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大工でつらい仕事トップ3[36歳からの大工見習い日記 四ヶ月目]

36歳からの大工さん修行日誌も四ヶ月が経った。
最初の一ヶ月はとにかく体がつらい。
二ヶ月目はこんな難しいこと出来るようになるんだろうか。
三ヶ月目はちょっといろんなことに慣れてきて、少し筋肉痛も楽になってくる。
四ヶ月が終わる今、体は随分と楽になってきたし、何だかんだ新築物件も五軒目をやっていっているので、全体の流れも分かり、ほとんどの作業を一度はやったことになる。
もちろん、まだまだ上手くはない。

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最近、お客さんが現場に来て、
「やっぱり、木の良いにおいがしますね」
と言われて気付いたけど。
あんまり木のにおいって分からなくなった。
確かに、最初の時は僕もそう思ったけど、毎日大工をしてると当たり前になって木のにおいが分からなくなった。そりゃ、丸ノコなんかで切れば木のにおいがするんだけど。
木のにおいが体にしみこみつつあるんだろうか。

一応、三ヶ月を越えてみて、
「すみません、やっぱり僕には無理でした」
とはならなかったので、ひとまず順調だろう。

むしろ、大工さんほど働いていて精神的にスッキリしている仕事はないんじゃなかろうか。
爽やかだ。
でも、文章を書く時間は減った。
日々、クタクタに疲れる。
週休一日はしんどい。
やっぱり体が元気な20代からやって、体を作っておかないとキツいなーっていうのは思う。趣味でフルマラソンなんかも走る程度に体力はあるけど、それでもやっぱり大工さんの仕事は体力的にはつらい。

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大工さんの仕事は本当にいろいろある。
基本的には、測る、書く、切る、打つだ。スケール(分かりやすく言うと巻尺、メジャー)できちんと長さを測れて、差金(L字の金属の定規)や墨壺(インクのついた糸がびよーんと伸びてパチンと弾いて直線を書ける道具)で墨を打てて、丸鋸できちんと切れて、クギやビスをガンや玄能(ハンマー、とんかち)、インパクトドライバーで打てれば良い。たまにノミを使って木を削ることもある。割とシンプルと言えばシンプルだ。
ただ、床、壁、天井、外回り、やる場所も作業の種類も多いし、それぞれの箇所でコツなんかも違う。図面を読んで理解出来ないといけないし、最低限覚えておかないといけない数字もある。

こんなに全部いろいろ出来るようになるんだろうか、と時々心配になる。

でも、あんまり深く考えないことにした。

そりゃ、早く出来るようになって、棟梁の役に立つようになって、いずれは独立もしたいけど。
まあ、出来るようにならなけりゃ、それはそれで人生だ。仕方ない。もちろん、頑張るのは頑張るけれど。

でも、大工さんっていうのはやっぱり難しいと思う。
普通のサラリーマンみたいに、真面目に頑張ってれば仕事できるようになるってもんでもないと思う。

体力的な部分もあるし、そういう手先の作業が得意かどうかなんかもあると思うし、いくらか頭もいるし、人間関係的なものも必要だろうと思う。

四ヶ月やってみて改めて思うけど、自分には難しいかもしれないと感じることもある。

こんなに難しくて、体力的にもきつくて、休みも少なくて、ケガのリスクもあって、サラリーマンみたいに安定したサラリーでもなくて。
そりゃ、若い人が職人になりたいなんて思わないよな、とは思う。

脱サラするにしても大工は大変なので、あんまりオススメはしないかなーというのが本音だ。

でも、完成すれば嬉しいし、体を動かして、お茶も美味い。
シンプルなことだけど、幸せな人生の基盤みたいなのはある気がする。特に今の現代社会では失われつつある満足感みたいなものがある気はする。

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あんまり詳しい作業内容を書いても分かりにくいので書いてなかったが。

四ヶ月やってみて、体力的にきついなと思う作業トップ3を書いてみる。

第三位。外の面材貼り。
外の面材というのは非常に分かりにくいけど。最近の家は、家の外周に耐力面材というボードを貼る。貼らないところもあるけど、これを貼ると、家の外周がガチっと強くなるのと、断熱材をしっかり施工しやすくなる。

