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Belle and Sebastian / If you're feeling sinister (1996)

ベル・アンド・セバスチャンの2作目(当時の世間的にはデビュー作扱い)は、スチュワート・マードックの紡ぐ珠玉のメロディとエヴァーグリーンな響き、屈折したストーリーテリングに漂う文学性、今にも壊れそうな繊細なイノセンスを鮮烈に世に広めた代表作で、「死ぬまでに聴くべき1001枚のアルバム」やローリング・ストーン誌の「オールタイム・トップ500アルバム」にも選出されるなど高い評価を得ている。

病で療養し地方都市に暮らす”時が止まった”青年が、そんな自分に構わず進み続ける社会とのズレや違和感を短編映画のような物語に託し、それらが当時のブリットポップ狂騒に辟易し、”自分のための歌”、”こちら側の歌”を渇望していた多くの孤独な聴き手の琴線に触れた。

本作は前作のフラジャイルな蒼さの上にバンド編成での音作りが彩りを加え、楽曲単位でも繰り返し聴けるような耐久性も備えつつ、ナイーヴで自己嫌悪しがちな僕たちへの儚くも優しいサウンドトラックとなっている。

スチュワートと同じように病に苦しんだ親友の日常の一瞬を切り取ったジャケットは、警告とノスタルジーの間をとったような赤に染められていて、実にスミス的で素晴らしい。




続いて”ベルセバ”の2作目を。1stは自主制作でほとんど出回っていないため、世に出た作品としては本作が最初。
やっぱり彼らの音楽は僕にとって、どこを取っても心にも体にもぴったりしっくりくる。波長やメンタリティが合うんだろうな。
こういう曲が書けたら、どんなにか良いだろうと、彼らの音楽を聴くといつも思う。
そして、ベルセバの音楽について書くとき、サウンド面の話などは皆無で、どうしても精神性の話になってしまう。それぐらい僕の心の浸透圧と一致した音楽なのだ。


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