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【NJRPG-2ND/シナリオ】フォールス・ウインター#1:ブレイン・ウォーフェア

あらすじ:耐え難い潜伏生活から前線へと引き戻された鷲のニンジャたちは、四方を敵に囲まれながら過酷な任務へと挑む。〈鷲の一族〉の再興という崇高な目的はその胸を締め付け、同時に心を昂ぶらせる。しかし富士の樹海に眠るダンジョンのように、彼らのニューロンの真実もまた、謎に覆い隠されているのであった。

これは「ニンジャスレイヤーTRPG2版」のシステムに対応した、「鷲のニンジャ」がテーマのキャンペーン『フォールス・ウインター』の第一話に該当するサンプルシナリオ記事です。

プレイ人数:4~5名
所要時間:4~5時間(オンラインセッション/テキストセッション)
難易度:キャンペーン専用のルールで作成されたばかりのキャラクターを想定(=新規ダイス作成から1~2シナリオ攻略程度の強さ)

キャンペーン全体の背景設定やルート分岐の調整方法などは、別途CPセッティング記事も参考にしてください。

※各ゲーム要素はニンジャスレイヤーTRPG初版で行ったキャンペーン実卓を元に、2版向けへコンバートされたものです。ゲームバランスは現行環境やプレイヤーキャラクターに合わせて都度調整することを推奨します。

関連記事はこちらのマガジンから。

◇本文中に登場する略称
NM:ニンジャマスター    → ゲームの進行役。描写などを行う。
PL:プレイヤー       → ゲームの参加者。PCを操作する。
PC:プレイヤーキャラクター → ゲーム内の主人公。メインキャラ。

マップデータ

このシナリオで使用するマップデータはGoogle スプレッドシートで作成されています。下記からローカルにダウンロードするか、ご自身のアカウントにコピーを作成してGoogle スプレッドシート上で使用してください。

マップの詳細は以降のシナリオ本文中で解説されます。

はじめに

このシナリオでは、PC全員が重金属酸性雨の水溜りに附した状態から突如として物語が始まる。周囲には銃声や爆音が鳴り響き、さながら戦場のような状況になっている。キャンペーンの想定通りに情報開示が制限されている場合、PLは「鷲のニンジャのシナリオ」とまでしか聞かされていないため、突然の展開に混乱してしまうことだろう。

これは没入感を高めるための意図的な措置である。なぜならこの時点でPCは『アシッドウルフ』と呼ばれるニンジャによって洗脳されており、『お前たちは鷲のニンジャだ』と徹底的な刷り込みを行われた上で、初めて目覚める瞬間がこの場面だからだ。この過激な状況も、彼らの"脳"(すなわちプレイヤーたち)が素早く状況に適応するため、記憶を補間する(PC設定を補完する)よう促す為の"セッティング"に過ぎない。

故にこのシナリオおよびキャンペーンでは、NMがPCとPLへ断片的な偽りの情報を届ける『毒』の役割を、PLが『毒』を受け取り不足した部分を恐らくこうだろうと補間しPCの行動に反映させる『脳』の役割を務める。

導入

……RATATA………BRA……TATATA!…………TATATATA!……BRATATATATA!……BLAM!BLAM!君の意識が戻ると共に、遠くから響く銃声が耳に飛び込む。いや、違う。その音はすぐ側から響いていた。ひどい耳鳴りと、体が燃えるような感覚。腕が熱い。「起きろ」君は重金属酸性雨が降り注ぐ、泥水に倒れ伏した状態で意識を取り戻した。

「起きろ」BLAM!BLAM!ぼやける視界の中、ミリタリー装束のニンジャが突撃してきた企業戦士を撃ち殺す。「〈思い出せ〉お前は偉大なる鷲のニンジャだ。お前はまだ何も成し遂げていない。さあ、起きろ!」瞬間、ソーマト・リコールめいて記憶の逆流が始まる。

バトル・オブ・ムーホンの痕跡を残す霊峰、フジサン。チームは指揮官であるアシッドウルフに率いられ、北東部の樹海に存在する遺跡から旧世紀データを回収する任に就いていた。ところが、一行は目的地周辺で暗黒メガコーポの武装調査部隊とニアミスしてしまい……君の脳裏に、飛来する迫撃砲弾のイメージが蘇る。