ただ、この外に貼る面材ってやつが、実に重い。
そりゃ、耐力面材という名前の通り、地震なんかの力に耐えるためのボードなので、結構頑丈なものだ。
これが、またサイズが大きい。もう少し小さけりゃ楽なのだが。
ただ、小さいと耐力的に問題がある。柱とケタをつなげないといけないので、とにかくでかくて重い。
しかも、家の外に付けるので足場から打たないといけない。高いところを付けるのは大変だ。

こんな作業、大工じゃなくて外壁屋さんの方が得意じゃないの、勘弁してよ、なんて思うけれど、大工さんの仕事らしい。

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第二位は上棟。
上棟が一番大変ではあるけど、体力的には僕の中では二位。
体力的じゃなくて、総合的な面では上棟は一番大変だ。

上棟っていうのは、柱やハリなんかの骨組みを一日か二日で組み上げる作業だ。
高いところに登るし、命綱なしで、ハリの上を歩かないといけない。ハリの上なんてのは太さ105ミリなので、ただ歩くだけでも怖いのに、その上で作業をするんだから、まあ、怖い。
総合的には一番大変ってのはそういうところだ。

体力的にも、柱やハリなんかっていうのは結構重いのだ。クレーンで吊ってくれるとは言っても、柱なんかは手で運ぶ。
ハリの上でバランスを取るのも体幹の筋肉なんかを使うらしくて、とにかく疲れる。

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栄光の第一位は、天井だ。
天井は下地を作って、ボードを貼る。

そんなに重くはない。
天井のボードは厚みも9ミリで、大きさも三尺六尺だ。
壁のボードの方が12ミリの三尺八尺なので間違いなく重い。

なのに、どうして天井が一位なのか?
どうして、上棟よりも体力的にきついのか?

やってみると分かるのだが、上を向いて作業するのは、ものすごくしんどいのだ。
柱なんかの重い物を運ぶようなしんどさではなく、じわじわと体の奥が疲れてくる。汗もダラダラになる。
天井を一日中した次の日は体が重い。

そういう意味では軒天もつらい。軒天というのは家の外の屋根の裏側というか下側の部分だ。アレも足場の上で上を向いてやるので結構しんどい。

ただ、天井は、とにかく多い。
当たり前だけど家の中には全て天井がある。

また面倒くさいことに、グラスウールを入れて、気密シートというビニールなんかを貼ることもある。これは会社による。断熱を屋根面に吹き付ける会社は気密も屋根面になるので天井には貼らなくて良い。グラスウールは壁なんかでもそうだがかゆくなるので嫌だ。

天井はとにかく一日中上を向いて作業するのでつらい。
でも、今の大工メンバーの中では僕が一番背が高いので、天井マスターになれる可能性は高い。
天井に強くなれたら、戦力だ。親方の役にも立てる。

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トップ3ということで書いてみたけど、当然、それ以外も体力的にきついことはある。

土台を敷くのも、土台の木は大きくて重い。
壁のボードも石膏の粉で汚れるし、咳が出るし、狭い中で運ぶので疲れる。
フローリングもしゃがんで腰を曲げての作業だから一日やると腰が痛い。
窓だって重い。
吹き抜け周りは落ちたら嫌だ。
冬は寒いし、夏は暑い。

それでも、不思議と楽しい。
体力的にはきついけど、行けば楽しい。
体がきついから休みたいと思うことはあるけれど、仕事に行くのが憂鬱で嫌だってことはない。
上棟だけは、まだまだ慣れないので憂鬱だけど。
他の作業は、早起きするのが面倒なだけで、行くのが嫌だ、ってならない。むしろ、行けば楽しい。お茶とタバコが美味い。

とはいえ、自分で独立して棟梁になって大工として生きていけるようになるかと考えると、不安なところは多いというのが本音のところではある。

まあ、それでも、仕事が楽しいって、現代日本で本当に貴重なことだと思う。
お金のことや独立のことはひとまず棚に上げておいて、日々、大工を楽しくやっていこう。

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