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[NEW DANTSU] 山形でうまれたじゅうたん

NEW TRADITIONAL では、日本各地の福祉施設で取り組まれている表現活動と、伝統工芸や地域のものづくり、デジタル技術などの連携によって、新しい工芸としての創作活動をこころみています。
2019年度は奈良を拠点に、主に福岡、山形と連携し、5事例を残しました。米沢緞通をもとにできあがった「NEW DANTSU(ニューダンツー)」もそのひとつです。 ※緞通(だんつう)...高密度の手織り絨毯

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山形の障害のある人とのワークショップでうまれた

繊維産業が盛んな米沢市で緞通製造をする滝沢工房と、山形で日々創作活動や仕事づくりを模索する障害のある人たちが出会い、新しい緞通の柄を考えたり障害のある人が緞通の製作プロセスを経験することで、NEW DANTSUはできました。たんぽぽの家が、柄を引き出したり選んだりする役をお願いしたのは、山形を拠点に活動するデザイナーの𠮷田勝信さんです。根源的で自由なものづくりの状況をつくることを目指しました。山形県内3カ所の福祉施設と連携し、障害のある人の表現を取りいれた緞通を5種類制作しました。

山形県内で活動する、ものづくりや表現活動に興味のある福祉施設に𠮷田さんが出向き、アートワークショップを実施。絵画や粘土など、身近な素材を使いながら自由に造形をしてもらい、それを緞通の柄のベースとして使いました。また、滝沢工房から滝沢幹夫さんも参加し、緞通の補修などに使う技法である「植え込み」をレクチャー。障害のある人自身による緞通づくりにもチャレンジをしました。

<手法> 各施設に𠮷田勝信氏が訪問する。
① 福祉施設にある創作資源を活用して障害のある人が創作した図柄を、緞通のデザインに使用する
② 緞通の保守技術である「植え込み」の手法を障害のある人が体得し、既存の緞通に「植え込み」で創作表現する

《えのぐのじゅうたん》社会福祉法人ほのぼの会わたしの会社
模造紙へ絵の具で着彩

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《ねんどのじゅうたん》社会福祉法人さくらんぼ共生会さくらんぼ共生園
粘土を平面状にちぎって配置し、それをプレス機にかける

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《うえこみのじゅうたん》株式会社修誠会 しょうがい者就労継続支援B型事業所「くらら」  
緞通の「植込み」技術。講師=滝沢幹夫(米沢絨毯有限会社 滝沢工房)

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𠮷田勝信さん・武田和恵さん

実例をつくる過程においては、職人などの技術者と障害のある人が互いの技や表現に敬意をはらいながら、ひとつひとつつくりあげていきました。その中で、福祉施設職員、デザイナー、職人、といった多様な人をつなぐコーディネーターも重要な役割を果たしました。

ファシリテーター、ディレクター:𠮷田勝信(𠮷勝制作所
コーディネーター:〔山形〕武田和恵(やまがた障がい者芸術活動推進センター ぎゃらりーら・ら・ら)、〔全体〕藤井克英(Good Job!センター香芝

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2019年秋 滝沢工房にて(左より 滝沢幹夫さん、藤井、𠮷田さん)

滝沢工房(米沢絨毯有限会社)

緞通は、高密度の手織りの絨毯のことです。米沢藩の時代から絹織物など繊維産業で有名だった米沢市で手織絨毯業を営む滝沢工房は、1960年代から独自の織りやすい手織織機を考案し、高度経済成長期には、さまざまな仕事を手がけてきました。現在は、今の住宅事情や価値観の変化に合わせて「どこまで小さく織れるか」という発想のもと、アートディレクターに𠮷田勝信を迎え、モダンな柄を採用したり、その毛並みを利用したブラシを開発するなど、新しい展開に挑んでいます。

米沢緞通は毛足が長くクッション性に富んでいるので、長時間座って作業しても疲れないのが特長です。先日、お客様より滝沢工房へ、「コロナ渦の中で在宅作業が増えたが、米沢緞通のおかげでデスク作業も苦にならない」との嬉しいお手紙が届いたそうです。

滝沢さんは、講師を務めてくださった植え込みのワークショップについても興味深いことを話してくださいました。緞通制作は通常、グラフという下絵をまず描き織り上げていくのだが、「くらら」の障害のある人がそれ無しに毛を植え込み、勢いよく表現していくことが、面白く見えたのだそうです。彼らの頭の中に図案があるのではないかと感じたとのことでした。

NEW DANTSU 販売中!

NEW DANTSUたちは、たんぽぽの家が運営するオンラインショップよりお買い求めいただけます。受注生産となるため、お届けはご注文から2ヶ月後となります。

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写真 TOP画像以外すべて 撮影:三浦晴子

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