ブラジャーはかせは言った。

近年、ブラジャーの価格が上昇傾向にある。

それはブラジャーの素材原価の高騰に加えて、ブラジャーの競争率が高くなっていることを意味する。

きっと今、この世界に存在するブラジャーは、絶望に瀕している。

若者の夢と、おじさんの欲望が、全く見たこともないブラジャーを生み出すだろう。

たくあん、コンクリート、どんな素材だろうと、僕はお金を稼ぎたい。

あらゆるものがブラジャー作りのインスピレーションへと変化する。

倒産を恐れず、ブラジャーひとすじで歩んできたこの70年。

けっして、むだな人生ではないと自信を持って言える。

息子はブラジャーをつける側になった。

つまり、ゲイになったということだ。

そのような人生における決断が、誰も見たことのないブラジャーをうむ。


おっと、時間だ。

今日はパンケーキをつくるために、ブラジャーをリメイクした皿を使っている。

おーい、どうだー?


最近の若者は、ブラジャーを軽んじている。

万物の基本原理として、ブラジャーを主張した僕に続くものはいない。

後継者は誰にしようか。


そうだ、ブラジャー蒐集家の村上勝にしよう。

彼は自宅に1万を超えるブラジャーを蒐集している。

彼の展示は、米国のアーム・ブラジャーについで世界2番目の規模をほこる。

彼らは、世界1、2を争う変態だ。


彼のコレクションの中で僕が最も好きなのは、水素ブラジャーだ。

はちきれそうな胸を覆うブラジャーを作るために、

水素とハイドロキノンと、さめの爪を使用している。

村上氏のデザインしたブラジャーは端正だ。

卓越した腕前と、スケベな精神が世界の理。


おっと、パンケーキが届いた。

村上氏の白髪はかくし味で。

パンケーキのかくし味で思い出したのだが、

ブラジャーにはたくさんの味があるのはご存知だろうか。

私は、数々のブラジャーを食してきたが。

ブラジルのが1番美味しかったのを覚えている。

甘いサンバと、サッカーグラウンドの熱が詰まった”宝石”と称したい。



一般的に、余りもののブラジャーはおいしくないと言われている。

しかし、わたしはそう思わない。

熟した果実にしかない輝きを見せてくれる。

出力が大きい胸のダイナミックさには及ばないが、日本古来の精神、

「もったいない」ならぬ

「ブラジャない」だ。

ブラジャーは余ってはいけない。

つねにおっぱいとのスキマを哲学してこそ、食の美しさを知れるのだ。

「ブラジャー伝記」END

次章「車と私」へ続く⤵️



あとがき

この恐ろしい物語は、退屈な授業中に、友人Sと一文ずつ交換しながら制作した。

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