぁー! 許してミルクさぁーん!」


「ゆるさぁーん!」


 怒ったミルクに首を絞められ、ラムネスの顔色がどんどん蒼くなっていく。


「コラァー!私を無視するなぁーっ!」


「「あっ、ゴメンなさい」」


 モンエナに叱られて、思わず謝ってしまうラムネス達。


「まったく、これだから勇者というやつは!」


「もー、ラムネスのせいで叱られちゃったじゃない」


 モンエナ教授に叱られた事でミルクがラムネスの脇を肘で突く。


「それを言ったらミルク達だって出てきた本に夢中だったじゃないかぁー」


 だがラムネスも負けじとミルクに突き返す。


「えーなんのことー?」


「だから人の話を聞けぇー!」


 ゴホンと咳ばらいをすると、モンエナ教授は高らかに笑い声をあげながら宣言する。


「勇者ラムネス、そして裏切者ダ・サイダー。貴様等はこの私が直々に討ち取ってくれよう!」


「なにぉーっ!」


「へっ、やれるもんならやってみやがれ!」


「ミルク、ペプシブちゃんを連れて下がっててくれ!」


「分かったわ!」


 すぐにミルク達はアルミホエール号の方へと駆け出してゆく。


「でも教授が!」


「いいからここはダ・サイダー達にまかせな! あの爺さんを叱るのは戦いが終わったあとだよ!」


 なおも残ろうとするペプシブをレスカが強引に引っぱって下がってゆく。


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「よーしタマQ、キングスカッシャーだ!」


「分かったミャ!」


 ラムネスがポケットから黄金のメタルコインを取り出し、タマQの頭に開いたスロットにコインを入れると「ンミャッ」という声と共に手のひら大の卵が吐き出される。


「よし、オレ様達も行くぜメタコ!」


「任せるじゃんダーリン!」


 ダ・サイダーは蛇の意匠が施された横笛を取り出すと意外や意外、器用に笛を吹き鳴らした。
 その音楽に合わせヘビメタコが踊るように体を揺らしながら歌いだす。


「あ、ヘビヘビ♪、メタメタ♪、コッ。オェッ」


 そしてタマQと同じように、手のひら大の卵を口から吐き出す。


 ラムネスとダ・サイダーは互いの相棒が吐き出した卵を掴むと、綺麗なフォームでそれを放り投げた。


「キングスカッシャアァァァァァァッ!!」


 ラムネスの雄叫びと共に、天から雷が落ちる。
そして猛烈な勢いの竜巻が吹き荒れ、その中から人型のシルエットと力強い眼差しが輝いた瞬間、竜巻が弾け飛び中から黄金の巨人が姿を現した。
 これぞ妖神ゴブーリキを討伐した無敵の守護騎士キングスカッシャー!


「クィーン! サイダッ! ロォーンッッッ!!」


 ダ・サイダーの雄叫びに呼応するように雷を纏った暗雲が空に立ち込めると、雲の中から漆黒の巨人が降り立つ。
 これこそ妖神ゴブーリキを打倒した無双の守護騎士クィーンサイダロン!


「「とぅっ!!」」


 ラムネス達の体がエネルギー体に包まれ、金と黒の巨人の中へと吸い込まれていく。
 そして二人の体が巨人の内部に設置されたコクピットに現出する。


『シュパーンッ!!』


『ジュワッ!!』


 パートナーたる勇者と一つになったキングスカッシャーとクィーンサイダロンが雄々しい咆哮を上げる。


「よーし、行くぞキングスカッシャー!」


「ぶちかましてやるぜクィーンサイダロン!」


 ラムネスがコクピット内に設置されたゲーム機のコントローラーに酷似した操縦装置を操作すると、キングスカッシャーの膝から射出された黄金のブロックが展開して剣に変形する。
 同時にクィーンサイダロンもまた胸部から射出されたロッドが展開して長大なハルバードに姿を変えた。
武器を構えた守護騎士達が勢いよく敵へ向かって駆け出す。

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「ふははははっ! 来るがいい勇者共!」


 モンエナ教授の命令を受けたシロボロスが右腕の蛇頭を構え、クロボロスが左腕の銅鏡型の盾を構える。


「とぉー!」


「おりゃー!」


 キングスカッシャーの振り下ろした剣をシロボロスの右腕の蛇頭が噛み付いて受け止め、クィーンサイダロンの振りかぶったハルバードをクロボロスが盾でいなしながら回避する。
 すぐにラムネスとダ・サイダーは体勢を戻そうとするが、キングスカッシャーの剣はシロボロスの蛇頭腕に噛み付かれたまま引き戻すことが出来ない。
更にクロボロスの盾が紐状に解け、鞭のようにしなってクィーンサイダロンのハルバードに巻き付く。


