今日が一番若い日だから、上棟をがんばる[大工さん修行日誌]

36歳からの大工さん修行。
もうじき三ヶ月が経つんだが、一つ問題を抱えている。

上棟が怖いのだ。
そして、明日は上棟なのだ。

そんなわけで上棟の怖さを克服するための日記を書いてみる。
そんなことしてないでさっさと寝て明日に備えた方が良い気もするけど。

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上棟とは棟上げとか建て方とか建て前とか呼び方はいろいろあるんだけど。
とにかく家の骨組みを一日で立ち上げる作業のことを言う。
住宅の工事はまず基礎屋さんが基礎を作ってくれて、そこから大工さんが土台の木を敷く。
そして、上棟になる。

上棟の日はクレーン車が来て、木を吊り上げてくれて、それをどんどん組み上げていく。大工さんも何人も来てみんなでどんどん組み上げる。

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上棟の怖いポイントの1つ目は高さだ。

高いと言っても木造住宅なので落ちてもワンフロアなのでそんなに高いことはない。
とはいえ、3メートルくらいはあるので、落ち方が悪いと死ぬ。まあ、死ぬことはないにせよ、落ちたら多分そこそこ痛いだろう。

まあ、でも、落ちたって、やっぱりそんなに高いことはないんだから、そこは勇気を持てば大丈夫と信じよう。

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2つめの怖いポイントは、歩く場所が細いということに加えてその上で重いものを持ったり釘を打ったり作業しないといけないということ。

ハリの上を歩くのだが、これが太さ三寸五分、105ミリメートル、つまり約10センチなのだ。

高さ3メートルの10センチ幅の平均台の上で、歩くだけでもそこそこ怖いのだが、さらにしゃがんでボルトをしめたり、かすがいを打ったりする。

掴まれるものもない。

でも、これも冷静に考えれば、高さ3メートルじゃなかったら大して難しい作業でも何でもない。
しゃがんで足元のボルトをインパクトでしめるだけなんだから。

幅も10センチあれば充分バランスを取れる。

実際、土台を敷くときだって、同じ幅の木の上をひょいひょい歩いているんだから、高さが高くなったって別に難しいことはないわけだ。

高さがあるから、足がすくんで、それで怖い気がするだけで、決して難しくはないし、別に怖いことでもない。
そう信じよう。

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怖いポイント3としては、ベテラン大工さんたちが集まる中、何をすれば良いかオロオロしてしまうのだ。

大工さんの仕事っていうのは、結構いろいろ難しい。
マニュアルがあって、それを繰り返し読んでやっていければ良いんだけど、そういうのがない。
適宜教えてもらったり、周りを見て真似しながらやっていくしかない。

ただ、上棟のときは、みんな緊張感が違う。
やっぱり、落ちると怪我するし、柱なんかも重いものを運んで疲れるし、テキパキやらないと終わらないからね。
そんなわけで、普段は丁寧に教えてもらいながら出来ても、上棟のときは、なかなかそうはいかない。

それでオロオロする。

オロオロしてたら、当たり前だけど、「分かんなけりゃ聞けよ」って話になる。
ただ、やっぱり、ベテラン大工さんたちが緊張感を持って上棟しているのは、結構怖くて、オロオロしてしまう。
二十歳そこらのガキじゃないんだから、ちゃんと聞かないといけないんだけど。

まあ、明日はドンドン聞いてみよう。
聞かずに怒られるより、聞いて怒られよう。
明日はトライしてみよう。

それに、修行三ヶ月のやつに、そんなにキツく当たるような人はいないんだ。
だからこそ、そこに甘えず、どんどん自分から聞いてみよう。

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何年かしたときに、この日記を読んで、
「ああ、あの頃は上棟が怖かったんだな」
なんて笑ってる日が来るんだろう。

住宅営業だってそうだったし、アフリカを自転車で横断した時もそうだった。
最初は何でも出来ないし、分からないし、怖いんだ。
失敗することある。
それでも、何でも出来るようになっていく。
36歳から新しいことに立ち向かうのは、正直、体力がいる。
二十代のように、周りもかわいがってはくれない。
36のおっさんなんだから、そのくらい出来るだろ、って。
そりゃ、そうだ。

でも、36歳だろうが何歳だろうが、一生懸命やってれば応援してくれる人は必ずいる。
残りの人生で今日が一番若いのだ。
頑張った今を、いつかは振り返って微笑ましく思える日はやってくるのだ。

上棟は大工さんとしての大きな関門になりそうだから。
逆を言えば上棟を頑張れば、一人前への道はぐっと近付く。

まあ、今は無理に上棟しなくても、上棟だけ専門でやる大工さんがいるので、実は無理しなくたって何とかなるってのも事実なんだけど。
とはいえ、上棟が出来ない大工さんじゃ、やっぱりかっこ悪い
上棟は大工の一番の見せ場だ。
頑張っていこう。

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