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SNSで効く文章のコツを暴露します

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どうもトムです。

2019年は最高でした。業界関係者からSNSタレントまで、超色々な方と知り合えました。

それはひとえに文章を書いてたからだと思います。なので今年最後、それらしい終わり方として、「文章」という大きなテーマについて考えてみたいと思います。

ちなみに僕は「文章力」というものはないと思っています。僕は一応コトバの専門なのですが、人間は言葉尻より背景文脈に注意を払っていることが分かっています。専門用語で言えば、統語(syntax)や意味(semantics)より、文脈(discourse)が重視されます。

これが何を意味するか。僕らが心を動かされるとしたら、権威や著者ブランド、心理学や構成力なんです。僕がこれまで編集という仕事につきながら考えてきたこと、今年使ってきたライティングのTIPSを種明かしします。

認知的不協和(ネーミングとタイトル)

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人は意味が分かりそうで分からないものに注意を払います。気持ちが悪いからです。認知的不協和と呼ばれてるアレです。

要するに、人の頭の中にある固定観念に働きかけるということです。

例えば、これを巧みに使った例が『嫌われる勇気』です。今でこそ当たり前に聞こえちゃいますが、初めて聞いたとき僕は驚きました。「勇気」ってネガティブな言葉に「嫌われる」っていうポジティブな言葉をつけられると、書店の棚の前に立ち止まって「ん!?」ってなりませんでした?逆に『立ち向かう勇気』だったら普通すぎて見過ごされちゃうんじゃないでしょうか。

多動力』も同じです。「あの子、ちょっと多動気味だよね…」みたいな感じで「ADHD」のようなネガティブ文脈で語られていた言葉を「力」で陽転した。こういう気持ち悪さがいいんです。

○○の教科書』という題もよく使われますが、アレは「教科書」という”硬派”や”真面目そう”という印象を持っているものに、ちょっと「遊んでる言葉」をくっつける。逆に『法律の教科書』だったら売れたでしょうか。うーん…、売れなそうですね。『おひとり起業の教科書』。これなら手に取ってみたくありませんか?

「ネガティブなもの」に「ポジティブなもの」を加えたり、「正統派なもの」に「奇抜なもの」を組み合わせる。人間がそもそも持っている固定観念やフックを利用して、それを歪ませる。

これは、典型的な認知的不協和の起こし方で、出版業界では極めて王道的なタイトリングです。

注意を払うに値するものしか見ない

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僕はよく文章の冒頭に「どうも、天才です」と書くんですが、ぶっちゃけるとあれは人の注意を引こうとしてるんです。

驚き(surprise)がないものは読まれない」と天才コピーライターのジョン・ケープルズも言っていましたが、今ほどコンテンツに溢れている時代は人類史上ないはずです。なので、ケープルズの生きた時代よりも注目コストが高い。アメリカには「タイトル専門のコピーライター(headline writers)」がいるくらいで、彼らは記事内容を見てベストなタイトルを考えるのが仕事です。それくらい冒頭で気を引くのは大事なんです。

天才なんて言われたら「え、こいつ何言ってんの?」ってなるじゃないですか。僕だったらなります。だから情報が次から次へと流れ楽しいことがいっぱいのタイムラインの中でも読む気になる。

「もちろん驚かせるだけ驚かせ、気にならせるだけ気にならせておいて、肝心の内容はショボい」っていうのは最悪だと思います。広告やらLPでそれやると「スパム」とか「釣り」と呼ばれます。

この仕事やってるとマジで思うんですけど、人間は「基準値」で物を考えます。結婚式のお包みで言えば、一般的には相場3万円と言われる中、1万円だったら「安い」となるじゃないですか。でも、実際には1万円というそこそこのお金をくれている事実は変わらないので、本来超ありがたいはずんですけど。でも一般的に、絶対値に意味がないんです

かならずどこかに基準値の錨が下されていて、そこと相対評価する。なぜ鮮烈デビューした作家や映画監督の作品の、二作目が酷評されるのかというと、期待値が跳ね上がってるんです。

期待値に対して高いか低いかで人間は評価を変えます。ハードルを上げてそれを大きく下回るものを出したら、それはスパムとされます。なので、人の期待値をどこに設定するかを心得ておくというのは極めて大事です。

広告とは顧客と長期的な関係は築かないですが、SNSではフォロワーとの関係が継続して続いていきます。なので、読む人を失望させるようなものを気を引くためにコピーの力を乱用するのは良くないですね。ただ、コンテンツが良ければ、ちょっと釣りっぽい書き方でも、むしろ感謝されるので大丈夫だと思います。

数字と固有名詞

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友達がとある有名雑誌の編集部にいるんですが、彼は「数字と固有名詞が載っている情報に価値がある」と言ってました。つまりそれらがなければ、良いコンテンツじゃないということです。

固有名詞や数字が沢山詰まった資料は、常に持っておきましょう」ということです。これは文章というよりどっちかっていうと習慣ですね。

作家の方ってよく国会図書館こもってますよね。僕は仕事中Slackで著者さんとやりとりしてると、よく「今国会図書館なのですぐに確認します」と送ってくれます。僕も入館カード持ってますけど、あそこって日本のISBNついてる出版物は全部蔵書してくれてます。書店流通となるとWEBよりオーソライズドされた情報が求められるので、事実確認が極めて重要になります。下手したら訴訟されますしね。

