ロックの誕生と、エトセトラ。


発明家のエジソンは、1847年にアメリカで生まれ、
じつに1300もの発明と技術革新を行い、1931年に84歳で亡くなった。
録音と再生を兼ね備えた蓄音器や、白熱電球など数多くのモノを世に送りだした人物だ。

エジソンが誕生した頃の日本はというと、
1853年にあの有名な黒船に乗ったペリーが来航し、開国した江戸時代だった。そして、そこから50年近くの時が経ち、1914年-1918年には第一次世界大戦。それから21年後、1939年-1945年には第二次世界大戦が起こった。

さて、ロックの誕生はというと、
第二次世界大戦が終焉に向かっていた1945年頃のアメリカ南部とされている。アフリカ大陸からアメリカ大陸へと連れて来られた黒人奴隷は、1862年のリンカーン大統領の奴隷解放宣言(この頃の奴隷解放は宣言のみで実際の奴隷解放には至っていなかった)から時を経て、1945年の戦後、公式的な奴隷解放により、白人の奴隷主から解放され、自由を獲得していくも、黒人は小作農として雇われていた。しかし、実際には人種差別による黒人への差別は横行していた。そんな中、今までは教会で神へ捧げる祈りとして歌うことを許されていた音楽に、労働の苦しさや、差別的社会に対する想いを歌った娯楽として、"ブルース"という新たな音楽のジャンルが誕生したことがロックの始まりだと言われている。

そもそも、音楽の誕生は...というところを遡ると、
紀元前のウン千年前、古代文明の誕生前よりもさらに遡り、おそらく歌声から始まり、手拍子や、打楽器、やがて笛などが誕生したのではないかと言われている。また、音楽というのは、ヒト以外の動物には、ほぼ存在しないカルチャーである。(鳥類や海獣類にもわずかばかりあるとされているとか)

そんな音楽の誕生からウン千年と経ち、西暦1400年頃より、
日本ではクラシックミュージックとして親しまれている、
ルネサンス音楽(1400-1600年頃)や、バロック音楽(1600-1750年頃)、古典派音楽(1750年以降)、ロマン派音楽(1800年代頃)からなる西洋音楽が歴史に刻まれている。音楽が歴史に記録され残されている最古のモノが西洋音楽とされている。(←もの凄くざっくりいうと)
文明の発展とともに、信仰が誕生し、教会などで神へと捧げる祈りの賛美歌だった音楽は、1400年頃より多くの作曲家によって発展し、多くの演奏家、声楽によって奏でられていた。そして、1600年頃、劇中歌としてオペラ(歌劇)などが盛んになり、ヴィヴァルディなどの作曲家が次々と名声をあげる。なかでもバッハが有名なバロック音楽の背景には、絶対王政とカトリック教会という、絶対的な象徴を世に見せつけるための音楽として、賛美歌と替わりダイナミックさが特色とされていた。やがて、1700年代半ば頃から、商人などが力を持つようになり、啓蒙思想(けいもうしそう:絶対主義の体制下にあった人たちが、科学の発達や思想の変化によって、神や神への信仰の代りに、心のよりどころを人間の理想に求めようとした思想)が広まり絶対王政というバランスが崩れていく。そんな歴史的背景のなかで誕生したのが古典派音楽といわれる、モーツァルトハイドンベートーヴェンなどの音楽家である。そして、1800年代になると、調和や中庸(ちゅうよう:極端な行き方をせず穏当なこと)を大事にした保守的な古典派よりも、もっと個人の人間性を尊重するロマン派音楽が広まっていった。ロマン派音楽では、シューベルトや、ショパンなどが歴史に名を刻まれている。

 つまり、動物のなかでも人類のみに存在する音楽は、紀元前に存在していたとされ、やがて、神への祈りや、捧げるための賛美歌として発展していき、1400年頃に西洋音楽として歴史に刻まれはじめ、神へ捧げる音楽は、《1》絶対王政を象徴とするバロック音楽へと発展した後に、《2》絶対王政のバランスが崩れ保守的な古典派音楽へと発展し、やがて、《3》人間性を尊重するロマン派音楽へと発展していった。

 その頃、クラシックと対比して、広まっていったのが民俗音楽(=民謡、民族音楽、ポピュラー音楽)である。民謡とは、主に口承によって受け継がれた歌の総称とされている。簡単にいうと、上層階級の芸術音楽(=クラシックなど)と一線を画し、民衆のなかで口承によって受け継がれ、広まったとされる歌のこと。日本では、”ソーラン節(北海道)”などがあり、日本発祥ではないが、”きらきら星(フランス)””こぎつね(ドイツ)”など、誰もが口ずさめる音楽が世界各国に数多く残っている。この民謡から1960年代に発展していったのが”フォークミュージック”である。


