[春日大社境内の杉]いのりの食卓

NEW TRADITIONAL事業において、「つくってみる」の実践の場であるのが、Good Job! センター香芝です。

このGood Job! センター香芝に、このたび、春日大社境内の杉を使ってみませんかというお誘いがありました。
Good Job! の活動にご賛同いただいている団体のひとつに、福祉の分野を超えて奈良県内の多様な事業体がつながる事業協同組合「あたつく組合(あたらしい・はたらくを・つくる福祉型事業協同組合)」があります。春日大社より「障害のある人の仕事つなげてもらいたい」とのお申し出で、このあたつく組合へ春日大社境内の杉・約30本が寄贈されたのが2017年1月でした。その杉をGood Job! にも分けていただけることになったのです。

768年、称徳天皇の勅命による御本殿造営にはじまる春日大社は、天皇や上皇の崇敬も篤い神社です。神山をふくむ広大な敷地内には世界遺産に指定された原生林も有し、その自然とともに御神気(ごしんき)がこもった木として長く人々に愛されています。
境内にも多種多様な樹木が生えていますが、自然災害で風倒木となったり、人や植物に危害を加える可能性が出た枯損木(こそんぼく)となるものも、希少ではあるが発生します。

画像1

2017年の作業の様子。切り出す杉も辺りにある植物も傷つけないよう、「吊し切り」という手法で行われました。

画像6

神聖な場所で約50年以上にわたり成長した「春日大社境内の杉」は、自然が生み出す美しいうねりのある木目と、深い赤茶からきつね色や灰色など豊かな色調のある木肌が特徴です。

いのりの食卓

いただいた杉で何をつくろうか。どのような製品にして、くらしのなかにお届けしたいだろうか。
工芸作品を取り扱うギャラリー「空櫁」の五井あすかさんに相談したところ、素材の由来や神聖さから“いのりや祝い”に繋がるようなものが候補に浮かびました。そこで、燭台や重箱など、とくべつな時にテーブルの上に並ぶようなものを作ることにしました。

杉を選ぶ

2020年8月5日(水)奈良県吉野郡下市町。材木を管理されているAKEMI工房に伺いました。乾燥させるために寝かせてある杉から、製品をつくるために必要な木材を選ぶ「木取り」を行い、トラックで運び出しました。

画像5
画像3

GJ!メンバーの松村さん。トラックに載せる前に埃を払う

画像5

《作業の感想》
吉野や十津川など、奈良県は杉の名産地。しかし、杉といえども、植林をして祖先から代々が継いでていねいに育てられた杉と、春日大社の境内で天然木として育った杉の違いについて理解できていませんでした。年輪の詰まり具合による強度の変化、木目の入り方を見て商品へどう活かすのか、風倒木・枯損木ならではの節の入り方や腐食の有無などなど。木工家がものづくりを行うには、その木材にある個性を見極め、どの部材をどの商品や作品に仕立てるかをよりすぐる「木取り」が重要な作業であることを知りました。また、木取りにご協力いただいた木工家のみなさんは、ふだんはあまり天然木を扱う機会も多くなく、春日大社で自然の荒波とともに育った天然木の風合いのおもしろさに意気が上がっていました。(GJ!センター香芝スタッフ 藤井)

画像4

重箱に協力してくださる、APPLE JACKの小林さん

画像8

燭台に協力してくださるNakajima woodturning studio の中島さん

試作

8月末には、製品化のアドバイスをお願いしている五井さんとともに、燭台の試作品を前に打ち合わせをしました。

画像11
画像13
画像12

表面加工についても自ら見本を作成し提案してくださる五井さん

色・形の品揃えやパッケージなどのほか、経年変化や実用上の安全などについても意見交換します。塗装や研磨など、GJ!センター香芝のメンバーが製品仕上げに関われる部分もよりはっきり見えてきました

画像9

燭台に載るろうそくも、この商品の特長です。和紙やい草を使った和ろうそくの製法をなぞらえながらも、GJ!センター香芝ならではの視点でつくり方や素材を研究しています。このろうそくの素材は、奈良県内の養蜂農家からはちの巣から蜜蝋(みつろう)を精製して制作できないかと思案しています。

画像7

3Dプリンタを活用した型に入れらた、ろうそくの芯とみつろう

--------
今年11月中旬の発売をめざして鋭意 製品としての磨きをかけています。燭台はろうそくとセットで販売します。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?