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芸人が失ってしまったもの

アンジャ渡部 大みそか「ガキ使」出演部分“お蔵入り”へ…日テレ、世間の批判考慮

渡部建氏が2時間近くに渡り記者会見をし、記者からの執拗な虐めにより、会見での不手際が炙り出された。日本テレビは、「世間の批判が根強いことを考慮し」渡部氏が大みそかの「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」特番に出演した部分だけをお蔵入りすることで調整している。

最も駄目な方向で話が集結しつつある。もし同じことが25年前に起こっていれば、全く別の結末を迎えていたはずである。

25年前の1995年、急速に売れつつある芸人の渡部建氏が不倫をした。(25年前なら、不倫が面白おかしくマスコミに料理されるだけで、問題視されることはなかったが、不倫が現在と同じように、社会的問題としてその芸人のキャリアを終わらせるぐらいの圧力があるものだと仮定する。)渡部氏のプライドが邪魔をして、すぐに謝罪会見をすることができず、半年が過ぎる。復帰の仕事として番組を収録をしたが、謝罪会見をせずに復帰をするのは、不適切だという世間の声が増大し、急遽謝罪会見をする。

その場に現れたのは、不倫をした芸人本人と収録した番組に参加した芸人10名、番組制作スタッフ1名、芸人が所属する事務所の社長、計13名。
記者からの質問が次々に浴びせられ、「なぜ番組を収録した後で、謝罪会見をするのか?」という質問が来る。渡部は「不倫後に、週間文春からインタビューのオファーが来て、事務所と協議して、インタビューに応えました。インタビューに応えたことで記者会見の代わりになり、事態は収束すると甘く判断しました。」と答えるも、記者と会見視聴者は納得せず。「もう普通に仕事をしてもいいんだという判断をしたのか?」と記者が畳み掛ける。渡部は「番組のことについては私の口からは言えません。」と言い、下を向く。カメラのフラッシュが一斉に点く。

ダウンタウン浜田が答える。
「うちの年末の番組では、サプライズでゲストが登場して、番組を盛り上げるのが恒例となっています。だから渡部がゲストとして収録に参加したなんて、私の口からも言えません。ただ、プライドの塊の渡部が、謝罪会見ができなかったにもかかわらず、仕事をしたのは事実です。僕らも渡部可愛さに、そして自分可愛さに渡部に仕事をさせてしまいました。そのことについては僕らも一緒に謝らさせて下さい。僕らにも責任があります。ほんま、すいません。(他の芸人も一呼吸遅れて、すいませんと言い、頭を下げる。)
渡部は事務所こそ違いますが、同じ芸人です。仲間です。仲間の後輩の面倒を先輩である僕らが見るのは当然です。渡部がもうしょーもない失敗をしないように、僕らが面倒見ます。僕らが渡部のおかんになります。ガミガミ言って渡部をしばき倒します。ですんで、今回の件は、堪忍してやって下さい。ほんま、お願いします。」

記者が質問する。
「確認ですが、渡部さんが仕事をされたということを認められるのであれば、番組名を出して頂いても良いのではないですか?」

浜田が答える。
「年末にも何個か仕事をさせてもらってますけど、『うちの年末の番組では、サプライズでゲストが登場して、番組を盛り上げる』と言ったら、もうひとつしかないでしょ。しかも今日来ている芸人のメンツ見たら、分かるでしょ。もうバレしまってるからどうでもいいことですけど、ほんま、サプライズは大事なんですよ。サプライズひとつで視聴率が大きく変わってくるし。」

ダウンタウン松本が続く。
「ゲストの1人がもうバレしまったんですが、他にも大勢のゲストはいますんで、サプライズはあります。ですからマスコミの皆さんは、「今年のガキ使はサプライズなしで、かすっかすの番組や」とか書かかんといて下さいよ。」

浜田
「もう言うてもうてるやん。」

松本
「もう番組のことなんか、どうでもええやん。ついでに言えば、渡部がこれ以上モテることには反対やし。」

浜田
「ここで、何言うとんねん。」


1995年に謝罪会見が行われていたら、上記のような流れで芸人と事務所が一丸となって謝罪し、渡部氏の失態をフォローしたはずである。視聴率や会社の都合を気にせず、常識人がしたくてもできない破天荒さを会見で見せつけていたことだろう。しかし、今年の謝罪会見では渡部氏ひとりが全ての重荷を背負い、番組から消され、トカゲの尻尾切りにあった。
いつしか一芸人が会社の利益を考えるサラリーマンになり、視聴率という売上のことを優先するようになってしまう。下がりつつある売上を今以上に下げないためには、損切りをする必要がある。しかし、その損切りの方法が、会社にとって最も重要な芸人を切るという最悪の方法となる。そしてその方法が、最悪の方法であることに気がつかない。

若い頃に見続けた芸人が成功したにもかかわらず、成功の先に見せる姿は、見るに堪えない。これは避けられないことなのか、避けられたことなのか。

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