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【Dyson Sphere Program】行動の動機が自己の内面にしかないのなら、それはもう欲望なんよ

欲望なんよ

こういう工場シムみたいなのって近頃急にジャンルとして確立してきた感ありますね。元祖?は、やはりリリース年からしてもFactorioでしょうか、私が先に触ったのはSatisfactoryなんですけども、FPSというのが致命的で…めっちゃ酔う…ノリとしては大好きなんですけど…あのクソデカジャンプパッドとか大好き…バカの移動手段…

Dyson Sphere Program(以下DSP)はそれらに続く、工場シムの第三の雄としてかなり初期からかなり高い評価を得てたと記憶していますが、前2作品とは決定的な違いがあります。

この世界には「他者」が一切存在しない。この宇宙に、この星系に、この星に、たったひとり。最初から最後まで甘美な孤独と膨大な資源だけがある。

わかりますか、「敵」がいないんですよ、ついでに味方や仲間もいない(2022.7現在マルチプレイなし)Factorioでのバイターが、Satisfactoryでのふわふわしっぽブタが、いないんですよ。設定で切れるとかじゃなくて、最初からいないんです。これがどういうことか。

次に何をするかを決めるのは自分だけ。

敵がいるなら、その敵を退けたり防衛したりする必要が出てくるじゃないですか。探索を妨げられたらその先に進めないから対策を立てなきゃいけないじゃないですか。仲間(マルチプレイ)がいるなら分担したりしなかったり計画を共有したりしなかったりして何をすべきかまた何をすべきでないかが自然と決まってくるじゃないですか。

ゲームにおける「目的」は、多くはそうやって必要から生まれるわけじゃないですか。必要は発明の母というじゃないですか。誘導と言ってしまうと言葉強いかもだけど、上手に誘導されて気がつくと100時間とか軽く超えるじゃないですか。

DSPは、それが!ない!

もちろんゲーム内のマイルストーンとか解除される実績とかはありますよ(しかも多い)、一応のバックグラウンドストーリーらしきものも提示されます。けどそれだけを頼りに進められるかというとそれはどうかな?!

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そもそもマイルストーンもわけわかんないです「マイルストーン:流体貯蔵」って言われて何すればいいのかわかりますかこれ?正解(?)はおそらく油田開発と貯蔵なんですけど私はわかりませんでした。わかんないでしょうよ!!!!あとまさかこの宇宙では水の電気分解が存在しないとは思わんかった。

さらには、DSPにはおそらくゲームオーバーがありません。この手のちまちまゲーにありがちな「詰み」もない。むしろ明確に詰みにもっていくためには、詰ませるための設定と計画が必要じゃなかろか。かなり綿密なやつ。序盤にやってはいけないこともないし、初期惑星の当たり外れも、気象イベントなどのアクシデント要素もありません。中盤重要素材の原油は減衰しても枯渇はしないし、キャラ(自分)がエネルギー切れで動けなくなってもその辺の草木をむしって燃やしゃいいので。


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(↑は精製油が派手に余って製油所が完全に停止しているけど、最早ほったらかしでなんの問題もなくなった様子です。せめて火力発電所で燃やせ)

ゲームオーバー、つまりゲーム上での「負け」が排除されているため、多くのタイトルでゲームを進めるモチベーションとなる「勝ち」の概念も当然ありません。詰まないために、負けないために次の一歩を探る動機がありません。完全にマイペースで進めることが許される、というか、完全にマイペースでしか進められないのです。

つまりDSPは、何者にも追い立てられないかわりに、何者にも背中を押してもらえないのです。ひとまず一歩踏み出したその足をどこに下ろすか、それさえも自ら選び自ら決めるしかないんです。ゲーム内に「他者」が一切存在しないのだから!

ここでタイトル回収です。このゲームにおける行動の動機は、プレイヤー自身の中にしか存在しないんです。誰とも競わず、何者にも急かされず、環境すらも不変であるこの宇宙では。己の身の内にのみ存在する行動の動機、それは欲望と呼ばれるものでしょう。

ただねー、この欲望、なんかこう説明しづらいんですけど、確かに欲望以外の何物でもないんですけど、なんかこう、扱ってるもののスケールは壮大で(なにしろダイソン球)崇高な、人類の飽くなき文明の進歩そのものなのに、なんかこう、しょうもないというか、ものすごく原始的欲望なんですよね背中かゆいレベルの。すんごい楽しくて強い欲望なんですけど、すんごい原始的で生産性がないというか。いやゲーム全般生産性がないだろと言われたら即座に三日三晩に及ぶ激論を戦わせる覚悟はありますけど、そういうのともちょっと違う。強いて似たものをあげるなら、角栓抜き動画(超溜まった耳垢ほじるとかクソ汚れた絨毯洗うとか石鹸を延々削るとかでもいいです、その手のやつ)を延々見てしまう欲望なんですよ。アーーーー抗えねえーーーーッ!私は単純作業の快楽に抗えないタイプの人類なんですよーーーーッ!