「さあ、移動するぞ!」アシッドウルフがサイバネ腕で力強く君を立ち上がらせる。周辺では同様に意識を取り戻した仲間たちが、企業戦士の襲撃に立ち向かいつつあった。

導入の描写テキスト

PCがフジサンの樹海で目を覚ますと、そこは凄まじい戦場と化している。武装したメガコーポの兵士がアサルトライフルを乱射し、遠くからは迫撃砲による妙に精密な爆撃が迫ってきているのだ。この状況を打破するため、PCたちは指揮官であるアシッドウルフの指示に従い、企業戦士の襲撃をくぐり抜け、迫撃砲を破壊しなくてはならない。注意事項として、このシナリオで登場する"アシッドウルフ"は「オオカミを模した旧世紀ポリゴンめいたメンポ」を身に着けており、各種パーソナリティは設定集の『スパイマスター』を参照する必要がある。

ここでNMは目を覚ましたPCに襲い来る企業戦士を自由にカラテ殺させる形で、自己紹介を兼ねたRPを促すと良いだろう。

「スモーク弾!」「突撃!」「ホノオ!」「ニンジャキルスコア重点!」視界を遮る煙と共に、アサルトライフルを構えたアシガルが次々と姿を現す。表情を隠すフルフェイスヘルメット、軽装の装甲機動服。

その統率された動きは彼らが高度なミリタリー・トレーニングを受けている証である。しかし、忘れることなかれ。君たちもまた、訓練を受けたニンジャなのだ!

◆シーン1:迫撃砲の排除

アシッドウルフは企業戦士たちの異常な士気と迫撃砲の精度から、何処かに観測手と指揮官ニンジャが存在するのではと推測する。

彼は最も隠密行動に長けた己が観測手と指揮官を見つけ出し叩く役割を、PCには迫撃砲の排除のち、回収予定だった機密データの抽出を最優先で行うよう指示する。ただし、この規模ではどちらにもニンジャエージェントが存在する可能性は高い。

アシッドウルフは最低限の指示を出すと、IRCで目的地のマップ情報を共有すると同時に、一枚のフロッピーディスクを投げ渡し、樹海の闇へと駆け出してゆく。

◇データ抽出フロッピーディスク:
 特定のファイアウォールを突破するプロトコルが組まれている。
 指示された大型UNIXのメインフレームに挿入することで自動的にデータを抽出する。

迫撃砲までの道のり

このシーンでPCは迫撃砲のおおよその位置を割り出し、そちらに向かって一斉に突撃することになる。上記のマップではおおよそ【脚力】3のPCが『連続側転』を使用して3ターン程度で右端に到達できるように設定されているため、NMは全員が自動的に『連続側転』状態として処理しても構わない。

PCの誰かひとりでもマップ端に辿り着いた時点でシーンを推移させる。


この道中では待ち構えるメイライ社のアシガルがPCを迎え撃つ。マップは点線によって上段、中段、下段の3レーンに分けられており、アシガルたちは可能な限り自分と同じレーンの最も近くにいる射撃可能なPCを狙う。

◇ギミック:迫撃砲とスナイパースリケン
このマップを移動中、毎ターンの終わりには迫撃砲による爆発(カトンLv1)がマップ上のどこか1箇所で発生する。これは最も多くのPCを巻き込める箇所が狙われる。

また進行より敵からの【万札】回収を優先するなど、ほとんど移動しないPCがいる場合、迫撃砲と同じタイミングで、孤立したところをスナイパースリケンによる狙撃で狙われる(1ダメージ、回避難易度:HARD)。

◇樹海マップにおける進行ルール
1:誰か1人でも右端のマスに辿り着くと次のシーンに移行する。
2:マップは点線で上中下の3レーンに分割されている。
  敵兵士は可能な限り、自分と同じレーンの最も近くにいるPCを狙って攻撃集中から射撃を行う。
3:毎ターンの終わりには迫撃砲による爆発(カトンLv1)がマップ上1箇所で発生する。
  これは最も多くのPCを巻き込める箇所が狙われる。

砲撃陣地

KABOOOM!BRATATATA!BRATATATA!君たちは銃弾と雨をかいくぐりながら樹海の混沌を走り抜ける。やがて前方には迫撃砲を備えるメガコーポの簡易敷設陣地が姿を見せた。兵士たちは砲弾を取り落し、慌ててライフルの安全装置を解除するが、もう遅い。

