BAYCの歴史+ApeCoinの戦略分析(後半)

NFTmeijinのナオトです。様々なNFTを分析することを趣味として生活しています。前半の記事ではBAYCの歴史をまとめました。

後半ではBAYCが先月公開されたApeCoinについて解説を行います。

ApeCoinとは

ApeCoinはBAYCの運営母体であるYuga Labsが立ち上げに関わったトークンです。
Whitepaperやディスカッションなどは公式サイトから見ることができます。
記事執筆時点で時価総額が$3B=3000億円となっており、リリースしてわずか数日でSolanaの10分の1程度の時価総額となっています。

本記事では、Whitepaperを読み解きながら注目すべき内容について解説をしていきます。

ApeCoin出現以前の問題点

まず解説に入る前にYuga LabsがなぜApeCoinを作る必要があったのかについって問題点を挙げておきます。

Yuga LabsではBAYCが大成功し、Traded Volumeだけで486k ETH=1458億円ものお金を動かすことに成功しました。BAYCのRoyalty feeは2.5%なので単純に考えて40億円弱ものお金を二次流通から獲得することができています。

しかし、BAYCはFloor priceが上昇するにつれてLiquidty(流動性)が低くなってしまうという問題を抱えていました。BAYCのような高額なNFTを買える人は限られているため、取引頻度が下がってしまい、二次流通から得られるお金が減ってしまうという問題です。

この問題を解決し、さらにホルダーにアクティビティを見せる手段として、BAKCやMAYCが販売されました。その結果、BAKCがFloor 6ETH前後、MAYCが20ETHとBAYCよりはずっと買いやすい価格を提供することができるようになりました。Yuga Labsとしてはブランド力を維持しつつ、流動性を大きくとることができ、大成功したと言って良いでしょう。しかしながら、今後さらにNFTをリリースするとブランド力の低下は避けられないという問題は残ったままです。

この問題を解決するためにApeCoinが考案されました。

Ape Foundationとは

ホワイトペーパーによるとApe FoundationはApeCoinの管理団体であり、ApeCoin DAOの税務関係や執行に関する処理を行う機関となっています。

ここでの重要なポイントはApeCoinはYuga Labsの所有物ということではなく、ApeCoin DAOの所有物であるということです。

ApeCoinの批判的な言説の一つに、このストラクチャーが挙げられます。Yuga LabsはApeCoinを直接所有しないことでSECからの追求を回避してい(ることになってい)ます。しかしながら、この見方は楽観的すぎるという指摘が数多くあり、将来的にSEC(米国証券取引委員会)から指摘を受ける可能性があります。具体的には、ApeCoinが無認可証券に抵触する可能性があり、その場合はSECから何らかの規制措置を取られる可能性があります。

ApeCoin DAOとは

ApeCoin DAOは、APEエコノミーを成功させるために様々な施策を議論し、決定し、実行する機関です。

具体的に何をするかはこちらで議論されます。このページを見る限り、かなりアクティビティは高いです。

ボードメンバー

Ape Foundationの顔となるメンバーが公開されています。下記を見る限り、非常に華やかな顔ぶれです。

Alexis Ohanian
Reddit(海外における5chのようなサイト)の共同創業者
Amy Wu
FTXのベンチャー・ゲーミング責任者
Maaria Bajwa
Sound Ventures(VC)の代表取締役
Yat Siu
Animoca Brands(ゲーム会社)の共同創業者
Dean Steinbeck
Horizen Labs(ブロックチェーン会社)の代表取締役

https://apecoin.com/about

ApeCoinが解決する3つの問題点とは

まず最初の問題点は、上述した流動性の問題です。BAYC、BAKC、MAYCはどれも価格が高騰しているため、流動性が低くなってしまっています。一方で価格が安くなるようなNFTをリリースしてしまうと、BAYCのブランド力に傷がついてしまうという問題です。
ApeCoinはこれを完璧に解決してくれます。ApeCoinは1単位が$10前後であるため非常に安価であり、また取引所は流動性が極めて高いです。また、ブランド力に傷がつくこともありません。

これにより最初の問題点は解決しましたが、新たな問題点が発生しました。それはApeCoinのみを所有する人はオリジナルのNFTを所有するメリットが得られないという問題点です。
この問題を解決するためにApeCoin DAOはApeCoinに様々な機能をもたせようとしています。最も代表的なのがBenji BananasというAnimoca Brandsのゲームです。かつては無料のゲームでしたが、ApeCoinを通貨として利用するP2Eとして再開発されつつあります。

こちらのパスを購入することでP2Eゲームとして利用できることが発表されています。
https://opensea.io/collection/benji-bananas-membership-pass

ApeCoin DAOを見る限り、次の4つの方向性で様々な機能を付加していこうとしているようです。

  • 支払い手段

  • ガバナンストークン

  • NFTのリワード

  • メタバース標準機能としての利用

最後の問題点はVC投資家にとっての課題です。これまでVC投資家は投資先の会社をある程度成功させないと稼ぐことは難しいという問題がありました。

実用的なプロダクトを開発し→収益の伸びを実証→株式公開→キャッシュアウト

という流れです。一方でApeCoinのようなトークンを利用する場合、VC投資家は即座にApeCoinを売り、キャッシュアウトすることができるようになります。この場合下記のような流れになります。

ビジョンを作成し、トークンを発行→キャッシュアウト

もちろんすぐにトークンをキャッシュアウトしてしまうとエコシステムが回らないことが多いかと思いますが、手段としては上記の課題を解決することができています。

Take-Home Message

  • ApeCoinは複数の課題を解決することができる手段

  • 初動ではBAYCの知名度で成功を収めたが、今後ApeCoinがどうなるかは魅力的な機能を付加できるかどうかによる

  • SECの規制により状況が一気に変わる可能性もある



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