国会図書館まで足を運ばなくても、資料集というものは携帯しておくほうがいいです。例えば、『業界四季報』『業界地図』『世界統計年鑑』などは必需品です。それから官公庁が公開しているExcelやPDFは、DLしてノートPCのフォルダに放り込んでおくと、そういった出典にすぐにアクセスできます。

ページをめくらせる原動力を作る「余白」

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本を読ませる力は「謎」によって生まれます

「これどういうことなんだろう」という疑問を常に感じさせることが、ページを捲らせる原動力になるんですね。現代人は読む力があきらかに下がっているので、スマホ通知がなればつまらないものは「やーめたっ」と投げ出されてしまいます。

記事タイトルで『不動産投資で利回り20%を実現する6つの条件とは?』のようなものを見た方も多いかと思います。心理学では「ツァイガルニック効果」などと呼ばれたりしますが、人は断片的な情報を与えられると、その欠けている部分を埋めようとするんです

この方法で成功した海外ドラマが『LOST』です。無人島に飛行機が不時着して、登場人物たちがサバイバル生活をすることになるんですが。毎回のシーズンの終わりに感情を揺さぶるレベルの強烈な「謎かけ」が仕組まれている。

シーズン1の最後では、無人島のはずなのに、森の中に地下に繋がるポッドの入り口が見つかる。その中には島を制御するカメラや装置が置かれたコントロール室があったり…。ここで強い「えっ!なんで…」を想起させます。

文章もまた同じで、次の展開への「余白」を残しておく構成作家的な能力が求められる、ということです。これは単に言葉のチョイスが巧いとか、描写の使い方が上手だとか、レトリックを超えた話です。

リーチとコンバージョン

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コンテンツのマーケティングにおいて、考えるべきは「リーチ」と「コンバージョン」です。この二つはマーケの本質を突いていると思います。

リーチとは「どれくらいの人に届くか」、コンバージョンとは「どれくらいの人が反応するか」と荒く定義しましょう。コンバージョンの率は狭めれば狭めるほど強くなります

「新宿アルタ前をご通行のみなさーん」と声をかけても立ち止まってくれる人少ないはずです。でも「新宿アルタ前をご通行のポケモンGO大好きの会社員のみなさーん」といったら止まってくれる人の率は確実に上がるでしょう。

だから「狭める」ということは、関係のない人を切り捨てる代わりに、関係のある人には「あ、自分のことかも」と反応させる特殊な心理効果があるんですね。多くの場合、リーチ(対象)を広げると、コンバージョン(反応)は下がり、コンバージョンを優先すると、リーチは代償として諦めざるを得ない。これらは多くの場合、トレードオフです。

これで成功しているのが、ディスカバーさんの新書シリーズ、小宮慶一さんの『ビジネスマンのための〇〇力養成講座』ですね。累計100万部超えの人気シリーズです。この本が上手なのは、ビジネスマンに対象層を絞って、色々なジャンルを教えていることです。『ビジネスマンのための数字力養成講座』とか。

「ビジネスマンのための」と言われることで、普段数学や統計の参考書なんて絶対買わない人も「はっ」として買ってくれるんです。特定の層に狭めることによって「数学」というジャンルも、特別な付加価値を出すことができます。

でも、ただ単に狭めればいいというわけではありません。「肺のマイナーな病気」に関して知りたい人は全国500人くらいしかいないと思います。特定の医学コミュニティにとっては絶対に無視できない内容でも、普通の自己啓発書や教養書買う人には届きません。

意味もなく狭めても市場が限定され、売れなくなるだけです。高価格帯の専門書の版元とかで、最初から狭いマーケットを見て、一般層を全く見てないところとかがあります。大学の教授とかが著者で。こういうものはどうしても、ベストセラーは狙いにくいです。

僕の知ってるとある編集者は「切ってるようで切ってない」という作り方がうまいです。事情で書名は出せないですが、別の例でこれをわかりやすく説明しましょう。「朝専用缶コーヒー」って昔ありましたよね。

これって朝に飲む缶コーヒーとうたって、夜飲む人を切り捨ててるんですけど、消費者データから「コーヒーはほとんど朝に飲まれる」ってわかってるんですよ。夜飲んだら寝れなくなるじゃないですか。で、大ヒット!2002年の発売からたった2ヶ月で年間販売目標の400万ケースを突破したそうです。

こうやって狭めてコンバージョン力を上げつつ、リーチは実はあまり変わっていないというケースは最強です。切ってるようで切っていない。これが最強のコンセプトです。

ストーリーの威力(読了率を296%、滞在率を502%上げる)

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以前僕は、ビジネス戦略としてのストーリーガイド『Wired For Story』という本を紹介しました。あの本でLisa Cron氏が言っているのは、人間の脳は認知心理学的に「物語」を処理しやすくできているということです。

人間の進化にとって物語は必要不可欠です。なぜなら、自分ひとり一個体で経験できることの数には限りがある。だからこそ他人の体験をインプットして生存率を上げてきた。あの洞窟には虎が住んでいて仲間が食われたとか、あのキノコを食べるとお腹を壊すとか。

そもそも我々は、概念的・抽象的な情報を処理するようにできていないようです。単純な説明より、「主人公がいて彼/彼女がどういった経験をするのか」という「人軸」のコンテンツを自然に吸収する、ということ。

ブログの書き出しがストーリー(narrative)になっているかどうかで、最後まで読む人が297%増え、平均ページ滞在時間が520%上がったとの調査もあります。ストーリーコンサルタントなんて職業が成立してしまう米国に比べ、日本ではその力が過小評価されているということです。

(Groove HQ. "The Power of Storytelling: How We Got 300% More People To Read Our Content")

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