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Pink Floyd / A Saucerful of Secrets (1968)

ピンク・フロイド創設期の中心人物にしてカリスマ的存在だったシド・バレットの脱退と、新たなギタリストのデヴィッド・ギルモアの加入というバンドの変革期に作られたセカンド・アルバム。

新体制において中心となったロジャー・ウォーターズによる不穏な音の中に物語性が仕込まれた3曲と、リチャード・ライトによる穏やかな美しさが儚く漂う2曲、新メンバーのギルモアを主体に”新生”ピンク・フロイド4人が構築した12分にも及ぶ摩訶不思議な1曲、そしてバレットの置き土産となったかなりシニカルな1曲の合計7曲で構成されている。

その後のフロイドの原点となるプログレッシヴでシネマティックなサウンド、レディオヘッドの源流ともいえそうな”非ロック的”で実験的な雰囲気、同時期のビートルズとも共鳴するサイケな音像など、バンドの進化と多様性を見せつつ、最後はバレットの”フェアウェル・ソング”的なサーカス風で牧歌的なフィナーレで哀しげに締める。

全体で40分に満たない、彼らにしてはコンパクトなアルバムだが、流れも良くヴァリエーションも豊かで、地味ながら充実した作品。




ファースト・アルバムはシド・バレットという浮世離れして屹立した才能が大きくフィーチャーされたサイケデリック・ロックの名盤だったが、脱退後のピンク・フロイドとはスタイルが全然違う。その意味では本作が「世界一巨大なバンド」としてのピンク・フロイドとしての第一歩といっても過言ではない。
シド・バレットが最後の曲で、不穏で儚い雰囲気の中で消えていくのも凄く魅力的。


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