敵部隊を突破した先には迫撃砲を運用する兵科2名と護衛、合計でPCと同じ人数のメイライ・トルーパーが簡易的な陣地を構えている。NMはPCにそれぞれ1体ずつを任意の方法で仕留めさせ、【万札】を与えると良い。

この脅威を排除すれば、あとは疎らに配備されたメイライ・トルーパーを潜り抜け目的地に向かうだけである。


◇NPCデータ:メイライ・トルーパー

メイライの標準的グレードの企業兵士。PCは知る由もないが、洗脳による高度なミリタリートレーニングを受けており、希薄化した自我を理由に、NRSを起こすこともない。

装備の差によってクローンヤクザより戦闘能力は遥かに高い。

◆メイライ・トルーパー/アシガル級(種別:モータル)
カラテ     2  体力     1
ニューロン   2  精神力    2
ワザマエ    4  脚力     3
ジツ      -  万札     1
近接攻撃D:2、射撃D:6
◇装備やスキル
 スキル:『◉タクティカル移動射撃』
 装備 :『アサルトライフル&ミハル・ドットサイト, 赤外線レーザーサイト』
     『サイバーヘルメット(サイバーサングラス)』
 
 『軽量型メイライ・タクティカルスーツ』:
  最低限の装甲を備えた軽量のパワードスーツ。【脚力】+1。


◆シーン2:霊峰フジサンに眠る旧世紀遺跡

アシッドウルフの情報によると、苔や草木に覆われた丘陵地帯に位置する特定座標の周辺には地下遺跡への入り口が複数存在している。この丘陵の正体は電子戦争時代に墜落した空中戦艦である。

PCがアシッドウルフに託されたのは、この戦艦のファイアウォールを突破しデータを抽出できるウィルス入りフロッピーディスクだ。PCは最終的に"遺跡"のコンソールルームに辿り着き、これを用いて重要データを回収しなくてはならない。

君は蔦を引きちぎり、苔を払い落とし、重々しい金属ハッチを引き開ける。その先には無数の配管が走る、酷く損壊した戦艦めいた金属製の通路が伸びており……意外なことに、朧気な照明があちこちで明滅し、火花を散らしていた。

遺跡探索

埋没した地下遺跡は広大で、じっくりと探索している暇はない。PCはアシッドウルフからの断片的な情報とニンジャ第六感を駆使して目的地のコンソールルームを目指す必要がある。

ここでは戦闘のようにしてイニシアチブ順にPCの手番を処理してゆく。PCは手番毎に2D6の『進行判定』をおこない、その出目と同じ値だけ『進行度』を加算する。さらに『進行判定』のロール後は、出目に応じた空中戦艦内部でのイベントが発生する。

このイベントにより戦闘が発生した場合、イニシアチブ順は『進行判定』からシームレスに移行する。つまり『進行判定』を行ったPCの行動手番が終了した直後のイニシアチブから戦闘処理が始まり、戦闘終了時のイニシアチブから『進行判定』が再開する。

NMはこれを繰り返し、最終的に『進行度』が30を突破した段階で次のシーンへとPCを導く。

TIPS:内部に侵入するとき代表者はD6+1で『進行判定』を行い、最初に飛び込んだ通路で何が起きたのかを決定する。

◇進行判定テーブル

出目2:一行は行き止まりに辿り着いてしまう。別の道を探さなくては。

出目3:哨戒・探索中のメイライ・トルーパー部隊と遭遇してしまう。難易度NORMALの【ニューロン】判定に失敗すると、2体のメイライ・トルーパーと即座に戦闘に入る。

出目4:監視カメラが稼働している。全員が『連続側転』判定を行い、誰かが失敗した場合、即座に防衛マシンガンターレットが2機展開し攻撃を仕掛けてくる。既にジェネレータールームでのイベントをこなしていた場合、監視カメラが稼働していない可能性がある。

◆防衛マシンガンターレット (種別:戦闘兵器)	
カラテ       -  体力        2
ニューロン     1  精神力       -
ワザマエ      4  脚力        -
ジツ        -  万札        -
◇装備やスキル
 マシンガン:遠隔武器、連射3、ダメージ1

出目5:メイライ社が仕掛けたレーザー感知式地雷に通路が阻まれている。難易度NORMALの射撃判定で安全に起爆排除することもできるし、難易度HARDの【ワザマエ】判定に成功することで『バクチク・グレネード』として取得することもできる。ただし後者の判定に失敗した場合、挑戦者は回避不可のD3ダメージを受ける。

