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[春日大社境内の杉]燭台がうまれるまで

木の「二つ目の生命」をくらしのそばに

木の生命は、二つあると言われることがあります。一つは、土の上に立ち、年輪を重ねて成長する樹木としての生命。もう一つは、人間の暮らしを支える道具や素材へと生まれ変わった木材としての生命です。後者も、樹木として年輪を重ねた年月と同じほどの寿命があるといわれています。
NEW TRADITIONAL プロジェクトから生まれた「春日大社境内の杉」をつかった製品は、枯損木や風倒木として木材になった木へ新たな生命を吹き込む、人の暮らしに寄り添うものを提案したいと考えました。

その結果つくることに決めた燭台と重箱。今日は燭台ができるまでについてご紹介します。

旋盤加工

「燭台は使いますか?」
商品化を考えるにあたり、日本の道具とうつわを取り扱うお店「空櫁」の五井あすかさんを訪ねた際に尋ねられました。普段の暮らしの中に灯をともす時間を持つための道具は、神域で育った春日大社境内の杉の魅力を感じてもらう商品としてぴったりです。こうして燭台づくりが始まりました。

木材から同軸上にものを切り出すには、旋盤(ロクロ、ターニング)という技術が役立ちます。五井さんからご紹介いただいたのは Nakajima woodturning studioの中島信太郎さん。ウッドターニング専門の教室や機械販売に加え、作家としての創作活動をし、ウッドターニング・旋盤加工の面白さと専門知識・技術の普及に尽力されています。

加工は、どの木材を使うか決める「木取り」から始まります。木目や反り、腐食具合などを見極めて、燭台に適したものを選ぶことが最初の作業です。

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木取りされた木材は、制作しやすいように、25センチほどの長さの角材に加工されます。四角い木材に刃物があてがわれ、「カッカッカ」というダイナミックで小気味よい音が立ちます。角が取れるにしたがい刃を変えると、「シュルシュル」という音になり、燭台が削り出されていきます。

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Good Job!メンバーによる手作業の表面仕上げ

削り出された燭台にはすべて、表面に加工を施しています。ここからは、Good Job!センター香芝で、障害のある人たちの手仕事によって仕上がります。

仕上げには「酢鉄染め」、「柿渋・酢鉄染め」、「オイル仕上げ」の3種を選びました。Nakajima woodturning studioより竹田亜希子さんにお越しいただき、染めやオイル仕上げの方法をメンバーに実演のうえ指導していただきました。
酢に溶けた鉄分と、杉に含まれるタンニン(柿渋にも含まれる成分)とが反応し、酸化することによって、褐色や黒色に木肌が変化します。

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《GJ!メンバーのコメント》
「黒く染め上がった燭台は昔からあったかかの風合いを感じた。染め作業は意外と簡単に燭台が染め上げることができて驚いた。」

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載せるのは...奈良県産のみつろうろうそく

灯りになるろうそくは、ミツバチの巣から採れる「みつろう(蜜蝋)」を使います。炎の揺らめきに特徴のある「和ろうそく」の製法でつくった灯芯を入れています。

みつろうは、奈良県内で養蜂を営む農家のものを100%混じり気なく使用します。ほのかに甘い香りと深い黄色のろうそくになります。梅雨明けの時期にしか収穫することができない、希少なものです。

一方の灯芯からは、奈良の地場産業との関わりを知ることに。
和ろうそくの灯芯には、和紙、い草(藺草)、真綿あるいは綿が用いられます。奈良盆地の真ん中ほどに位置する安堵町は、かつて灯芯づくりが盛んで、村のいたる田んぼで稲作の裏作としてい草を栽培していたそうです。どの農家でも家内作業として灯芯を巻いていたそうですが、今では一軒の農家もありません。灯芯保存協会として普及活動などが続いています。
竹串に和紙を巻き、上皮を剥がしたい草を螺旋状に巻いていきます。い草が解けないように綿を巻き付け、灯芯は完成します。

ろうが固まったあとに竹串を抜いた部分が空洞になることにより、火をともしたときに空気の通り道となり、炎の大きさが大きく、小さく、変化します。海辺に打ち寄せるさざ波のように、飽きることない炎が現れます。

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2020年12月12日(土) いよいよ発売

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商品情報・ご購入はこちらのNEW TRADITIONAL Shop よりどうぞ!

その他、こちらのお店や展示でも販売が決まっています。
・日本の道具とうつわのお店「空櫁
12/18(金)-27(日) ポーラ ミュージアム アネックス 企画展「HAPPY HOLIDAY WISHES 展 produced by SERENDOUCE CRAFTS」 

大切な人への贈り物に、暮らしのなかのアクセントに、ぜひお買い求めください。

削り出して、染めや表面仕上げを行う過程の中で、いくつかの燭台には割れが生じました。この割れは、木材が呼吸している証で、その程度は木材によって千差万別。末長くお使いいただくために、両端が針になった金具「かすがい」が打ち込まれています。このかすがいも、割れに合わせ、その台ごとに作って打ち込んでいます。

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お重の工程や発売日については、またご紹介しますね。引き続き、どうぞおたのしみに。

*写真:(上から)1、5、7枚目=上山敦司 6、8枚目=伊藤誠一

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