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現代社会で”攻める”ための知識が書かれたビジネス書10冊(NO.121-130)

どうも、トムです。

毎月恒例のおすすめ書、10冊。今回は「攻めるための本」と題して、リスクを取ったり、お金を使ったり、商品を作るうえで、役に立つ知識・考え方を教えてくれる本を紹介しましょう。

このテーマで取り上げたい本は山のようにあるんですが、特に刺激的な10冊に絞りました。紹介しそびれたものは次回に回します。

ジョブ理論

この業界で働くようになってから結構経ちますが、それまで読んだ本で一番仕事に役立った本です。同じ著者の『イノベーションのジレンマ』が守りの本だとしたら、『ジョブ理論』は攻めの本です。要するに、巨人を打ち倒すイノベーションをどうやって起こすかを書いています。

そしてその方法は、「区切り方を変えること」だと言っています。どういうことか簡単に説明すると・・・、本書では「ミルクシェイク」をどう売るかについて冒頭で議論されています。

ところで、「ミルクシェイク」を何のための商品だと位置付けますか?

最もすぐに思いつくのは、「飲み物」です。それはのどの渇きを潤すものとして、コーラやオレンジジュース、水などがライバルになります。しかし、著者が提唱する”ジョブ理論”によれば、「飲み物」はあくまで一つの側面にしかすぎないということです

著者が過去に担当したプロジェクトで顧客を調査したところ、ユーザーはミルクシェイクを「車通勤の暇つぶし」「昼食までに空腹をまぎらわすもの」「父親から子供へのちょっとしたご褒美」といったニーズが多かったのです。

ジョブ理論では、これらの細分化されたニーズを「ジョブ」と呼びます。それぞれの役割(ジョブ)に対して、ライバルは変わります。例えば、車通勤の暇つぶしだったら音楽かもしれないし、オーディオブックかもしれない。空腹をまぎらわすものだったら、スニッカーズやクラッカーでもいい。子供への小さなご褒美だったら、玩具やお菓子が競合になりえますね。

商品はそういったジョブの集合体なのです。そして、既存のカテゴリを破壊する画期的な商品を作るためには、ユーザー行動を徹底的に観察し、その商品が持っている重要なジョブを理解し、意味づけを変えることが大事だと言っています。それこそが著者がさんざん言ってきた「イノベーション」である、と。

私自身、経験がありますが、人は目先の言葉(カテゴリー)に騙されるんですよ・・・。類書、類書と本ばかり調査しますが、この本を読んで思わされたのは、実際には同じ市場には競合がいないかもしれない、ということです。本ですらないのかもしれない。例えば、資格本なら、競合は今やスクールやオンライン講座です。

鈴木孝夫の名著『ことばと文化』でも書かれているように、言葉は「区切る」という機能があります。しかし、その「区切る」という力によって本質が見えなくなるのです。高度情報化社会において、人は「言葉」という武器を使って情報文明を築きましたが、我々は「言葉」によって自分自身さえも騙してしまい、物の本質を見れなくなっています

ゼロから商品企画をする人にとってこれほど役に立つ本はないと断言できる名著です。

調べるチカラ「情報洪水」を泳ぎ切る技術

僕が大学院に入る前に、読みたかった本No.1。日本の学校教育では、「知識」は教えてくれるのに、「知識の探し方」は教えてくれません

強いて言うなら、大学でペーパーを書くときに、素晴らしい指導教員に巡り合えるかどうかで決まると思います。そのため、コンサルタントや調査員、作家、企画職、研究者など、知的生産のプロフェッショナル達が、職業教育として身につけている「調べる力」は、ほかの職種では人によってまちまちだったりします

本書はそのような学校教育に欠けている「リサーチ能力」を埋めてくれる良書。著者は知財情報コンサルタントという面白い肩書を持った、野崎篤志さんで、シンクタンクを渡り歩いたリサーチのプロ中のプロです。

知的生産物では基本となる情報の分類・整理(1次情報と2次情報、フロー情報とストック情報、事実と意見・解釈)、情報ネットワークの3種類、インターネットで調べる方法とツール、インターネット外で調べる方法とツール、調べる力を高めるための習慣などなど…。

数ある知的生産系の本でもなぜこの本をあえて勧めるかというと、めっちゃ具体的で実用的だからです。「Googleアラート」「CiNii」「JETRO」「Keizai report.com」「Yahoo!カテゴリ」など、かなり詳細なツールの話を入れてますね。この手の知的生産本って梅棹忠雄先生や加藤昌治さん、ジェームズヤング、バーバラミントの著作ようにロングセラーが狙えるので、多少具体性に欠けても、陳腐化するWebツールの話なんて入れないほうがいいんですよ。案の定、この本今は全く売れてないですけど、ツールの話がある分、おかげで実用的です。

ずいぶん前に読んだ本ですが、書評を書くために読み返したところ、僕も「情報洪水に流されている」状態になっていることに気づかされ、耳が痛かったですね。自分の情報リテラシーを改めて見直す意味でも、知的生産で人より抜きんでる意味でも、良い啓発書になると思います

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