出目6:メイライ社の補給チームと遭遇してしまう。チームは1~2人のメイライ・トルーパーと1人のメイライ・メディックで構成されている。メディックを倒したとき、補給品を強奪したとして【体力】と【精神力】をそれぞれ+1回復させても構わない。

◆メイライ・オフィサー(種別:モータル)
カラテ     2  体力     2
ニューロン   2  精神力    2
ワザマエ    5  脚力     4
ジツ      -  万札     2
近接攻撃D:3、射撃D:7
◇装備やスキル
 スキル :『◉タクティカル移動射撃』、『◉トリガーハッピー』
 サイバネ:『▶テッコLv1』
 装備  :『ショットガン&赤外線レーザーサイト』、『強化散弾』
      『サイバーヘルメット(サイバーサングラス)』

 『軽量型メイライ・タクティカルスーツ』:
  最低限の装甲を備えた軽量のパワードスーツ。【脚力】+1。
◆メイライ・メディック(種別:モータル)
カラテ     2  体力     2
ニューロン   3  精神力    3
ワザマエ    4  脚力     4
ジツ      -  万札     2
近接攻撃D:3、射撃D:7
◇装備やスキル
 スキル :『◉タクティカル移動射撃』
 サイバネ:『▶ヒキャクLv1』
 装備  :『アサルトライフル&ミハル・ドットサイト, 赤外線レーザーサイト』
      『サイバーヘルメット(サイバーサングラス)』
 
 『軽量型メイライ・タクティカルスーツ』:
  最低限の装甲を備えた軽量のパワードスーツ。【脚力】+1。

 『●緊急蘇生行為』:
  「即死!」効果を除き、マップ上の味方は【体力】0になっても即座には死亡しなくなる。
  このキャラは【精神力】を1消費し、「その他の行動」として隣接する味方を蘇生してもよい。

出目7:有線LANジャックを発見する。難易度:HARDのハッキング判定に成功することで艦内データにアクセスし、次の進行判定の結果発生するイベントを±1することができる(ロール後に±を選択することができる)。失敗した場合、【精神力】に1ダメージを受ける。

出目8:破裂したパイプから高温の蒸気が漏れ出し、巻き込まれたメイライ・トルーパーの死体が転がっている。難易度+1の『連続側転』に成功すればここを安全に突破し、トルーパーの死体から【万札】1を獲得できるが、失敗すれば【体力】に1ダメージを受けてしまう。別の道を迂回する場合、何も起こらないが進行度は本来の半分しか蓄積しない。

出目9:メイライ社の中間補給地点を発見する。その場で全員の【体力】を+2回復させる。必要であれば「アサルトライフル」や「チャカガン」が数丁置かれているとしても良い。

10:何の障害もなく順調に前進することができる。

11:軍服を着た無数の骸骨が折り重なるように倒れている。懐を漁れば古いIRC端末や銃器が手に入る。これには【万札】5の価値がある。

12:大型タービンを備えた広いジェネレータールームに辿り着く。この場所ではメイライ社のアサルトニンジャ、プラズマワスプがジツを用いてタービンに電力を供給しつつUNIXモニタで挙動を管理している。

PCは彼に構わず立ち去っても良いし、『アンブッシュ』を仕掛けても良い。しかし交戦を開始した時点で地下施設への電源供給は止まってしまい、これ以降の進行に影響を及ぼしてしまう。

◇アンブッシュ:戦闘開始直後、任意のPC1名は即座に行動手番を開始しても良い。このPCの1発目の攻撃は『回避難易度+1』の効果を得る。

ただし手番終了後、そのPCの次のイニシアチブから通常の戦闘1ターン目の処理が始まる。つまり、アンブッシュを行ったPCよりイニシアチブが速いキャラの手番はスキップされてしまう。

◇プラズマワスプとの交戦によるメリット/デメリット
◉デメリット
地下施設内の照明が消え暗闇に包まれる。このイベント以降は獲得できる進行度が常に-2される。
・電力遮断により、施設内の他のアサルトニンジャが警戒体制に入る。
・目的のUNIXコンソールが使用できなくなり、他に電力供給の手段を用意するか、物理的に基盤を引き剥がして回収する必要がある。

