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Pixies / Doolittle (1989)

ボストン出身ながら、イギリスの気鋭レーベル4ADと契約し、先に英国内で人気を集めたピクシーズ。
ラフで荒々しい狂気の音の中にポップネスを閉じ込めた鮮烈なデビュー・アルバムを手掛けたスティーヴ・アルビニに代わり、当時まだ無名だったギル・ノートンをプロデューサーに迎えたセカンド・アルバムは、ピクシーズの特徴を幅広く鋭く端的に明瞭に展開した結果、ロック史上でも屈指の(2作連続の)名盤となった。

ニルヴァーナやレディオヘッド、ウィーザーといった後続だけでなく、先達のボウイやU2、R.E.M.にも大いに刺激を与えた彼らのノイジーでユーモラスでデンジャラスでキャッチーな音が、尖っているわりに異様なほどポップなメロディが、15曲38分のコンパクトなレコードの中に凝縮している。

ブラック・フランシスの狂気じみたヴォーカルや硬質なギター・サウンド、卓越したソングライティング・センス、研ぎ澄まされた静と動のコントラストは、完成形に辿り着いたといえる。

80年代の最後に出現した、来たる90年代以降のギター・ロックの源泉となる幾つものヒントを散りばめた傑作。




ピクシーズではこれが一番好き。
CDの帯に書かれている「ポピュラリティとアヴァンギャルド性がバランスよく配合された」という表現のとおりの、オルタナティヴ・ロックとして実にちょうどいい、痒いところに手が届くような素晴らしいレコード。

シングル・カットだけを取っても、アートワークの題材となっている"Monkey Gone To Heaven"やオープニングの"Debaser"、大好きな"Here Comes Your Man"など、ピクシーズを代表する名曲揃いだし、15曲を通してポップでクールでふざけていて、尖ったセンスでアイディアに溢れるヴァラエティ豊かな楽曲がずらり。それでいながら”名盤尺”の38分弱。最高。
これ1枚だけでもしばらくは乗り切れそう。

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