6.29

「いい大学に入りなさい、公務員になりなさい」と、おばあさんに小さい頃から言われ続けていた。

僕はこれまでずっと、無意識でやりたいことを押し殺してきて、たくさん遠回りをしてきた。

秋田県に生まれて、世界の文化に触れる機会がなかった。

アートやデザインも、美術の教科書で見てずっと気になっていたが、どこか遠い世界のものだと思っていた。

今なら秋田でクリエイティブな仕事をしている人を知っている。

高校生くらいまで、僕の人生に現れなかった
だけだった。

その頃は野球をしていた。

部員に課せられていた野球ノートには、プロ野球選手の打ち方についてや、日記を書き、表紙には中学校で使った、美術の教科書からの切り抜きをたくさん貼っていた。

多くの同級生がA4のノートを使う中、数学の課題の提出のために、捨てられるはずの小さな裏紙を使って、紐でくくって提出したら怒られた。

父親に、任天堂で働きたいと言ったら「仕事をなめるな」と言われた。

父親が印刷会社に勤めていることを知っているが、一度も仕事について話してくれたことはない。




今、イタリアにいながら生まれ育った秋田という場所、幼少期のコンプレックスを自覚する。

いつか、秋田でクリエイティブな仕事をしたい。

そのためには、今、仕事に向き合うことが必要だ。

小さい頃の自分のような誰かに届くことを信じて。





I believe there is hope in design. Design evokes surprise and joy in people.

デザインには希望があると信じています。人々に驚きと喜びを与えるのです

三宅一生

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