◉メリット

敵との交戦イベントを2回までスキップできる(万札は自動獲得)。
ボスエリアの取り巻きNPCが調査のため移動し、難易度が低下する。

◆プラズマワスプ(種別:ニンジャ)
カラテ     2  体力     4
ニューロン   3  精神力    5
ワザマエ    3  脚力     2/N
ジツ      4  万札     5
近接攻撃D:2、射撃D:3、回避D:3
◇装備やスキル
 装備   :『タクティカル・ニンジャスーツ』、『パーソナルメンポ』
 サイバネ :『▶︎クロームハートLv1』
 スキル  :『◉スリケン乱射』、『☆デン・ジツ』、『★デン・エンハンスメント』


◆シーン3:コンソールルーム(ボスエリア)

君たちは無数の旧世紀UNIXが陳列した半球状のコンソールルーム、ある種のロービット・マインに辿り着く。事前情報からして、目的地はこの部屋で間違いないだろう。しかし最重要目標である大型UNIXコンソールの前には、ミリタリー装甲装束のニンジャ2人の影があった。

この部屋ではメイライ社のアサルトニンジャ、メイライ・メディック、メイライ・トルーパーがそれぞれ2人ずつ待ち構えている。彼らは非メイライ社の不確定因子を排除するよう命じられているため、PCの意志や行動に関わらず、ここでは必ず戦闘が発生する。

ただしジェネレータールームで戦闘が発生していた場合、メイライ・トルーパーとメディックはそれぞれ1人に減少する。

このうちアクセルカタナは既にUNIXからある程度のデータを吸い出しており、相方が爆発四散するなど、戦況が劣勢に陥った場合は躊躇わずに戦闘から離脱しようとする。すべての敵を倒すか、撤退に追い込めばこのシーンは終了となる。

「ドーモ、アクセルカタナです。貴様ら、ただのロービット・マイン盗掘者という訳ではあるまい。ゴッドリーブの遣い……いや、違うな。何者だ?」LANケーブルを手首に引き戻しながらスクエア装甲のニンジャがアイサツする。「デッドリースモークです。少なくとも敵であることは間違いないな!」盾のニンジャのスーツ機構が展開し、黒煙を吐き出し始めた。

◇NPCデータ:デッドリースモーク

メイライ社のアサルトニンジャ。特殊ニンジャスーツから危険な毒煙を噴出し、屋内の敵をイチモ・ダジーンにする。閉所の突入掃討作戦を得意としており、常にチームの先頭でクリアリングを行う。

「テメェら、メイライに楯突いてタダで済むと思うなよ!」

◆デッドリースモーク(種別:ニンジャ)
カラテ     2  体力     4
ニューロン   6  精神力    6
ワザマエ    6  脚力     3/N
ジツ      1  万札     10
近接攻撃D:2、射撃D:6、回避D:6(4)、緊急回避D:4
◇装備やスキル
 装備 :『重装ニンジャスーツ(緊急回避+4)』
 武器 :『ショットガン』、『パルス・グレネード』
 消耗品:『オーガニックスシ』
 スキル:『◉頑強なる肉体』

『☆ドクケムリ・ジツ』:
 僅かに触れるだけで神経に作用する危険な毒煙を周囲に蔓延させるジツ。
 手番開始時に【精神力】を1消費し、難易度NORMALで発動判定を行う(瞬時)。
 次の術者の手番開始時まで、術者を中心とした3x3マス内で手番を終了した敵は、
 『回避ダイスダメージ1』を受け、次の手番終了時まで『崩れ』状態となる。
 
 効果が切れるタイミングで【精神力】を1消費すると、自動的に効果が延長され、
 効果範囲が最大で9x9まで毎ターン1マスずつ拡大し続ける。

『●タクティカル・シールド』:
 毎ターン開始時、回避ダイスが-2される代わりに、緊急回避ダイスが+1ずつ回復する(上限4)。
 遠隔攻撃に対して「緊急回避ダイス」を1つでも使用するとき、その回避難易度は-1される。


◇NPCデータ:アクセルカタナ

メイライ・コーポレーションに所属する、全身をサイバネ強化した企業ニンジャ。コンマ秒だけ身体をエンハンスすることにより、高速のカタナ斬撃を繰り出すアクセル・ジツの使い手。流線型の装甲は正面からの銃撃受け流し性能と、サイバネ冷却性の向上を期待されたものである。

このニンジャはPCが最初に遭遇するメイライ社のニンジャの1人であり、彼らが『概念蘇生』の正体を知る(そして自らの正体を知る手掛かりとする)きっかけとなるキーキャラクターである。

