父の愛人と舞妓①

家族…父、母、9つ上の姉、私、母方の祖父母

幼い頃
の記憶の中で1番古いものといえば、仕事へ行く母に「行かないで行かないで!」と泣き叫びながら大騒ぎしているシーンである。
私が2歳になると母は父の会社の手伝いに行き、夜遅くに帰ってくる。そのため、ほとんど顔を合わせる事がなかった。
1年生に上がる頃父は東京へ単身赴任。母は札幌の父の会社の事務所で働いていた。9つ上の姉は私が1年生の時高校1年生。全く家にいないので本当に一人っ子の様だった。
そんな私と幼い頃からずっと一緒に居てくれたのは、母方の祖父母だった。昼間は老人会に連れていかれ、家で見るテレビは相撲か時代劇。そのおかげなのか、歴史好きになった。

中学生になった私は、姉の部屋にあった源氏物語を毎日読むようになった。そこから京都の旅行ガイドブックを買って読み漁るようになり、いつしか将来の夢は舞妓さんになる事になった。
家族に言うと、母は「ふーん」と言う一方で父姉はどうしたらなれるのかと一緒に考えたくれた。
舞妓さんになる為には置屋さんや常連さんなどとの繋がりがなくてはならない。そこで父の知り合いの大阪に住む社長さんが紹介してくれることになった。そして置屋さんとやり取りをし、顔写真を送ったりしていたのだが……数日後の夜、父母の戦いが勃発。毎晩争う声がリビングから聞こえてきた。姉は「お母さんは行って欲しくないんだよ」と言っていたが実は違った。
その父の知り合いとは、父の愛人だったのだ。

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