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[レポート]ふくしとこけし

福祉施設で取り組まれているものづくりの創造性と、伝統工芸の技や文化とを組み合わせたうえで、現代の生活に即した形で価値づけをできる作品・製品をつくりだす。この発想をもとに、NEW TRADITIONALが始動した2019年から、NEW DANTSU やもんぺなどを生み出してきました。

また、伝統工芸と全く同じ円のなかにあるとは言えないでしょうが、地域と工芸との関係においては、郷土玩具は外せない項目なのではないでしょうか。NEW TRADITIONALでは、1年目にはモマ笛を発売し、その年にはMUTO、2年目の昨年はどんたく玩具社の協力のもと、郷土玩具の展覧会を開催しました。

「はりこ」からひとコマずれた玩具をつくりたくて

どんたく玩具社の軸原ヨウスケさんは、ご自身はつくり手ではないものの、工房の分布や美術界の動向とのかかわりなども含め、幅広く郷土玩具を研究されています。昨年展覧会にご協力いただいた時に、福祉施設のものづくりに刺激されたようでした。NEW TRADITIONALは、郷土玩具の近辺であたらしい製品を作ってみたいと考えていたGood Job! センター香芝と連携し、「こけし」をもとにした新製品づくりへの協力を軸原さんにあおぐことにしました。

Good Job! センター香芝ではすでに、デジタルファブリケーションを応用したはりこを何十種類も発売してきました。製造には複数の工程があり、障害のある人が関わる過程や作業の特徴はさまざまですが、とくに最後の絵付けには均質さが求められます。GJ! スタッフの間には、この絵付けで障害のある人の持ち味がもっと活かせる商品もあれば…というもどかしさもありました。

画像4GJ!はりこの絵付け作業の様子

軸原さんとのアイディア交換

9月8日に軸原ヨウスケさん、軸原美智子さんと最初の打ち合わせをオンラインで行いました。目の前にパーツはあるようで、何をどうしたらいいの掴むのは容易ではありません。お互いのアイディアや製造上の事情をすり合わせます。数日後、ヨウスケさんより5つの案が送られてきました。

①伝統こけし工人はGJ! はりこに、GJ! メンバーはこけしに絵付け
②こけしとGJ! はりこを物理的にくっつける、ドッキング
③こけしの絵柄をGJ! メンバーが考案
④手足のついたこけし素地をはりこでつくり、工人さんが絵付け
⑤木地にGJ! メンバーが自由に絵付け(もっとも初歩的で間口の広い方法)

名称未設定

まず、②のドッキングのデザインを障害のあるメンバーに募集してみました。

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それぞれに手応えを得た「こけし講座」

ほどなくして、軸原さんがGood Job! センター香芝に来て、こけしについての講座を開いてくれました。こけしに対する想像をふくらませていたメンバーたちでしたが、軸原さんのお話しでより深く、東北の風土とこけしとの関係や、技術的なことも含めて知ることができました。スタッフも、こけし工人さんの絵筆の使い方から、製品をまとめるヒントを得ました。もともと閑期の仕事として手間を省きつつ作る必要のあったこけしは、効率的で限定された絵筆の使い方をします。これが、メンバーらしく自由や揺らぎがありつつも、制約のある=製品らしい定型を感じられる絵付け作業につながるイメージがわきました。軸原さんも、メンバーと会って次の段階の案が固まったようです。

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次回の軸原さんとの会は、とあるテーマから模様を引き出すワークショップをへて、実際の絵付け体験まですすむ予定です。どのようなこけしをみなさんに報告できるか、たのしみです。

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* 令和3年度 文化庁委託事業「障害者による芸術文化活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)」の一環で実施しました

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