「見解の一致だな。容赦せんぞ」

◆アクセルカタナ(種別:ニンジャ)
カラテ     3  体力     3
ニューロン   3  精神力    2
ワザマエ    5  脚力     5/E
ジツ      0  万札     10
精密攻撃D:6、射撃D:5、回避D:7
◇装備やスキル
 武器  :『サイバーカタナ(カタナ)』、『バクチク・グレネード』
 サイバネ:『▶︎テッコLv1』、『▶︎生体LAN端子Lv1』
      『▶︎ヒキャクLv1』、『▷ブースターカラテ・ユニット』
 スキル :『◉常人の三倍の脚力』、『◉滅多斬り』

『●戦闘スタイル:アクセル・ツジギリ』:
 【ワザマエ】判定により『◉滅多斬り』の各種戦闘スタイルが使用可能になる。
 また攻撃フェイズ終了時、『ツジギリ』のように任意の方向に1マスだけ移動できる。


◇大型UNIXへのアクセス

PCは大型UNIXマスに隣接し、「その他の行動」として専用のフロッピーディスクを挿入できる。これは1ターン経過後にデータ吸い出しが完了し、再び「その他の行動」で回収することができる。判定は不要。

何らかの原因でPCが圧倒的不利になった場合、この作業をこなすことによって最低限、シナリオないし任務の目標を達成することができる。このケースでは例外的なシーンクリア条件として『マップ上からPC全員が離脱する』ことを許すのが良いだろう。


◇メイライ社の暗号化フロッピーディスク

アクセルカタナを撃破した場合、彼がコンソールから抽出したデータの入ったフロッピーディスクを入手できる。これはメイライ社独自のプロトコルにより暗号化されており内容の確認はできないが、アシッドウルフに渡すことで報酬の増額を得られる。

このディスクの中身は、PCが大型UNIXから抽出できるデータと全く同じものであり、シナリオの舞台となった墜落航空戦艦のシステムチェックデータ、そしてこの機体がやってきた秘密軍事基地の座標データが含まれている。

◉フロッピーディスクに収められていたのは、墜落した航空戦艦のシステムチェックデータ、そしてこの機体がやってきた秘密軍事基地に関連するデータであった。

◉システムチェックの結果、一部動力系に深刻なダメージを負っているものの、この機体の損傷率はそれほど大きくない。十全に修理すれば、あるいは再び稼働させることも叶うかもしれない。

◉フロッピーの情報によると、この戦艦は現在の磁気嵐荒野に位置する古い軍事基地からやってきたと推測される。この座標は極めて厳重に秘匿されており、何らかの重要な場所であることが伺える。

何らかの手段でフロッピーの暗号化を解読した際に開示されるデータ

ディスクの中身はキャンペーンを進行することで解析するチャンスを得られる可能性があるため、PCが個人的に所持しておくという選択肢を与えても構わない。この座標はアシッドウルフの計画にとって重要な拠点となる場所のものであり、将来的に彼と敵対するルートに分岐した場合は、このフロッピーの情報を元に襲撃を計画することが可能となる。

ただし、道中でプラズマワスプを襲撃していた場合、このデータは途中までしか抽出できておらず、座標データは不完全なものとなる。これを活用しようとするなら、将来的にデータの修復や、回収したUNIX基盤から直接データの読み出しを試みる必要がある点には注意する必要がある。


◇デスハイク

「メイカイより/再び這い上がる」「サヨナラ!」アクセルカタナは青色のLED光を放ち、爆発四散!

先述のようにアクセルカタナ(場合によってはデッドリースモークやプラズマワスプ)は、メイライ社の『概念蘇生』の正体に繋がる"当事者"たるキャラクターであり、その有り様を通じてPCも自らの正体について"定義"してゆくことになる、という重要なポジションを与えられている。

そのため、NMはそのキャラクターを印象付けるため、1人のメイライニンジャを選択し、まるで復活して再戦の機会があるかのような象徴的なデスハイクを詠ませる。事実、メイライ社のニンジャたちは何度死のうが再びPCの前に立ちふさがる。

◇難易度のオプション

PCの戦闘スタイル構成やステータスによってはボス戦闘が簡単すぎる、あるいは難易度が高すぎる可能性がある。NMは次のオプションを任意で採用し、適時バランスを調整しても構わない。