「くっ、この!」


「うぉぉ!?」


 シロボロスも盾を解き鞭へと変形させると、クロボロスの蛇頭と共に襲い掛かってくる。
 倍以上の体格差のある相手の攻撃を受ければ、妖神を倒した守護騎士といえど無事では済まない。


「させぬ!」


「たぁーっ!!」


 それを阻止したのは破壊戦士シンゲーンとケンシーンだ。

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 2体の戦士は自らの得物である太刀と槍でシロボロス達の攻撃を上手く受け流したのである。


「大丈夫かラムネス殿、ダ・サイダー殿」


「助かったよシンゲーン、ケンシーン」


「ふん、破壊戦士も加わるか。だが無駄な事よ」


 シンゲーンとケンシーンが加わった事で4対2となり、数の上ではモンエナ教授の方が不利となる。だが、しかし彼に不安気な様子は見られなかった。


「モンエナ教授! こんなことをして何になる!」


「そうだ! もうゴブーリキは居ない! いまさら戦っても無意味だぞ!」


 シンゲーン達の説得を受けるも、モンエナ教授は戦いをやめようとはしない。


「無意味ではない。そう意味はあるとも」


「何の意味があるんだモンエナ教授!」


「お前達勇者を倒し、この世界をマウンテンデュー姉妹様に捧げる為にな!」


「ええ!? ゴールドちゃん達にこのドキドキスペースを!?」


「支配させる!?」


 まさかの野望に思わず驚きの声をあげるラムネスとダ・サイダーの二人。


「確かにお前達によってゴブーリキ様は倒された! だがゴブーリキ様の巫女であらせられるマウンテンデュー姉妹様は生きていらっしゃる! 今は行方不明になっているが、必ずや私がお二人を見つけ出してみせよう!」


 恍惚とした様子で語るモンエナ教授。


「さぁ、無駄話はここまでだ。我が野望の為に死ぬがいい勇者達よ! チェンジ・シロボロスネーク! クロボロスネーク!!」


 モンエナ教授の叫びに呼応し、シロボロスとクロボロスの蛇頭と鞭が分離する。
 そして背中のバインダーが胴体を包みこみ、鞭が下部に連結して尻尾に、上部に蛇頭が連結して一匹の巨大な蛇へと変形を完了した。


「あ、あれは!?」


「シロボロスとクロボロスが変形しやがった!?」


 なんとシロボロスとクロボロスは、巨大な大蛇の姿に変形したのだ。
 その長さたるや、キングスカッシャー達の実に4倍近いサイズである。
 一切の感情を感じさせない無機質なバイザー状の眼差しが、鎌首をもたげてラムネス達を見降ろす。


「なんという迫力!」


「お二人共油断されるな!」


 シンゲーンとケンシーンが警戒をあらわにラムネス達に警告をする。
 それと同時に大蛇となったシロボロスとクロボロスが飛び掛かって来た。


「うわぁ!」


「おおおっ!?」


 先ほどまでの腕だけによる攻撃ではなく、巨体全てを武器とした飛び込みを受ける止める事など不可能。
 ラムネス達に出来る事は回避だけだった。


「くっ、これじゃあ近づけない!」


「ラムネス! ブルマン、キリマンを呼ぶミャア!」


「そうか! ブレンドンに合体すればアイツを捕まえる事が出来る!」


 キリマンとブルマンは双子の守護騎士だ。
 1体1体は小柄だが、合体する事で強大な力を持ったブレンドンへと変身するのである。
 そのブレンドンの力なら、大蛇となったシロボロスとクロボロスの動きを封じる事も可能だとラムネスは理解した。


「よーしブルマン、キリマン! お前達の力を……ってあれ!?」


 ブルマンとキリマンを召喚しようとポケットをまさぐったラムネスだったが、何故かポケットの中には彼等を召喚する為のメタルコインがない。


「あ、あれ? コインが……って、あーっ!」


 そこに至ってようやくラムネスは自分が仲間達のメタルコインをベンドラーマシンに入れてしまった事を思い出す。



(その4へつづく!) ※次回は本日7/7(水)夕方~夜の更新です

(C)葦プロダクション