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The Flying Burrito Brothers / The Gilded Palace of Sin (1969)

カントリー・ロックの名盤「ロデオの恋人」1作のみでザ・バーズを脱退した”カントリー・ロックの申し子”グラム・パーソンズと、彼をザ・バーズに引き入れるとともに同時期に脱退したクリス・ヒルマンが組んで結成されたザ・フライング・ブリトー・ブラザーズのファースト・アルバムは、カントリー/ブルーグラスなどのアメリカのルーツ音楽をロックと融合させ、2人が言うところの「アメリカン・コズミック・ミュージック」を目指した、カントリー・ロックの完成形にして、後のオルタナ・カントリーやアメリカーナの源流にもなった意義深いレコード。

エヴァリー・ブラザーズを意識したであろう2人の掛け合いによって歌い継がれる曲も多い本作は全体的にカントリー色が強いものの、アレサ・フランクリンの持ち歌のカヴァー③ではソウル風味を感じさせ、グラムとクリス・エスリッジ(ベース)共作の⑧ではロック・バラードの艶や憂いが溜め息が漏れるほどエモーショナルで美しく、最後のゴスペルに根差した南部風のロック・サウンドまで、随所にアメリカン・ロックのダイナミックな力強さやおおらかさ、スケール感が宿っている。

ペダル・スティール・ギターの名手”スニーキー”・ピートら脇を固めるメンバーも素晴らしい働きをみせている。




カントリー路線の音楽は昔からたびたび聴いてきたわけだが、いつだったかグラム・パーソンズという人を知ってからは、彼の音楽と人生そのものに惹かれていった。
富豪の家庭に生まれるも幼くして両親を亡くし、遺された財産で自由に好きな音楽をやり、バーズやローリング・ストーンズ(特にキース・リチャーズ)といった当時のトップ・バンドに一時的に音楽性を変化させるほどの影響を与え、しかしどんなときも流行りや時代性には目もくれず、自分のやりたい音楽(=アメリカン・コズミック・ミュージックの確立)への飽くなき探究を続け、最期はヨシュア・トゥリー近くのモーテルで一人、オーバードーズにより26歳の若さでひっそりとこの世を去るという悲劇的な結末まで、劇的で奔放で哀しくて美しい生き様と音楽を遺した。

そんなグラムが待望の新バンドFBBで臨んだファースト・アルバムは、随所に彼の哀愁を帯びたヴォーカルが聴かれるが、全体的には希望に満ちていて、カントリー・ロックの象徴的なレコードとして素直に楽しめる。


グラム・パーソンズについては、FBBのセカンド・アルバムやソロ作品を取り上げるときにまた書こう。

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