【ニュートラの学校レポート&アーカイブのご案内】12/10「A5労働と対価」

「ニュートラの学校」は、4年目となったNEW TRADITIONALのとりくみが次の段階に向かうべくはじめたプログラムです。"福祉"と"伝統のものづくり"を結びつける。ここに関われる可能性のある人の数をもっと広げ、そんな人どうしが学び合える場をつくりたいと願っています。

今年度は2コースを設け、様々な観点から"福祉"と"伝統のものづくり"について考えました。

プログラムA「福祉の課題から考える」コース(A1〜A5)
何を変えることで、福祉のものづくりはもっとよくなるのでしょうか。プログラムAでは福祉現場の課題にしっかりと向き合い、新しい可能性をひらいてきた実践者とものづくりの価値を高める方法を学びます。

プログラムB「これからの伝統を考える」コース(B1〜B5)
生活に必要とされる伝統工芸やものづくりは何か。作り手や使い手、環境、素材、持続性など、さまざまな視点からこれからの伝統やものづくりのあり方や暮らしについて考えます。

アーカイブ映像の販売もありますので、下記URLよりご確認ください!
https://tanpoponoye.stores.jp/
※5月末までの視聴となりますので、ご注意ください。

こちらのnoteでは各回のレポートを、たんぽぽの家プロジェクトスタッフの木村よりお伝えさせていただきます!

「労働と対価」

A4 労働と対価
福祉の現場では「工賃向上」というキーワードもきかれますが、一体いくら稼ぐことができたら幸せなのでしょうか。また販売価格としても労働の対価としても適正な価格はどのように決めていったらいいのでしょうか。質の高い商品を発信する2つの施設の事例からお金についてあらためて考えます。

12月10日(土)のニュートラの学校では、長崎県より石丸 徹郎さん(株式会社フォーオールプロダクト(ミナトマチファクトリー)代表取締役)、東京とより高野 賢二さん(NPO法人La Mano クラフト工房La Mano施設長)にお越しいただき、福祉施設における働き方やその対価の在り方についてお話いただきました。


仕事内容とそのプロセス

La Manoは障がいのある子供たちの造形教室が前身にあるそうで、高野さんご自身も染色を学んだ経験からご縁があり携わるようになったそうです。スタッフさんも福祉関係出身の方よりも、染色や服飾などのものづくりに造詣が深い方が多いとのことでした。

施設で行っている製品づくりは、極力メンバーさんが行えるようにしつつ仕上や細かい工程はスタッフさんで対応しているそうです。織物であっても、綿を育てるしごと・糸を巻くしごと・織るしごとなどと分解しながら、ストックを貯めすぎずに、かつ、大量注文が入った際にも対応できるかたちを模索しながら日々商品づくりを行っているというお話もありました。

幸せな工賃の設定

様々な商品をつくっているなかで、メンバーさんの関わり度と収益性にはばらつきがあります。高い収益が出るものでも、メンバーさんの関わり度が低ければ本末転倒とも言える一方で、メンバーさんが時間をかけたものが低い収益だと継続性がない、、、というなかで、様々な商品を組み合わせることで施設全体でバランスをとるということを意識されているそうです。

また、工賃の設定について具体的な数字を示しながらお話してくださいました。印象的だったのは、賞与の制度をつくり個々の能力を評価できるようにしていること。そして、工賃を伸ばし続けてきた経緯がありつつも幸せではなさそうなメンバーやスタッフが増えたことから現在は「維持」に方向転換していること。障がいのある方々の工賃についてはあまり知らない方も多いのではないのでしょうか。私自身もとても勉強になりました。

最後にはLa Manoで販売している鯉のぼりの事例から、評判や反応などのお金ではない対価の存在や、「労働力は変わらずつくる’もの’が変わって収益が変わった」お話を伺いました。適正価格の設定にも試行錯誤があることや、鯉のぼりが今までのものづくりの集大成であることが分かりました。「人がLa Manoの製品を手にとり幸せだと思うことの相互の対価」という言葉もあり、改めて福祉とお金について考えさせられました。

福祉と地域の関係

続いて、石丸さんからもお話をいただきました。石丸さんご自身も、福祉やものづくりの出身ではなかったそうで、現在は「福祉施設を持続させるために地域の仕組みをつくる」ことを目指して複数の施設を立ち上げられています。それぞれの地域に馴染むよう、施設ごとに法人を変えていることも特徴で、関わる人も幅広い印象がありました。今回は施設設立の実例から、「しごと」の在り方についてお話いただきました。

石丸さんが代表をされているみなとまちファクトリーは、その名の通り「ファクトリー」として、固定した作業ではなく自分でやりたい仕事をつくる、というスタンスがあるそうです。「地域の産業を施設が支援することで地域に必要な資源になる」というコンセプトが体現されていることに驚きました。

クリエイターやデザイン系のスタッフさんがいない中、「やりたいこと」が生まれてから実現する方法を考えるため、新しいスキルを身に付けるスタッフさんも多いとか。そこにいる人が共に成長ができる素敵な施設なんだろうなと思いました。

施設がなくなっても人が残っていけるように

他にも、事例を交えて大変興味深いお話を伺いました。

企業と福祉施設が共に利益を生み、ニーズを満たすパートナーとなることを目指した仕事づくりのお話もありました。


他にも、他の事業所の持続性をサポートする施設や、福祉とは違う観点から人材を育成する施設など、ここではお伝えしきれないような面白い考え方にたくさん触れさせていただきました。ぜひ本編にてご覧ください。
「福祉+地域―福祉」これが目指すところに、施設がなくなっても人が残っていけるような本当に福祉の働き方があるというお話はとても印象的でした。

労働と対価と

クロストークでは、労働と対価だけではない価値についても議論になりました。仕事をつくりだすこと、適正価格を探すこと、続く状態にすること。福祉だけではなく、自分の身近に溢れているトピックだと思いました。
後半は参加者さんとのやりとりも行いながら、和気あいあいと質疑応答を行いました。また新たな気付きに溢れた時間になりました。

ニュートラの学校について

最後までお読みいただきありがとうございました。ニュートラの学校で得た気付きや問いは、すぐに活かせるものもあればじっくりと効いてくるものもあるかと思います。
今後もこちらのnoteにて各回レポートは発信していきますが、ぜひアーカイブもご覧いただきご自身の学びに繋げていただければと思います!

▼今回レポートした回のアーカイブはこちら
https://tanpoponoye.stores.jp/items/63a024576b87c31d75952943

▼NEW TRADITIONAL ウェブサイト
https://newtraditional.jp/


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