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動きを解析すること。(36歳からの大工修行日誌)

最近、鉛筆の削り方を大工流の平べったく削るやり方に変えてみたところ、線が細く狙ったところに綺麗に引けるようになって嬉しい。
やっぱり道具の手入れ、使いやすいように調整するのは大事。どんなに頑張ってもやり方、道具が良くないと結果につながらない。

大工をしていると、道具ややり方を工夫するのが楽しい。
鉛筆以外だと、脚立を二段のやつを買ってみた。普通は三段か四段くらいのものを使うのだが、背がそこそこあるのと腕が長いので二段でも結構手が届く。
大は小を兼ねるのだが、小さいと軽いし、狭い場所でも使えて取り回しが良い。さらに僕の車は小さい軽自動車なので、二段の脚立は積みやすい。
その他、コンベックス(巻尺)のホルダーを工夫したり、腰が弱いので腰袋を肩から吊るようにしてみたり。

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大工に限らず、仕事を早く上手くやるには、大きく分けて2つ方法があると思う。
仕事を早くするには、単純に動作速度を上げる、失敗を少なくする、そして動作を少なくするの3つだ。そのために出来ることは2つ。

1つは経験値を積み重ねること。
ポケモンで言えばとにかくたくさん草むらに入ってバトルしてコツコツ経験値を積み重ねる。
大工さんがなぜ普通の人よりも上手に作業出来るかと言えば、単純にたくさん作業を繰り返しているということがある。一般人が丸ノコの練習をしようにも、切る木がそんなにない。大工さんをしていると、膨大な量の木や石膏ボードを切る。
単純に年数を重ねて、経験値を重ねればある程度までは上手くなる。

もう1つは、自分の動きを解析すること。
ただ、経験値を重ねるのは大事だけど限度がある。どう頑張っても八時から六時までしか作業出来ない。騒音なんかの近所迷惑もあるので、早朝や夜はできない。
そうなると、同じ時間の中でいかに経験値を稼ぐかがポイントになる。

とにかく動作数を少なくする。
各動作を速くするのには限度もあるし、時間もかかる。
作業の本質を考えて、無駄な動きを少なくする。そのためには無駄な動きをしていないか、自分の動きを解析しないといけない。

たとえば、ボードを切るにしても、いろんな動作の組み合わせで成り立つ。
貼るところの長さを測って、墨を書いて、直角を切る定規と並行を切る定規を使い分けて切って、少し削るところは削って、ビスを打っていく。
下手くそな頃は、何回も長さを測りに行った。これはきちんと分かりやすく、なおかつ書くのが簡単なようにメモを取れば解決する。測り方も、ミリ単位で欲しいところと、いくらかズレても問題ないところを意識して、ミリで拾うか、尺で拾うか分ける。
墨を引くにしても、差金で引くよりも、個人的にはスコヤが良い。切り始めの10センチほどだけは綺麗な直角で、細いしっかりした先で引きたいので、スコヤが良い。特にボードは木のように固くしっかりしていないので、スコヤの方がしっかり当たる。まあ、そこは差金が上手くなれば良いんだけど。
切るにしても、出来るだけ平行定規を付け外しせずに切れるように考えると早い。
ボードの運び方も、動線を綺麗に片付けておくとか、どこで支点にして立てるとか。
ビスを打つにしても、脚立を何回も動かすと効率が悪いので、脚立なしで止められるところをまとめて止めて、脚立が必要な高い位置は後でまとめて打つ。

ボードに限らず、都度やった方が良い動作と、まとめてやった方が効率の良い動作なんかを考える。
上手い人の動きを見て真似をする。
自分の動きには無駄がないか考える。

動きの無駄が少なくなると余裕が生まれるので、作業の正確性も上がる。
力でブンブンやっても限度がある。
特に36歳からの大工さんは、体力のピークは下り坂からスタートする。
スタートが遅いことを嘆いても仕方がない。

ただ、一年やってみて高いところが怖いのがどうしても克服出来なかったら、その時は諦めようとも考えている。
もう、そこは運を天に任せるしかないと思う。高いところが弱いとどうしても大工は厳しい。他のことは経験値を重ねて行けば解決するだろうけど、高いところだけは一年で慣れないと厳しいだろう。

高いところ問題は置いておくとして。
自分ができることを努力する。できないことを嘆いても仕方がない。

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そういえば。
大工してて疲れているのに、なんで走るんですか? しんどくないんですか?
そんなことを聞かれた。

答えは、走る方が疲れは取れるから、疲れている時こそ走る。
もちろん、全く余力がなければ走れないんだけど。

走ると疲れが取れるというのは、エネルギー保存則に反しているように見える。

ただ、水なんかでもそうだけど、流れていないとどんどん淀んで流れが悪くなってしまって、結果的に流れる水量が減ってしまう。
たくさん流れた方がきれいに流れて循環しやすくなる。
使わずに貯めこむほど淀むし、いざ、雨がいきなりたくさん降ったりすると、流れが悪くて溢れてしまって壊れたりする。

かといって、流れが良くなるからと言ってジャブジャブ流せば水源の水が足りなくなったり、河原の削れて欲しくないところやで削れてしまったり、生き物も減ってしまって汚れたりする。
適切な量が綺麗に流れ続けることが重要だ。

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人間の体の中まで、川の水とまったく同じ理屈が使えるかというと少し怪しいものだけど。
それでも、適切に血液が流れて、酸素やエネルギーの運搬が淀むことなく綺麗に整えられるんじゃないかと思うわけだ。

実際、トレーニングの世界には回復走という言葉もあるくらいで、完全に休養してしまうよりも軽く筋肉なんかに刺激を入れるゆったりしたペースのランニングは良いとされている。

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まあ、疲れを取るためというより、いんなことを整えるために走ってるんだろう。
何も考えずに走る。

まあ、あれこれ言っても36歳からの大工さんというか、36歳から新しいことをするというか、サラリーマンをやめて自分で食う方法を身につけて行くのは、やっぱり大変で、たまに心が挫けそうになる。

でも、まあ、がんばる。

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