オプション1:生存している場合、プラズマワスプを増援として登場させる。直前のターンには予兆として照明が消え、電力供給で【精神力】を幾らか消耗した状態で現れる。

オプション2:PCが著しく劣勢の場合、アクセルカタナは彼らを無軌道なサンシタとみなし撤収する。代わりにメイライ・トルーパーの増援が登場し、デッドリースモークと連携して攻撃を仕掛けてくる。

◆結末

アサルトニンジャが爆発四散するタイミングでメイライ社は撤収を始め、フジサンの樹海は静寂を取り戻す。同時にPCたちは敵の首級をあげたアシッドウルフと再び合流することになるだろう。

彼はPCの戦果によって称賛あるいは叱咤の声をあげ、アジトへの帰還を促す。


◉全ての目的を達成した場合:「上々の戦果だ。メガコーポの連中もしばらくはここに近寄らないことだろう。電子戦争時代のオバケか何かが出ると言ってな。行くぞ」

◉敵を取り逃した場合:「忌々しいメガコーポのハイエナ共め。顔を知られたな?今後は奴らに直接狙われる可能性を頭に入れておけ。そして次は殺せるよう、俺が鍛え上げてやる。行くぞ」

◉UNIXを基盤ごと回収した場合:「多少手間は掛かるが……まあ良い。メガコーポの連中もしばらくはここに近寄らないことだろう。電子戦争時代の
オバケか何かが出ると言ってな。行くぞ」

エピローグ

耐え難い潜伏生活から前線へと引き戻された鷲のニンジャたる君たちは、四方を敵に囲まれながら過酷な任務へと挑む。〈鷲の一族〉の再興という崇高な目的はその胸を締め付け、同時に心を昂ぶらせるだろう。しかし今日という日はこれから訪れるであろう苦難の入り口に過ぎない。未来はまだ、見えない。

シナリオ締め括りの描写

◇報酬(PC1人あたり)

基本報酬 :万札15、余暇4日
アクセルカタナのフロッピーディスクの提出 :+万札5(人数分)

※撃破したキャラクターの所持万札は除く。
 調整したい場合、所持万札のドロップを無しにして想定獲得分を基本報酬に加算する。
◇名声の獲得
 デッドリースモーク&アクセルカタナの両者を爆発四散させた:+1
 目的を達成しデータを回収した:+1


補足コメント

『ブレイン・ウォーフェア』というシナリオタイトルは、ジャーナリストのエドワード・ハンターが1951年の著書で用いた「脳の戦争(brain warfare)」という表現に由来しています。これは「中国共産党が捕虜に対して思考改造を行っている」というCIAの報告に対して、「"洗脳"はもはや精神的なプレーン上における(精神の支配権を争い合う)戦争である」というニュアンスで用いられた表現です。このシナリオではそのフレーズを、本作から始まるメイライ・コーポレーションとブラックサイトの争いが、互いに洗脳した第三者を兵隊として用いたものであることを暗に示すタイトルとしてお借りしました。

『フォールス・ウインター』シリーズの各タイトルについては、簡単な命名ルールが定められており、洗脳による鷲のニンジャとしての使命が主体となるシナリオだけは「オペレイシヨン・■■■」といったタイトルになるという規則性があります。本作が『オペレイシヨン・ブレイン・ウォーフェア』ではないのも、この段階でプレイヤーキャラクターたちは完全に洗脳され切っているわけではないことを表しており、突然状況に放り込まれるこのシナリオを通じて彼らは洗脳と陰謀の深みに嵌っていくことになります。

ゲーム部分もそれを象徴するような構成となっており、例えば最初のシーンではマップを半ば強制的に左から右に進まされますが、これは『自らの意志に関係なく画面が進む』横スクロール系のシューティングゲームのイメージを『洗脳によって無自覚に特定方向に誘導されている』事実に対応させています。そうして辿り着く地下ダンジョンは具体的なマップが存在しない迷宮となっているわけですが、これは(迷宮を脳に例え)「物理的のみならず精神的にも先の見えない状況へと迷い込んでしまっている」という状況を暗示するものでした。

なお当初のプロット案では、このシナリオの時点で既にアシッドウルフがメイライ社を抱き込んでおり、本シナリオにおける戦闘シチュエーションそのものがプレイヤーキャラクターの洗脳を完成させるためのセッティングに過ぎないという内容になっていました。いずれにしても、プレイヤーキャラクターたちは象徴的な要素を多く含むこのシナリオを介し、メイライ社との関係を通じて陰謀へと絡め取られていくことになるのです。


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