さて遡りすぎたが、ロック誕生へと戻る。

と、その前に...
1945年頃、ロックの起源、ブルースの誕生と発展に欠かせないのが、これもまた急速に発展していった、市販LPレコードの販売や、テープレコーダーの登場である。
1877年にエジソンによって発明された蓄音器は、1945年には "音楽" を録音、再生できるという技術発展をし、1945年代から音楽が楽譜による記録や、演奏家による演奏(再生)ではなく、録音データとして、一般社会へと普及し、流通、商業化していくことになる。

ちなみに、その頃の日本はというと、1945年に第二時世界大戦が終戦。
1949年には、美空ひばりが12歳にしてデビューを果たし、15年後、1964年には、アジア初で史上初のテレビの衛星中継が行われた東京オリンピックが開催していた頃だ。

さて、戦後の南アメリカで誕生したブルースを現在の音楽シーンへと発展させるのに最も貢献した人物がいる。それが、アラン・ローマックスである。アラン・ローマックスは、父であるジョン・ローマックスとともに、アメリカ南部の黒人社会のなかで、ブームメントを起こしていたブルースを数多く、録音、収集していき、白人社会へと拡散していった人物である。彼が録り収めた数々のレコードは20世紀の膨大な音楽遺産として保管され、音楽学、民俗学においても数多くの貴重なレコードを残し、20世紀の偉大なフィールド・レコーディングの賢者であると称されている。

そんなアラン・ローマックスが出会ったロックン・ロールの創始者と言われるのが、チャック・ベリーや、リトル・リチャードファッツ・ドミノらである。当時の既存の音楽を進化させ、新しい音楽として台頭していった人物である。

チャック・ベリーはというと、1926年にアメリカで生まれ、80歳を超えてもステージ活動を続けた偉大なるミュージシャンであり、ギタリストである。のちに彼は、ビートルズのジョン・レノンに「ロックンロールに別名を与えるとすれば『チャック・ベリー』だ」と敬愛されるほどであった。2017年、90歳で亡くなっている。1958年にリリースされた『Johnny B. Goode』は音楽好きならば一度は聞いたことがあるはずだ。



リトル・リチャードはというと、1932年にアメリカで生まれ、実の父に同性愛者であったことが理由で白人の家へと養子に出されるも、1955年のデビューから数多くのヒットを飛ばした偉大なるミュージシャン。これまたビートルズのポール・マッカートニーが色濃く影響を受けている。1957年、人気の絶頂期のなかで突如引退を発表するも、1962年にロック歌手として復帰。そのときの復帰ライブで前座を務めたのが当時無名なビートルズだった。その後、2013年9月に引退。

そしてファッツ・ドミノは、1928年にアメリカのニューオーリンズで生まれた。本名はアントワーヌ・ドミニク・ドミノ。ブギウギの影響を受けた独自の "ピアノ演奏" でブルースを歌う黒人ミュージシャンである。1970年代の終わりまでのレコード売上枚数の累計が、エルヴィス、ビートルズに次ぐ第3位である。盲目でソウルミュージックを歌うピアニスト、レイ・チャールズも影響を受けたと言われる甘く滑らかで洗練されたバラードが特徴的なブルースピアニストのチャールズ・ブラウンからの影響を受け、ドミノは独自の演奏スタイルになった。そして、2017年に亡くなった。


やがて、そんな黒人ミュージシャンたちを真似て、白人たちの中にもギターを持ち出す若者が現れる。そのなかで、後に「世界史上最も売れたソロアーティスト」のトップ。「キング・オブ・ロックンロール」と称され名を轟かせていったのが、エルビス・プレスリーである。

さて、1960年、ここからロックン・ロールは飛躍していく。


1950-1960年にかけて、偉大なロックンロールを発展させた
ロックの殿堂入り受賞者たち。

● チャック・ベリー(1926-2017):
US
最初期のギター・ヒーローとして慕われる、黒人ギタリスト。
リトル・リチャード(1932-):US
The Beatlesが前座を務めるなど影響を与えたロック創始者の一人。
ファッツ・ドミノ(1928-2017)US
ブギウギの影響を受けたブルース調スタイルの黒人ピアノニスト。
エルヴィス・プレスリー(1935-1977):US
20世紀後半のポピュラー音楽の中で、最初の大きなムーブメントを引き起こした、世界史上最も売れたソロアーティスト。
ジェームス・ブラウン(1933-2006)US
ファンク・ソウルミュージックの黒人シンガー。
レイ・チャールズ(1930-2004)US
盲目のソウルミュージックを歌う黒人ピアニスト。
サム・クック(1931-1964)US
ソウル歌手、ゴスペル歌手、ミュージシャン。
エヴァリー・ブラザース(1937-2014)US
兄弟による美しいハーモニーが素晴らしいカントリー調のデュオ。
バディ・ホリー(1936-1959)US
ザ・クリケッツを率いてバンド活動もしていたロックミュージシャン。
ジェリー・リー・ルイス(1935-)US
別名:The Killerで親しまれたロック・カントリーミュージシャン。


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