でもこれ多分、私だけじゃないとは思うんですよ。ちらっとのぞいた5chのスレでは「量産するために量産する」とか「全てに増産剤吹きたいから何の意味もない最終生産物にも吹いてる」とか、あまりにもむき出しの欲望にまみれたワードが頻出するし、Steamのレビューでもエネミーやcorpの実装予告(詳細まだ全然わからない)に怯える人が散見されます。わかるぞ同志たちよ。この甘く優しくそして高潔な欲望に満たされた世界を壊されたくない、わかるぞ同志たちよ。でもまーこのゲームが、そんなよくあるようなのを安易に出してくるとはあまり思ってないので楽観的です。DSPは唯一無二のタイトルであろうとしている。我らはFactorioでもSatisfactoryでもないのだと、他ならぬこのタイトル自身が強く高らかに謳っているのですから。

あとこのゲーム、中国は重慶のゲームスタジオ製作だそうで、なんか随所にそれ所以かな?と思わせる部分があるのも結構好きです。ゲームの実績に中国故事があったり。そもそものこの、自然を征服するのでもなく、驚異を退けるでもないゲームデザインもなんとなく東洋的?瞑想的とも言える?ような、悠久の時間スケールを感じたり。

宇宙や科学技術についてのフィクションとリアルのさじ加減もいい塩梅かなと。恒星はおそらくこの実在する銀河系と同じ名前がつけられていますが、衛星や惑星、あとそれぞれの位置?は違うのかな、タイトル画面では銀河系マップが見られますが、さすがにそこまではわからん。進めていくうちに解除される技術群も概ねリアル路線ですが、ストレンジ物質あたりから元気にSF(サイエンスフィクション)の領域に入っていく感じ。言うてそもそもダイソン球自体が、まさにSFの架空の理論ですしね。ダイソン博士が示したのは、恒星間移動を成し遂げるほどの文明レベルに達した人類は、いつか必ずエネルギー問題という壁に行き当たり、それを解決するのにどんな方法をとるだろうか?という問いとその答えですから。

かつては成層圏突破も、有人宇宙飛行も、自立2足歩行ロボットも、軌道エレベータもそういった架空の理論でした。それらを追いかけるように、またはその先を走るように、ゲームの世界では、Factorioがロケットを打ち上げ、Satisfactoryが軌道エレベータを建てて、DSPはダイソン球を作るのです。最高だなあ!!!!!

ひとまずのゲームクリアまでのプレイ時間は180時間くらいです。チンタラまごまごしながらやってたので早い人なら初見でも半分の90時間くらいで一応のクリアにはたどり着けるんじゃないでしょうか。RTAでは5時間切りがあるようです。すげえ…

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この180時間はかなり濃密でしたし、なんなら今はこの180時間の経験を生かした整然なる秩序の2周目に行こうか、それとも混沌と後悔を抱えてさらなる発展と拡大を目指すか、楽しく迷っているところです。どうしよーどっちもやりたーいキャッキャッ

配信しながらやってたリストはこちら。どれもとりとめなく喋りながら探り探りやってるだけなので攻略とかの参考になるものではないです多分。BGMにでもしてくださいませ。

とても楽しい、おすすめゲームです。FactorioやSatisfactoryが楽しかった人はもちろん、Cities Skylinesが好きな人もおすすめ。プレイ感はかなり近いものがあります。

あ、最後にFactorioやSatisfactoryと違うポイントいくつか。細かいけどこの2タイトルに触れたことある人ならむしろちょっと戸惑うとか引っかかるポイントかもしれないかなと思いまして。
※ソーター(インサータ)は伸びます。3列まで行ける。のでロングインサータ等はないです。
※液体もコンベアで運べる。
※キャラの移動手段は最初から空も宇宙も飛べるので特にないです。各種車両もないです。鉄道もない。
※ドローンはインベントリには触りません。
※回路系もないです。
※惑星や恒星のそばにいても即座にワープできる(これはEVE脳)
※キャラがベルトコンベアに乗っても運ばれない。

キャラがベルトコンベアで運ばれないんですよ!!!運ばれたかったのに!運ばれたいでしょうみんな!!!そこだけちょっと不満です!

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