Bloodborne 考察① 過去の『獣狩りの夜』について

最近プレイした bloodborne の世界に魅了されてしまったので、自分なりの考察をまとめていこうと思う。

まず最初は、舞台の前提、獣狩りの夜について考察したい。

獣狩りの夜とは何だったのか

bloodborne というゲームは主人公が獣狩りの夜に迷い込むところから始まる。プレイヤーは、「今夜は獣狩りの夜なのだ」というふんわりとした理解でストーリーを進めていく。が、エンディングを迎えても謎が謎のまま残る。そも獣狩りの夜とは何だったのか、というところから判然としない。

赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり、偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん

――ビルゲンワースの手記

少なくとも、プレイヤーにとっての獣狩りの夜は明白で、この手記に集約される。赤い月が近づき、獣であふれ、人ならぬ上位者が現れた。これらはメンシス学派の儀式によって引き起こされていた。プレイヤーたる狩人はこの儀式を止めて獣狩りの夜を終わらせ、夜明けをもたらした。

このプレイヤーが遭遇した特別な獣狩りの夜は、様々な点で特別な夜だった。残された謎は多岐にわたり、あらゆる点について考察ができる。

が、今回はヤーナムが幾度となく経験してきた普通の「獣狩りの夜」について考えていきたい。ヤーナムの過去において訪れたであろう、メンシスの赤子の儀式に依らない獣狩りの夜の話だ。

ヤーナムにとっての獣狩りの夜

まず、ヤーナムは獣狩りの夜を過去、複数回にわたって経験している。その時々において月に異変が起きることもあれば、起きないこともあった。これは、いくつかのNPCの発言から察せられる。

今宵は月も近い。獣狩りは、長い夜になるだろう

――ゲールマン
今夜は長すぎるわ。獣除けの香も、もうなくなりそうなの

――娼婦アリアンナ

獣狩りの夜において、月が近づくことは長い夜の顕れだという。そして夜は長いことも短いこともあり、月の変容の程度にも差があるということになる。
また、これらのセリフは、ヤーナムは物理的な時間の流れからして既におかしくなっていることを意味している。感覚的な時間の話ならば、一晩分の獣除けの香が枯渇することはあり得ないからだ。

少し話がそれたが、ヤーナムという街にとっての獣狩りの夜とは、長く明けない夜を指す言葉ではない。

また、過去の獣狩りの夜にも赤い月が昇ったことはあった。それはしばしば起こるものでなく、殊更に凄惨な夜として記憶されている。

獣狩りの夜、聖堂街への大橋は封鎖された
医療教会は俺たちを見捨てるつもりだ
あの月の夜、旧市街を焼き棄てたように

――ヤーナム市街の手記
赤い月は近く、この街は獣ばかりだ。きりがない
もう何もかも手遅れ、すべてを焼くしかないのか

――旧市街の手記

月が赤くなる夜は特別に珍しい夜だった。逆説的に、獣狩りの夜とは月が赤くなる夜を指す言葉ではない。

そして、獣狩りは、特別な夜に限らずほぼ毎晩のように行われている。

「獣の病」の罹患者は、その名の通り獣憑きとなり、
人としての理性を失い夜な夜な「狩人」たちが、そうした、
もはや人でない獣を狩っているのだと言う

―― 公式サイト

狩人が獣を狩る夜を指して獣狩りの夜と呼ぶのではない。それはヤーナムにおいて日常の光景である。

ヤーナムにとっての獣狩りの夜とは何なのか

ヒントとなる記述はある。

獣狩りの夜、聖堂街への大橋は封鎖された
医療教会は俺たちを見捨てるつもりだ
あの月の夜、旧市街を焼き棄てたように

――ヤーナム市街の手記
病の蔓延により、獣狩りに蜂起した群衆のなれの果て。
熱病のような狩りの衝動はそのままに、既に自身が獣の病に侵されている。

だが彼らはそれを知らず、狩り、殺すべき獲物を探し続ける。彼らの濁り蕩けた瞳には、人こそが獣に映るのだろう。

―― 獣狩りの群衆(公式サイト)

獣狩りの夜において、ヤーナムではロックダウンが実施される。また、医療教会に見捨てられたと考える群衆が蜂起し、武器をとり警らする。

そして、重要な点として、ゲームスタート時点、獣狩りの夜を指摘されるのは夕方である。

ヤーナムの街は、よそ者に何も明かしません
常であれば、あなたが近づくことも叶わないでしょうが…
獣狩りの夜です。むしろ、好機なのかもしれませんよ…

――重病人ギルバート

ヤーナム市民は、また医療教会は、今宵が獣狩りの夜になることを事前に知っている。それは物理的な長さが変わる特別な夜であり、その用意は計画的に行われている。

これらの事実から、ヤーナムにおける獣狩りの夜とは何なのかいくつかの推測が立つ。

① 満月の夜

獣の病のモチーフは満月の夜に変身する狼男伝説だ。また、月は狂気の象徴でもある。ヤーナムの街で満月の夜は獣化が激しい夜として知られていてもおかしくない。ヤーナムの住人達は毎月訪れる凄惨な夜に怯え、備えている。

② 教会が布告する夜

プレイヤーにとっての獣狩りの夜とは、医療教会が儀式によって獣化を促進する夜だった。医療教会は儀式の予定日、即ち激しい獣化が予測される日取りを、慈悲深くも前もって市民に布告するのかもしれない。その日は聖堂街へ続く大橋は封鎖され、隔離された市民は武器を手に街をうろつく。教会の鬼畜ムーブが際立つ。

なお、没データの中に、獣狩りの夜を教会が布告していることを示唆するセリフがある。

「ローレンス」?…ああ、あんたと同じよそ者だろう?
知ってるとも。東街の大聖堂に向かったよ、[儂/俺]の助言でな
だが、まあ、残念なことだ
あの後すぐに鐘が鳴り、獣狩りの夜がはじまったからなあ
よそ者が無事で済むはずもなく…
イヒヒヒヒヒッ
ヒーッ、ヒッ

開発初期において、ローレンスは主人公と時代を同じくする異邦者であり、時計塔の鐘の音は獣狩りの夜の始まりを告げるものだったようだ。あくまで没データであるが、鐘の音は獣狩りの夜の報せであるとする根拠にできなくもないだろう。

2つの説を考えたけれど、この二つは両立可能だ。満月の夜は活発に獣狩りが行われており、教会はその日に合わせて危険な儀式を行う予定を立てる。そういうことかもしれない。

以上、ヤーナムに幾度となく訪れたであろう、通常の『獣狩りの夜』に対する考察だった。

続きがあれば、次はプレイヤーの夜を特別なものとした、メンシスの儀式について考察したいと思う。

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